第百九十五話:猛禽の群れ
カディフの村を発ってから早五日、更に二つの村を経由して、間も無くウォルス達の依頼の終着点であるブリトンへ着こうとしている。
まだ日が昇り始め、明るくなったばかり。昼過ぎにはブリトンに着く予定だ。
「ぶへーっ…、何とか追い払ったけど鳥種の魔物ってのはどうしてこうもすばしっこいかねぇ…」
「流石に空を飛んでいる以上、そうそう肉弾戦には持ち込ませて貰えませんからね」
「私は魔術があるから群運巨嘴鳥みたいなやたらデカくてタフな奴じゃなけりゃ楽だけどねー」
「俺も魔術練習すっか…?」
ウォルス達は今しがた魔物を撃退し、魔獣車に戻って腰を下ろした所だ。
襲ってきたのは殺人鷲、素早く攻撃的な鳥種で、A–級の魔物だ。
ウォルスは必死に追いかけようとしていたが、滑空して襲ってくる所にアナが放電撃で迎撃し、それに合わせてラムズが魔剣術で一閃、深手を負った殺人鷲はそのまま逃げ去っていった。
「ウォルス、ああいうのは引きつけてぶん殴ってやりゃァいいンだよ」
「レオさん…、すんません、ありがとうございます」
「ウォルス、君はいちいち無駄な動きが多い。力での押し合いでは頼りになるがああいう素早い魔物にはからっきしじゃないか」
「…どうにも待ったりすんのは苦手なんだよなぁ。行くなら行く、逃げるなら逃げるみたいな単純な相手なら楽なんだがなぁ…」
「じゃあ待つなら待つでいいんじゃ…」
「あ、そうか。セオドアさん、ありあとやっす!」
ウォルスはいい意味でバカだった。
考えるのはどうも得意では無く、こうと決めたら一直線だが、教えた事は意外と飲み込みが早い。
単純な力押しは強く、スピードも意外とある為、考える力さえあればA級とは思えない程の実力の持ち主だ。
その分を冷静沈着なラムズとアナの魔術がカバーしていると言うべきだが、彼が考える力を持てばしっかりとリーダーを張れるだけの能力はあると思える。
「セオ、軍隊禿鷹の群れだ。ありゃ数が多過ぎる、ウォルス達だけじゃ手が足りなさそうだぜ?」
「…わかった。ラングさん、魔獣車はこのまま走らせててください。俺達は先に行って迎撃します。アリーシャ、残ってラングさんの護衛を頼む」
「了解しました、お願いしましたよ!」
「畏まりました、お気をつけて」
ラングにそう告げ、俺達は武器を抜く。
ウォルス達も先程戻ったばかりだが、すぐに魔獣車を降りて迎撃の準備を取っていた。
「うへぇ、またかよ…」
「そんな顔しないの、仕事でしょ?」
「そうですよウォルス、それにさっきセオドアさんとレオさんからアドバイスしてもらったのをもう忘れたんですか?」
「…そうだった、待つなら待つ、突っ込んできた所をぶん殴る、…だったな!」
ウォルスは両頬を叩いて景気のいい音を響かせると、背中の斧を手に取り鼻息を荒くしていた。
「準備はいいな? 行くぞっ!」
「俺達もセオドアさんに続くぞっ!」
ーーー
軍隊禿鷹の群れを撃退している内にウォルスはコツを掴んだのか、次々と襲いかかる奴らを落としていた。
「来やがったな…オラッ!」
「ゲギャッ…!」
「ヘヘッ、慣れてきたら楽なもんだ!そらよっ!」
「ギャアア…」
突っ込んで来る敵を躱し、受け止め、スピードを落とした瞬間に手に持つ斧で叩き斬る。
耳で聞いた事に何の疑いも持たずに純粋にそのままを実行するウォルスの単純さは彼にとっての最大の武器とも言えるのかもしれない。
ただし、それ故の問題も勿論存在した。
「あらよっと…!」
「ウォルス、後ろからも来てるわよっ!」
「ギャアアッ!」
「ぬおっ!? …危ねえ、かすったっ!」
単調な動きの中での変化にやや対応が遅れがちになっている。
