第十一章断章:すれ違い
「ふう…漸く着いた。ここだな…」
少年が見上げていたのは大きな門。
西アトラシアの片田舎を出た彼は大きな港町であるテラービブを経由し、魔導連邦が誇る世界最大の魔導学校へ入学する為にこの場所を目指していた。
彼がここにくる途中で既に遠目からはその門の奥が見えていた。
門の奥に広がっていたのは城と見紛う様な巨大な建物で、そこでは日夜魔導士や魔剣士達が研究と鍛錬に励んでいる。
少年が巨大な門の奥にある施設に目を輝かせていると、近くを通りがかっていた白髪の老人に話しかけられていた。
「おや…見ない顔だね。ここに何か用かな?」
「ええと…、ここがグリモリオ魔術学校であってますか?」
「ええいかにも…。入学希望の子かな?」
「はい!そうです!」
少年の姿は旅装、そう古くも無いがそれなりに草臥れており、その腰には申し訳程度と言わんばかりの突剣が挿してあるが、此方はそう使われた様子は無い。
少年は現在十一歳、間も無く十二歳を迎えようとしていた。
彼の家では十二歳を迎えると旅に出なくてはならないという決まりがあるが、八年半早く先に旅に出た兄姉を追いたい気持ちでいてもたってもいられなくなり、両親に無理を言って予定の十二歳から凡そ一年余り早くに旅に出ていたのだ。
彼は戦闘に於いては所謂凡人で特別に秀でた才能を持って生まれたわけではない。
だが人の倍以上の努力を重ね、身につけたのは魔術教本に載っている中級まで魔術の殆どと中級剣士の剣術、それに並ぶ程の斧や槍、弓などの一通りの武器の扱いを学んでおり、故郷の村の自警団の父を除く他の誰よりも強くなっていた。
「ふむ…、魔術は使える様だね?」
「独学ではありますが多少は」
「よろしい、それでは案内するとしよう。君、門を開けてくれ」
「はっ」
その老人が門衛に声をかけると直ぐに返事と共に巨大な門が開かれる。
門の先には城の様な校舎とそこへと続く長い石畳の道が伸びており、少年はその道を老人に導かれながらついていった。
老人に導かれる途中、少年が周囲を見回していると、魔導学校の学生達ともすれ違う。
随分と年齢を重ねた学生や自分と殆ど年齢の変わらない学生。当然、異人種の学生もいる。
少年はこの学校があらゆる人種を超えて老若男女が魔導技術を学ぶ者達が集まる場所なのだと改めて気付かされていた。
「驚いたかね? ここは連邦の学校である前に大魔大陸にある学校、故に魔族の学生も少なくは無い」
「なるほど…、でもそれを言えばハルモネシス皇国の、いや、ハルモニア教信者の学生もいるのでは? 昨今では一部の魔族とは幾らかの交流があるとは言え、中には魔族を嫌う教えがある筈ですが…」
ハルモニア教の信者達にとって魔族との交流は禁忌と言うべきものだ。
昨今では必要に駆られて長耳種や半長耳種、鉱山種の様な一部の魔族との交流については解禁されているが、それでも未だに古くからの信者の一部にはそれすらも教義に反すると、良い顔をしない者もいると聞く。
「よく学んでいるね。確かにハルモニア教の信者である学生も、彼らの教義の中で交流を解禁されていない魔族もこの学び舎には少なからずいる。だが、ここは魔導連邦の一部であり学校という一つの共同体なのだよ。差別などあってはならないのだ。この学び舎で学ぶ者全てが、魔導技術の向上という目標に沿って一つにならねばならない。当然学生にはそれぞれ才能の有る無しもあれば、貧富の差、例えば貴族や王族出身の立場あるもの、貧民街で生まれ育った者や奴隷出身のこれまで虐げられてきた立場にある者、はたまた冒険者の様な自由な立場にあるものもいる。彼らの腹の底までは知るところでもないし、探り様もないが、この学び舎にいる限りはそれを表沙汰にはしないというのがこの学校の方針なのだ、そしてそれを象徴するものとして、学生達には同じ服を着てもらう様にしている」
周りの学生を見ると、一部作業服の様な服を着ている学生や職員と思わしき人物以外は皆一様に同じデザインの服を身につけている。
勿論一部の魔族については形状こそ異なってはいるが概ね同じデザインになっている。
