エルナ帰国
九月の初め。
エルナが来た。
一ヶ月ぶりだった。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい」
席に着いた。
紅茶を頼んだ。
「手紙、ありがとうございました」
「引き出しに入れておきました」
カインは封筒を出した。
エルナは受け取って、読んだ。
「話さなくていい人と一緒にいることは、特別なことです」
小さく読み上げた。
「そうですね」と言って、カバンにしまった。
「結婚の日程が、決まりました」
「そうですか」
「来年の春です」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます。また言ってもらえた」
「おめでとうと思うので」
エルナは紅茶を飲んだ。
「カイン、ここに来続けていて良かったです」
「そうですか」
「最初に来たとき、逃げてきました。覚えていますか」
「覚えています。縁談の話から」
「あのとき、ここで一人になれなかったら、何も変わらなかったかもしれない。変われなかったから、彼と会えたのだと思う」
「エルナ様が変わったのです」
「でも、ここが必要でした。何度も言いますが」
「何度言っていただいても、嬉しいです」
エルナは少し笑った。
「来年の春、結婚したら、しばらく隣国にいます。でも、帰ってきたら、また来ます」
「お待ちしています」
「何年かかっても?」
「何年かかっても、お待ちしています」
エルナはカップを置いた。
今日は、来たときから帰るまで、ずっと穏やかな顔だった。