幸いアナが直前に知らせた事でウォルスは直撃を避けたが軍隊禿鷹の鋭い嘴は彼の頰を掠め、鋭い切り傷を刻み付けていた。
「さて、落としても落としてもキリがないな…。こうやって群れで襲ってくるタイプの魔物ならどこかに…」
軍隊禿鷹は単調に突っ込んで来ては嘴か脚の爪で襲ってくるだけではあるが、数だけは多く、モタモタしていてはラングの魔獣車が此処に突っ込んできてしまう。
こういった群れで行動する魔物達にはリーダーが必ずおり、そいつさえ仕留めれば勝手に統率を失って逃げていくのが群れの習性というものだ。
「おっと。…どこだ、どこにいる…?」
リーダーを探している間にも軍隊禿鷹は襲ってきているが、その攻撃を躱しながら頭上で旋回し続けている奴らを観察していた。
流石に奴らも間抜けでは無く、群れのリーダーが止まって高みの見物を決め込んでいる訳ではない。
恐らくは頭上で飛び回る兵隊達に紛れて、自身も旋回しながら様子を伺っているのだろう。
「次から次に集まって来る…、早く何とかしないとな…」
軍隊禿鷹は撃墜する端からまた別の個体がやってきては群れに合流しており、このままのんびりとしていては日が暮れてしまう。
数に物を言わせた多角的な攻撃は思ったより厄介で、単体で突っ込んでくるかと思えば時には躱して反撃を仕掛ける一瞬を狙ってくる個体もいる。
攻撃そのものは単調でも、知ってか知らずか仕掛けてくる連携はこちらのリズムを大きく乱すのに一役買っていた。
「うっ…!ここまで数が集まると流石に我々では手に負えなくなってきましたね…!」
「数が増えて避けるのが精一杯…!とても反撃まで仕掛けられなくなってきたわね…!」
「こうなるとセオドアさん達が数を減らし続けてくれるのを待つしか無えなっ…、うおっ…と…、何でえ、来ねえのか…」
俺達が仕留める数よりも集まって来る数の方が多くなりだし、ウォルス達も次第に回避一辺倒になり始める。
当然、軍隊禿鷹を撃墜するペースも鈍りだして更に数を増やしている。
「フェイントまで仕掛けて来るのか…。うん? いや、待てよ…?」
見る限り自分を含め、俺達を襲ってくる軍隊禿鷹は墜とされない限りは滑空し始めると必ず攻撃を仕掛けてから離脱するという行動を一貫して見せており、他の誰もフェイントを受けた様な様子は無い。
「チッ、せっかくタイミングよく仕留められるとこだったのにな…、うわっち!」
「ウォルスさん!そいつがどれかわかりますかっ!?」
「…悪い、見失っちまった!」
流石にウォルスもそこまで視野を保てる程には余裕が無く、他の二人と同様に回避に集中している状態では無理も無い。
だが、そういった行動の違いという発見があったのは大きな収穫だ。
「みんな、フェイントをかけてくる奴が多分リーダーだ!迎撃や回避で忙しいだろうけど、可能な限り避けても反撃の構えだけは解かないでいてくれ!」
「「了解!」」
顔までこちらに向ける余裕はないもの、はっきりとした声で全員が返事を返す。
当然その間にも軍隊禿鷹の群れの猛攻は迫っているが、集中を切らす事無く襲い来る敵を躱し、仕留めていた。
「違うッ、こいつでも無ェ…!」
「よっ、…とおッ!…うーん、なかなか見つからないねぇ」
「ふっ!…違いますわね!…そこッ!」
「爆炎ッ!…雷ノ一、紫電ッ!これも外れね…」
軍隊禿鷹が散らした羽が舞う中、次々に奴らを墜としていくがまだまだ攻撃の手が止む気配は無い。
「影蝙蝠ッ!…ッ、歪送門ッ!…危ないわねッ!」
「断ッ!…このままでは消耗戦に御座るな」
「しつっこいのよッ!雑魚もこれだけ群れると面倒、ねッ!」