「あの作業着は魔導器や魔導具について研究をしている学生だね。この学び舎には工房もあるし、学生専用のギルドも設置してある。個人の研究で必要な素材も基本的には学生達で調達するようにしているんだ」
少年が老人の言葉に頷きながら後をついていく内に二人は校舎の前にある階段の前に辿り着く。
階段を昇り、校舎に入るとそこには壮年の男性が描かれた大きな肖像が飾られていた。
肖像の男性は皺や髪の色、髭の有無など細部で異なっているが、よく見ると少年を校舎へと案内した老人、その人である事に気付く。
「…! つかぬ事をお聞きしますが貴方は…」
「おお、自己紹介するのが遅れてしまったね。だがもうすぐ君を案内する先へと着く。自己紹介はそこで改めてするとしよう」
「…わかりました」
少年は老人の正体には薄々勘付いていたが、老人は敢えてその場で正体を明かすのはやめて、案内先へ着いてから行う事を提案した。
それから校舎一階の廊下を進むと程なくして老人はある一室の前で立ち止まる。
部屋の扉を開くとそこには応接用の低い机とソファ、そしてその奥には大きな机がある。
「さぁ入りたまえ」
「失礼します」
少年は老人に入室するよう促されると、一礼をして部屋へと入る。
老人も入室し、一番奥にある机に向かうと、椅子にかけられた上着を取り、袖を通していた。
その上着の胸にはこの魔導学校の校章が光っているのがわかる。
「私だ。入学希望者が訪ねてきている。ああ、お願いするよ」
老人は中指につけた指輪にそう呟くと、少年に対し、ソファにかける様に促した。
「はい、失礼します」
少年が促されるままソファに腰掛けると老人もまた対面するソファに腰掛けていた。
「さて、先ずは自己紹介といこうかな。もう気付いているとは思うが私はこのグリモリオ魔導学校の学長、名はユーゼル・ペンドラゴン・アヴァルという。これから君が学ぶこの学校の長、というわけだ」
「私は西アトラシア、ブリュンヒルデ王国はカルマン村から参りました、シグルド・ホワイトロックと申します!これからこの学校で暫くの間、お世話になりますので是非とも宜しくお願い致します!」
「ほほ、元気で宜しい。…はて、ホワイトロック…」
シグルドの元気な挨拶に学長ユーゼルは柔かに笑みを見せていたが、シグルドの苗字であるホワイトロックの名を聞いて何かに気が付いた様だ。
そして、それと同時に学長室の扉の向こうから誰かが二度、扉を叩く音が聞こえてくる。
「入りなさい」
「はっ」
ユーゼルが扉の向こうからする音に返事を返すと、その扉が開かれ、美しい長身の女性が幾つかの書類を手に学長室へと入ってくる。
長く美しい瑠璃色の髪を揺らしながら、その女性がユーゼルの前に手に持った書類を置くと、優雅な所作で彼の隣に腰を下ろした。
「彼女は副学長のジュリエット・カエサル・ローム。これから彼女に入学に際しての幾つか説明をしてもらうのでよく聞いておきなさい」
「はい、宜しくお願いします!」
「…学長、宜しいのですか? もう数刻後に別の来客が来られる予定、明日にしては…」
「なに、一人増えるだけです。そちらの案内については私一人で問題無いでしょう。君にはこの子の入学案内をお願いします」
「はぁ…。…では、こちらの書類に目を通した上で署名と…、入学試験を受けるに際し受験料として金貨二枚をお預け願いますわ」
「…わかりました」
シグルドはジュリエットに案内されるまま、提示された書類に目を通し、署名した上で受験料の金貨と共に書類を返す。
「確かにお預かり致しましたわ。さて、これから貴方には入学試験を受けて頂きます。内容としては簡単、貴方の持ち得る魔導技術を試験官の私に見せて頂くだけですわ。宜しくて?」
「はい!宜しくお願いします!」
「では学長、私はこれで…。ご来客の案内は暫くの間お一人でお願い致しますわ」
「ええ。ではシグルド君、君の力をジュリエットにしっかり示してください」
「はい!」
「ではシグルドさん、これより試験会場へとご案内しますわ。私の後についてきてください」
