ケントと新しい後輩
十一月の初め。
ケントが来た。
少し、にやりとした顔だった。
珍しかった。
「どうしましたか」
「新人が入りました。騎士団に」
「そうですか」
「俺の後輩です。十九歳の女の子で、緊張しっぱなしで」
コーヒーを頼んだ。
「その後輩が、どうかしましたか」
「昨日、昼飯を一緒に食べました。緊張していて、あまり食べられていなくて」
「そうですか」
「俺が、最初は誰でもそうだ、と言ったんです。それだけ言いました。でも、その後輩が少し表情が変わって、食べ始めて」
「それが嬉しかったのですか」
「嬉しかった。俺が最初にここに来たときのことを思い出した」
カインは黙っていた。
「セラ先生が、ここに来ることを勧めてくれた。眠れない、食べられない俺に。ここに来て、少しずつ変わった」
「そうですね」
「その後輩に、ここを教えようかと思っています。一人になりたいときに来い、と」
「それは良いですね」
「でも、押しつけたくないので、様子を見て」
「それで良いと思います」
ケントはコーヒーを飲んだ。
「誰かに言いたかったんです、この話を」
「聞けて良かったです」
「ここに来ると、誰かに聞いてもらえる。それが、今でも来る理由の一つです」
「ありがとうございます」
「ここで落ち着いてから、また仕事に戻れる。その繰り返しが、俺の続け方です」




