エミリの報告
十二月の半ば。
エミリが日曜に来た。
「今年一年の報告をしに来ました」
「そうですか」
「毎年、年末に来て報告することにしました。今年から」
席に着いた。
コーヒーを頼んだ。
「今年の一番は、父の交渉を一人でやれたことです」
「そうですね」
「二番は、出張で南の豆を持ってきたことです」
「それも良かったですね」
「三番は……土曜の夜、うまく続けられたことです」
「続きましたね。一年間」
「一年間、毎月一度、土曜の夜を担当しました。大きなミスは一回だけ。砂糖と塩を間違えました」
「それは」
「違うと思って確認したら間違いでした。ちゃんと謝って、作り直しました。そこが成長です」
「確認できたことが、成長ですね」
「そう思います。昔は間違えたことに気づかなかった。今は気づける」
コーヒーが来た。
エミリは飲んだ。
「カインさんの今年の一番は何ですか」
「一番、というのは難しいですが」
「難しくていいです。何かありますか」
カインは少し考えた。
「棚が十一冊になったことです」
エミリは少し間を置いた。
「それが一番ですか」
「はい」
「なぜですか」
「ここに来た人が書いたものが、ここに並んでいる。それが、この店の形の一つだと思います。毎年増えていくことが、嬉しいです」
エミリはノートに書いた。
「書いておきます。カインさんの今年の一番、棚が十一冊になったこと」
「そこまでしなくても」
「書きます。毎年書きます。来年も聞きます」
「来年もここにいます」
「わかってます」
エミリは笑った。