「見つからない…。少なくとも墜とした奴らはリーダーじゃないとして…、どこかにいる筈なんだが…」
入れ替わり立ち代わりに旋回し続けては急降下を繰り返す軍隊禿鷹の群れの中にそれらしい個体は見当たらず、後から追ってくるラングの魔獣車も近付いてきている。
急がなければ彼も奴らの攻撃に晒されてしまう為、俺は少しばかり焦り始めていた。
「…くっ!…浅かった様ですね…、肩をやられましたか」
「ラムズッ!」
「…避ける分には問題ありません。ウォルス、君は私の心配などせず奴らを!」
ラムズが痛み分けの様な形で軍隊禿鷹の攻撃を受け、抉られた様な傷を肩に受けていた。
彼は駆け寄ってくるウォルスを突き放すと服の袖を引き千切り、傷口に強く押し当てて止血しながら回避を続ける。
「クリス!」
「はい!治癒!」
ラムズが傷を負うのを見ていた俺はすぐに彼の応急処置をクリスに頼む。
クリスの治癒魔術を受けた彼の傷は直ぐに癒え、流れていた血の跡だけが肩と一緒に抉られた服に滲んでいた。
「すみません、助かります!」
「お礼は後で!ラムズさん、後ろから来てます!」
「…っ!」
「ギャッ!」
「ギャギャアーーッ!」
「別の個体が…!? くうッ!」
クリスの声でラムズが後方から迫っていた軍隊禿鷹に気付いて剣を構えると、その後ろに付いていた別の個体が抜き去りラムズに襲い掛かる。
辛くも彼は手にした剣を嘴に合わせて弾き返し、追撃を免れていた。
「うっ…!」
ラムズは攻撃を受け流してはいたが、その直後に怯んでしまう。
別に受け流した攻撃が重かった訳ではない。
立ち直った彼の顔を見ると、数滴の蒼い魔物の血が付着しており、その内の一滴が目に入ったのだろう。
「…目に血が入っただけです…!お気遣いなく…!」
「…ええ、お陰でやっと見つけました!空歩法ッ!…クリス、フォルクッ!援護してくれッ!」
ラムズの痛み分けの攻撃のお陰で漸く群れのリーダーの見当がついた。
軍隊禿鷹のリーダーは自身も攻撃に加わるタイプのリーダーであった為に、見ているだけでは判別がつかなかった。
奴は痛み分けになったラムズに追撃を加えようとしたがクリスの一声で気付かれてしまうと、恐らく危険を察知したのか、近くの仲間をけしかけてきたのだろう。
勘の鋭さは確かにリーダーらしくはあるが、それ故に起こったのは自身をリーダーだと認めてしまう痛恨のミスだ。
加えて奴はラムズの剣によって傷を負っている事もあって最早見失う事はない。
俺は空気を蹴り空を走る魔術を自身に施すと、遠隔攻撃の精度において信頼できるクリスとフォルクに援護を頼み、真上を飛ぶ手負いの軍隊禿鷹が垂らす蒼血の滴を辿りながら空へと翔け出していた。
「ギャッギャギャッ!」
「ギャーッ!ギャーッ!」
「…!どうやら当たりだセオッ!一斉にそっちに行ったぞッ!」
軍隊禿鷹のリーダーに狙いをつけた途端、仲間達に襲い掛かっていた群れが俺に狙いを変えて踵を返し、一斉にリーダーへの攻撃を阻止しようと向かってきた。
「そうはさせませんッ、誘導追尾弾ッ!」
「セオ、そのまま真っ直ぐだッ!速射・六連星ッ!」
「ギャッ…!」
「ガアァッ…!」
援護の為に放たれたクリスの魔力の矢とフォルクの光の矢が俺を追い抜き、次々に迎撃に向かってくる軍隊禿鷹を貫き墜としていく。
「セオッ、まだ来てるわッ!」
「邪魔させるわけにはいかないわね。ちょっと消えてもらえるかしら、歪送門ッ!」
クリスとフォルクの援護射撃を逃れ、向かってくる軍隊禿鷹の前に空間の歪みが発生すると、奴らは止まる事が出来ずにその中へと吸い込まれて消えてしまう。
クリスとフォルクに加えてクローディアの援護のお陰で軍隊禿鷹の群れのリーダーへの道筋が開かれると、俺は右の手に剣を構えていた。
