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文書:世界の歩き方〈第二巻:世界の人々・迷宮について〉

第三章・第三十二話にてセオとクリスがアーリアル伯の屋敷での語学の勉強の合間に読んだ本で、第二章で持たされたガイドブックの第二巻になります。

彼らは第三巻以降も探しましたが、とんでもない蔵書量ゆえに、結局見つからなかったようです。

 ― 冒険者を目指す者へ ―

  このエーテルスクエアの世界で冒険者を目指す者へこの書を遺す。

 冒険者達よ、恐れるな。真実はその道の先に待っている。

 全てを求めよ、あなたが求める全ての答えは、至る所にただ漫然と転がっている。


 ― 様々な人種 ―


 この世界で「人間」と呼ばれる人種は我々人族を始め、獣人族、魔族、海人族、そして竜人族の全部で五つ種族である。

 その内、我々人族を除く四つの人種については種によって様々な姿をしており、まさに多種多様といえるだろう。その点、我々人族はせいぜい肌の色の違いがある程度で外見的な特徴はそれ以外にない。故に最も見分けがつきやすい種族である。

 以下は各種族の特徴などを記す。


 『人族』

 このエーテルスクエアの世界に於いて最も数が多く、最も広い地域で生活する種族、それが人族である。

 平均的な身体能力では恐らく全五種族中で最も低いとされるが、ごく一部に限っては獣人族や竜人族をも上回る能力を持つ者もいるが、この場合まさに例外中の例外と言えよう。ただし一部の魔族や竜人族を除けば最も賢い種族であり、その知恵こそがこの世界でも最も有力とされる所以とも言えるだろう。

 実際に魔族の中には人族を崇める種族もいれば、逆に軽蔑や侮蔑の対象、最悪の場合、外敵と見なす種族までいるほどであり、高い知力を持つが故の優遇であり、冷遇ともいえよう。

 また、魔術を発展させてきた種族でもあり、現在一般化されている魔術の大半は人族の手によって生み出されたものであるとされている。

 また優れた知力を持つが故に最も争乱の火種となりやすい種族であり、過去に起こった数多の大戦ではその殆どに人族が介入しているという文献がある程だ。

 余談ではあるが、ワダツミ島の住人たちも恐らく我々と同じく人族であると考えられる。


 『獣人族』

 ガルムス大陸やマクシミリアン帝国で多く生活している人間であり、四肢獣種と似たような顔つきで、全身は大抵が体毛に覆われいる。代表的な種としては代々王族を務める獅子人種と特に数の多い犬人種、猫人種などがいる。

 獣人種全般において、非常に高い身体能力を有しており、戦闘においてはその高い身体能力を活かした白兵戦を特に得意としており、大抵の獣人種は武器を用いることは無く己の爪や牙を利用した戦い方を取るが、訓練などにより武器を取る者も少なからず存在している。ただし、大抵の場合は武器を使用せず、自らの肉体で戦うほうが強いことが殆どで、あえて武器を使うのは自らが魔物ではないというアピールであるとされている。

 身体能力が高い反面、魔術は不得手としており、獣人種で魔術を扱えるものはいないが、何かしらの手段で魔素を消費することは出来る様で、私も何度か魔素欠乏に陥った獣人種を見たことがある。

 また、魔光珠という結晶が存在し、これを獣人種と後述の竜人種が手の内で砕く事で一時的に獣化・竜化するという特徴も持つ。獣化することで種ごとの特徴が強化され、より四肢獣種の姿に近くなる。

 さらに四肢獣種の扱いに慣れており、家畜化された四肢獣種の魔物の大半はこの種族によって調教されている事が多い。


 『魔族』

 主にグリモルテ大魔大陸に住む種族で此方も四肢獣種と同様に種によって多種多様な姿を持っている。

 かつては大魔大陸全土を統べていた種族であり、人族と獣人族との連合軍との戦いに破れ、大魔大陸の南方の痩せた土地へと追いやられる事となった。

 ハルモネシス皇国の国教であるハルモニア教においては一部の例外となる種を除き、忌避の対象とされている。

 魔族の代表的な種としては、白蛇山脈に住まう鉱物の扱いに長ける鉱山種(ドワーフ)や、グリモア大森林に住まう長寿の種族である長耳種(エルフ)や小柄で器用な小人種(ハーフリング)などがそうであるが、魔族の種族の数は非常に多く、この三つの種も多くの魔族の中のごく一部に過ぎない事を忘れないでほしい。

 第一巻の亜人種の項でも記した様に、一部の魔族については亜人種と姿形が似通っている種も多く、魔族か魔物か迷った場合は呼びかけるのが望ましい。

 魔族の中にはかなり特殊な能力を持つ者も存在する、その最たるものが吸血人種(ヴァンパイア)である。

 彼らの食料は他者の持つ魔素や血液であり、それも一吸いで一年は持つほどである。かつては吸血人種に噛まれ、血を吸われた者は強力な催眠によって彼らの下僕として動く日々を迎えることとなるとされていたが、昨今ではその説が覆されたらしく、彼らに噛まれた者は血を吸われる際に感じる甘美なる快楽を求めるようになり、その為に彼らに付き従う様になるというのが実という話である。

