カエルからの手紙
十一月の半ば、カエルから手紙が届いた。
宛先はSOLITAIREになっていた。
カインは封を開けた。
几帳面な文字で、こう書かれていた。
「カインさんへ。今、東の国境近くにいます。地形は複雑で、毎日新しい発見があります。旅は順調です。ただ、一つだけ困っていることがあって、それを書きます。夜、野営をしていると、静かすぎて眠れない夜があります。王都にいるときは、街の音が遠くから聞こえてきて、それで眠れていたのかもしれません。あなたの店のことをよく思い出します。コーヒーの匂いと、ランプの光と、誰かがそこにいる静けさ。完全な無音でも、声が響く場所でもない、あの静けさが、今は少し恋しいです。帰ったら最初に行きます。カエル」
カインは手紙を読み終えて、しばらく持っていた。
返事を書こうと思った。
でも、カエルがどこにいるかわからない。次の目的地もわからない。
カインは手紙を、棚の引き出しにしまった。
カエルが帰ってきたとき、渡す。
そう決めた。
その夜、閉店後に返事を書いた。
「カエル様へ。手紙をありがとうございました。店は変わらず続いています。豆は新しいものが入りました。窓際の花はシルヴィアさんが先週持ってきました。あなたがいない間も、誰かが来て、誰かが帰っていきます。帰ってきたとき、その続きをお話しします。お待ちしています。カイン」
書き終えて、読み返した。
自分らしくない文章だと思った。
でも、書き直す気にはならなかった。
引き出しに、カエルの手紙と一緒にしまった。
帰ってきたとき、渡す。