「ギャッ!?」
俺が近付いて来たのに驚いた群れのリーダーは慌てた様に翼をバタつかせ、羽を散らしながら逃げようとしている。
「まだ遠いか…だったらッ…!」
流石に相手も鳥種の魔物だけあって空中の逃げ足では敵わない。
一足先に逃げ始めた群れのリーダーと俺との距離は徐々に離れていく。
しかし、剣が届かないのなら別の手段を取るまでの話だ。
「放電撃ッ!」
「ギャッ…!」
剣を握っていない左手から電撃の槍を放ち、背を向けて逃げだした軍隊禿鷹のリーダーの胴を貫く。
電撃に身体を貫かれた軍隊禿鷹のリーダーは身体を痺れさせ、思うように翼を動かすことが出来なくなると、速度を落として高度を下げていた。
「普段なら狩る側として獲物の上を取ってるんだろうけど、上を取られて狩られる側になった気分はどうだ? はあぁぁッ!」
「ギャァッ…!」
右手で握っていた騎士剣を両手で持ち直し、墜ちていく群れのリーダーへ脳天から振り下ろす。
バランスを崩していた軍隊禿鷹のリーダーは身体を捻らせると、致命傷となる頭や首、胴体から剣を躱していたが、完全に躱しきれた訳ではなく、剣の切っ先が片翼を捉え、深い傷を負わせていた。
「ギャアアアァァァッ…!」
切断といかないまでも翼に重傷を負った群れのリーダーは思うように翼を羽ばたかせることが出来ず、叫び声とも言える激しい鳴き声を上げ俺の耳に響かせながら地面へと真っ逆様に地面へと墜落していく。
鈍い音と一緒に地面に叩きつけられ、そのまま無傷の片翼を広げてはいるものの、もう片方の翼には力が入らない様で最早再び飛ぶ事は叶わない状態だ。
「ギャッ!」
「ギャァッ!」
「…邪魔だッ、どけェッ!」
まだ残っている軍隊禿鷹達がリーダーを護りに入ってくるがそんなものに構わず一刀のもとに斬り捨てる。
「追い詰めたぞっ!トドメだッ!」
「ギャッ…!…ガ…」
地面に這い蹲る軍隊禿鷹のリーダーの背に剣を突き立てると、短い断末魔をあげ、力無く翼を広げながら地面に突っ伏してしまう。
それと同時に他の兵隊である軍隊禿鷹達はリーダーの死亡を認めた途端に逃げ始め、あっという間に地平の向こうまで飛び去ってしまった。
「…何とか、間に合ったか」
「セオドアさん!無事ですか!?」
「ええ、何とか。少し引っ掛けられたみたいですがかすり傷です」
気付かぬ内に腕には一筋の薄い切り傷が刻まれていたが、恐らくいつの間にか爪か嘴で切られていたのだろう。
大した傷では無く、既に血も止まっている為気にするまでも無い。
仲間達も同じく殆どかすり傷の様で、その数の多い少ないはあるが、大きな傷を負ったのはラムズくらいのものでそれも治療済みだ。
「これだけの群れ…、近くに巣でもあったんだろうか…」
「ふむ…、だとすれば…、セオドアさん、さっき空を飛ばれていましたが、高い場所から辺りを見回せませんか?」
「…? わかりました、ちょっと待っててください」
ラングは少し考えると、思いついた様に俺に周囲を見回す様に頼んでくる。
目的はよく分からないが軍隊禿鷹が去った今、周囲に脅威となる魔物も存在しない為に言われた通りに再び空へと翔け上がり周囲を見渡してみた。
「あれがブリトン…ロームと変わらないくらい大きい街だな。それと…。あ、あれか」
上空からはブリトンの街がよく見え、そして程なくして窪地となった場所にもぬけの殻となった軍隊禿鷹の営巣地を見つける。
恐らく奴らはリーダーがやられたと同時に巣を放棄して逃げたのだろう。太い枝を編んだ様な巣には沢山の卵が残っている。
すぐに着地してそれをラングに伝えると、彼は握り拳を作ってガッツポーズをしてみせた。