 催眠という意味では同じではあるが、これでは意味合いが異なり、ある種の奴隷契約とでもいうべきであろうか。

 この様に、魔族には唯一無二の能力を持つ種が多数存在しており、世間一般的に言えば魔物と最も近似した種族と言われている。


 『海人族』

 エーテルスクエアの中でも特に目撃例が少ないのが海人族である。基本的には彼らは海中で生活をしており、人間の中でも唯一水中で生活できる種族である。

 昔は陸上も生活の場としていたという話も残っているが、これに関してもかつての大戦で魔族と混同され人族より地上を追われ、現在のように海中で生活をしているとされている。

 現在では極少数ではあるが陸上での生活を始める者もおり、かつての大戦の傷痕も薄れつつあるというが、少なからず当時の大戦で彼らが受けた仕打ちは許されるものではない。

 この種族についても例に漏れず、種によってそれぞれ特徴が異なるが、原則的には海王種の特徴と近似していることが多い。また、彼らは男性と女性で全く違う特徴を持ち、男性はまさに人の形をした海王種、そして女性は海王種の下半身を持つ人族の女性といった風貌である。特に女性に関しては魔族の長耳族と同様に美しく、心を奪われる人間も少なくない。

 また海人族は海王種と会話できるらしく、彼らが自ら敵対しない限りはお互いを傷つける事はないらしい。

 使用する言語である海人族は彼らとの交流が希薄となった今では、地上では忘れ去られつつある言語となっており、現在では文献も僅かに残るのみとなっている。


 『竜人族』

 最後に竜人族と呼ばれるこの種族は現在ではグリモルテ大魔大陸の南部にあるドラグネイア島と呼ばれる島でのみ生活する存在であり、人間という種族が生み出した現在の歴史の遥か昔から存在していたとされる種族である。

 彼らは一貫して世界の傍観者というスタンスを崩さない。故にかつての大戦にも一切関わることはなかった。

 彼らが他の種族に干渉をしないのは彼らの力が強大すぎる為というのが有力視されている。

 実際に獣人族と同様に魔光珠を用いて竜化した竜人族は圧倒的な力を誇る。筆者も個人的な交流を持つ竜人族がいたが彼らの助け無しでは恐らく暗黒竜の討伐は決して成すことはできなかったであろう。

 彼らの教えの中に受けた恩義は必ず返すというものがあるが、その恩義はあくまで個人的なものに限り。例えば戦への加勢と言った組織的な物に対しては絶対に関わることはしない。

 彼らは人間全体から見れば極少数の種族ではあるが、その少ない人数ですらその気になれば世界の均衡を崩せる程に強大であるため彼らとは敵対することは即ち死を意味するものとなるだろう。


 ― 迷宮 ―


 この世界には迷宮と呼ばれるものが無数に存在している。我々冒険者にとって最大の舞台となるこの迷宮は常に命の奪い合いだ。迷宮の最奥には必ずその迷宮の核となる魔石が存在する。魔石は迷宮が溜め込んだ魔素の結晶であり、命そのものである。新たに生まれた迷宮でもそれまでに溜め込んだ魔素の余剰を魔石として配置する。踏破され続けた迷宮は最終的に消滅し死を迎えるのだ。迷宮とはそのあたりにある洞窟などとは訳が違う。迷宮とは生き物と言っても過言ではない。

 迷宮は罠、魔物、迷宮守護者ダンジョンガーディアンと言った障害で我々冒険者達を待ち構えており、その腹の中へと飛び込んでくるのを待っている。迷宮は飛び込んで倒れた愚かな冒険者達から魔素を吸い尽くすのだ。

 さて、迷宮が生き物と呼ばれる所以については、迷宮は約一年毎に形を変え、その腹の中に財宝という餌を下げて冒険者達を引き入れようとしている。そこで倒れ、遺棄された者達は迷宮の一部として取り込まれる。ある者は迷宮の魔石の一部に、ある者は迷宮を守護する守護者に、ある者は迷宮を徘徊する異形の魔物へと姿を変え、迷宮に永劫縛られることとなる。

 また、冒険者達を仕留めきれず、踏破され続けた迷宮は最終的に死を迎える。復活することはなく、全ての冒険者達が迷宮から出た後、人知れず消滅しているのだ。これが迷宮が生き物と、そう呼ばれる所以である。

 これから迷宮へと挑む者よ。命を賭す覚悟はできているか?踏破に向けた準備は済んでいるか?もしどちらか片方でも出来ていないのならば迷宮へ挑むことは諦めよ。迷宮とは常に死と隣り合わせである戦場であることを決して忘れてはいけない。迷宮へ挑むと決めたその瞬間から迷宮との命のやり取りは既に始まっているのだ。


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  著者:ウィンド・チャレンジャーズ 〈竜神歴3775年生~3828年没)


 ブリュンヒルデ王国ヒルデガルダ出身。初めてエーテルスクエアの外界の壁の発見・調査を行った冒険家。冒険者を経てブリュンヒルデ王国騎士長の座に就くも、数ヶ月後で身分を捨て再び冒険者としての活動に身を投じる。現在では色々な逸話が残されており、代表的なものとしてドラグネイア島最大の迷宮にて暗黒竜(ダークドラゴン)の討伐などがある。

 この偉大なる冒険者の最期は大魔帝国デモンガルドの迷宮内にて石化蝙蝠(ペトロバット)の糞を浴びることによる石化だった。


  編集者:レイヌール・コラソン 

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