ミレイアとルナの試合
十一月の終わり、ミレイアが来た。
少し疲れた顔をしていたが、悪い疲れではなかった。
「ルナが、初めて勝ちました」
「大会でですか」
「そう。一対一の試合形式で、相手は二十五歳の実力者だった。ルナは二十一歳で、格上相手に一本勝ちした」
「それは良かったですね」
「試合のあと、ルナが俺のところに来て、泣いた」
「嬉しくて、ですか」
「うれしくて、と怖かった、が混ざった顔だった。嬉しいのに怖い、という感情が一緒に来て、処理できなくて、泣いた」
「ミレイア様も、似たような経験をしましたね」
「した。最初に優勝したとき、俺も似たような気持ちだった。だから何も言わなかった。ただ、隣にいた」
カインは紅茶を持ってきた。
「それが一番だったと思います」
「そう思って、そうした。でも後で、一言くらい言えば良かったかとも思った」
「何を言いたかったですか」
「……その怖さは、本物だということ。勝てるようになるほど、失うものが増えるから、怖くなる。それは正しい感覚だということ」
「今からでも、言えますか」
「今度会ったとき、言う。遅れても、言わないよりはいい」
「そうだと思います」
ミレイアは紅茶を飲んだ。
「ルナはまだ、俺には遠い剣士だ。でも、近づいてきている。それが嬉しくて、少し寂しい」
「両方あっていいと思います」
「そうだな。両方あることが、師匠というものかもしれない」
ミレイアは立ち上がった。
「また来週。ルナに言った後の話を、報告に来ます」
「楽しみにしています」
「楽しみにしている、ってまた言った」
「そう思ったので」
ミレイアは少し笑って、出ていった。