「セオドアさん!少し寄り道してもいいですか!?」
「はい?」
「軍隊禿鷹の卵ですよ!あいつら、肉は臭くてとても食えたものではないんですがその代わりに卵は栄養満点の貴重な食材なんですよ!」
ラングが目の色を変えて軍隊禿鷹の営巣地に寄る事を提案してくる。
幸いまだ日は高いし、営巣地を訪れてもそれ程時間はかからないだろうしクローディアの魔術を利用すれば運搬にも手間取らない筈だ。
「…わかりました。すぐに終わるでしょうし折角ですから回収していきましょう。ラングさんはここで魔獣車を停めて待っていてください」
「ありがとうございます!あ、勿論タダ働きというわけじゃありませんから、可能な限り持ってきてくださいね!」
「よし…、さっさと集めよう。女性陣はここで待っててくれ。あとクローディアはこっちだ」
「へ? 私も?」
「あ、なるほど」
俺達は軍隊禿鷹の営巣地に入り速やかに卵を回収すると、連れてきたクローディアに歪送門を開かせて次々に空間の歪みの先にある魔獣車に待たせていた女性陣に回収した卵を渡していく。
軍隊禿鷹の卵は子供の頭程もある為、持ち運ぶにも限界はあるし、うっかり落としてももったいない。魔獣車を持ってくるにしても街道は滑らかな石畳だが、道を外れれば砂利が転がっている為、振動しやすい。
割れてしまっては折角の貴重な食材もパァだ。故にこの方法が一番確実だった。
ーーー
卵を回収し終えた俺達は直ぐにもう見えているブリトンの街へと進んでいた。
一つだけ割れてしまった卵があったが、聞けばやったのはマリオンらしく、力加減が苦手な彼女が卵を抱えた拍子にうっかり潰してしまったらしい。
そこから彼女は受け取り役から外された様だ。
「何よ、こんだけあれば卵一つくらい別にいいじゃない!」
「…ですから、その事はもういいとラングさんも仰ってますわ。それに魔人の加護の事を忘れていた私達にも問題がありましてよ」
「日常生活じゃうまく加減してるけど、そもそもが不器用だったものね。…鉱山種な・の・に」
「キーッ!…ふんっ、卵なんて自分で料理しなくても食堂に行けば幾らでも食べられるわ!それに卵なんて食べなくても死にはしないしっ!」
軍隊禿鷹の卵一つでマリオンはけなされ、からかわれており、見ていて気の毒ではある。
「へっへ。ま、誰だって向き不向きはあるわな。魔人の加護持ちなんて確かに卵に触るのにゃ全く向かねェ。次から気をつけりゃいいだろ」
「レオ…アンタは解って…」
「…一つ疑問があるとすりゃそんなヤツがなんで自分から卵に触ろうとしたかだけどな」
「…キーッ!」
「うおッ!…やめろッ、お前のパンチはッ、マジでッ、シャレにッ…どへうッ…!」
折角フォローしていたレオだったが、余計な一言でマリオンの消えようとしていた怒りの炎に油を注いでしまった様だ。
彼女の怒りに任せた拳の一撃が避け損なったレオの脇腹に突き刺さり、鈍い骨の折れる音と共に街道の向こうへと吹っ飛んで行く。
「…クリス、多分マリオンの事だ。治してくれないと思うから治療してやってくれ」
「…はい」
一撃で瀕死の重傷を負ったレオをクリスが治療する。
街も近く周囲に危険な魔物がいないからいい様なものだが、そうでない場合は流石に控えて欲しいところだ。
とは言え今のは一言多いレオが悪いというのは全会一致であり、同情の言葉すら無い。
「さ、着きましたね!ここがブリトンの街です!」
目の前には大きな門があり、その門には多くの鎧に身を包んだ騎士達が首を揃えて並び立っている。
俺達は彼らに視線を向けられながら、門をくぐり抜けて街の中へと入っていった。




