アレンの四冊目
十月の半ば。
アレンが来た。
原稿用紙をテーブルに置いた。
「行き詰まった」
「そうですか」
コーヒーを頼んだ。
「農場の二年目を書いているんだが、一年目と同じ話になってしまう」
「どういうことですか」
「リオンが農場で働いて、土に触れて、季節が変わる。それを書いているが、一年目と何が違うのか、わからなくなってきた」
コーヒーが来た。
一口飲んだ。
「二年目、リオンに何か変化はありましたか」
「それを探している。でも、大きな変化はない。毎日同じことをしている」
「同じことをしていることが、変化ではないですか」
アレンは少し止まった。
「どういうことだ」
「一年目は、英雄を辞めて農場に戻ることへの不安があったはずです。二年目は、その不安がなくなって、ただ農場の人間として生きている。それは変化ではないですか」
アレンはしばらく黙った。
「……そうだな」
「同じことを続けることで、その場所が本物になる。それが二年目の話かもしれません」
アレンはコーヒーを飲んだ。
「お前、たまにすごいことを言うな」
「そうですか」
「いや、さらっと言うから気づかないが、後で考えると、ちゃんと刺さっている」
カインは何も言わなかった。
アレンは原稿用紙を手に取った。
「書ける気がしてきた」
「良かったです」
「お前と話すと、整理できる。それが、毎日来る理由の一つかもしれない」
「そうですか」
「コーヒーの理由の方が大きいけどな」
「ありがとうございます」
アレンは書き始めた。
今日のコーヒーより少し早く、ペンが動き始めた。




