秋の棚と新しい常連
九月の半ば。
この月、棚に二冊が加わった。
ゼファーの第四巻と、カエルの地図集五冊目だった。
十一冊になった。
ゼファーが持ってきた日、アレンも来ていた。
二人は仕切りを挟んで別々の席にいた。
でも、どちらも棚を見た。
「増えましたね」とゼファーが言った。
仕切りの向こうから、アレンが答えた。
「増えた」
「四冊目を書き始めましたか」
「書いている。農場の二年目の話を」
「それは良いですね」
「お前は第四巻か」
「はい。今回は数式が多い」
「俺には読めないな」
「私の本は、難しい部分もありますが、エッセイの部分は読めると思います」
「読んでみる」
二人はそれだけ話した。
また、それぞれの飲み物を飲んだ。
カインはカウンターで、その会話を聞いていた。
仕切りを挟んでも、繋がることがある。
この店で、初めてきちんと話したのかもしれなかった。
翌週、ヴィオラが三度目に来た。
「良いですか、少し聞いても」
「どうぞ」
「この店に来ている方々は、どんな人が多いですか」
「様々な方が来ます」
「友人に話したら、一度来てみたいと言っていました。でも、友人と一緒には来られないですね」
「お一人様専用ですので」
「そう伝えました。そうしたら、友人が言いました。それが良いんだろうな、と」
「良い友人ですね」
「そうですね。伝えるのが難しいものを、ちゃんと理解してくれる人がいます」
カインは静かに言った。
「来たいと思ったとき、一人で来てください」
「来ると思います。今は少し、怖いみたいですが」
「その怖さが解けたとき、来てくれると思います」
「なぜですか」
「来てみたいと思っている、ということは、もう半分来ているのと同じだと思います」
ヴィオラは少し考えた。
「それは良い言い方ですね」
「友人の方に伝えてください」