シグルドはジュリエットについて学長室を出ると、そのまま校舎を出て校庭へと連れて行かれる。
その一角には地面に描かれた魔方陣に囲まれた建物があり、その中へと入ると魔術の修練に励む学生達が人形を相手に次々に初級魔術や中級魔術を打ち込んでいた。
「「副学長先生!こんにちは!」」
学生達はジュリエットの入室に気付くと直ぐに魔術の修練を止め、彼女に挨拶をする。
「続けて結構よ。貴方達、一つ場所を開けて頂けるかしら?」
「丁度小休止を入れようとしていた所ですのでどうぞ!」
「すぐ終わるわ。少し失礼するわね」
学生の一人が汗を拭いながら自身の使っていた場所を開けると、シグルドは案内されるままに人形と対面させられる。
「さて、貴方の出来得る限りの魔導技術を見せて貰うわ。魔術でも、魔剣術でも好きなだけあの人形に打ち込みなさいな」
「わかりました!」
臨時で行われるシグルドの入学試験に先に修練に励んでいた学生達も手を止め、その行方を見守っていた。
シグルドは腰に挿した突剣を抜くと、その切っ先に自身の魔素を集中させ始める。
「では行きます!はあぁ…、火矢、水弾!氷針、風切!」
シグルドは練った魔力を突き出した突剣の切っ先から次々に人形に向けて放つと、学生達もその速さに思わず声を漏らしていた。
「おお、速いぞ」
「無詠唱魔術か…」
「ふむ…まだまだ続くみたいね」
学生達が関心を示す中、シグルドは更に魔術の披露を続けていた。
先に放った四属性の魔術を追いかける様に人形に迫ると、今度は魔力を帯びた突剣を振りかぶり更に攻撃を続ける。
「はああっ!雷撃、土槍ッ!」
突剣での斬り下ろし、斬り上げに合わせた二属性の魔術。だがシグルドの攻撃の手はまだ続く。
土槍によって突き上げられた人形に飛び蹴りを入れると、その反動で後方に飛び退き、突剣を持つ右手を下げて今度は左手を人形へ向けていた。
「激流砲!…と、爆炎ッ!」
激しい水流で人形を吹き飛ばすと、更にその吹き飛ばした先に激しい爆炎が巻き起こり、人形が爆炎の中へと呑み込まれると同時にシグルドはジュリエットの前に着地した。
「っと…、以上です!ありがとう御座いました!」
流麗な下級魔術の連続攻撃。近接攻撃を絡めた初級、中級魔術による攻撃と、それに連なる中級魔術による追撃。
シグルドの見せた魔術の連続攻撃に学生達は皆拍手を送っていた。
「…異なる属性、下級と中級の魔術だけでこれだけの連続攻撃を出来る者もここにいる学生でもそうはいないでしょう。ですが一つケチをつけるとすれば最後の追撃、僅かに狙いを外しましたわね」
ジュリエットの総評は異なる威力と属性の魔術を連続で放ったシグルドの器用さには一目置いているものの、その一方でその粗さについて指摘していた。
実際に人形を見てみると、最後に放った爆炎の痕跡は人形の中心を捉えておらず、腕の辺りに焦げた跡が残っていた。
「私ならば、こうしましょうか」
ジュリエットは傍に置いてあった長杖を手に取ると、その先端に魔力を集中させる。
「旋風、浮水連打。土槍、蛍火」
ジュリエットは右手に持った長杖から放った初手の風魔術で人形を打ち上げると、そのまま次々に魔術を放ち、人形を空中に釘付けにする。
その間に人形に接近すると、軽やかに長杖を回転させながら次の魔術を放つ準備に入っていた。
「氷針…、電縛!」
回転させる長杖の先端から無数の氷柱の弾を生み出して蛍火の魔術で火花に包まれ空中に留まる人形に放つと、ジュリエットはその氷柱の弾が命中する前に素早く接近して落ちてくる人形の腹部を長杖で突き上げる。
更に杖から直接放たれる電撃で人形を縛り上げると、後を追ってきた無数の氷柱が人形を捉えて次々と突き刺さっていた。
「さあ仕上げですわ。炎柱…、瀧水葬!」
杖で突き上げた人形を地面に叩きつけたジュリエットは間髪入れずに地面から勢いよく火柱を噴き上げさせ、再び人形を空中に吹き飛ばすと、今度はその真上に発生させた巨大な水塊と共に一直線に地面へと叩き落とす。
頑丈な木材で作られた人形はこれまで受けたダメージとその衝撃によって、バラバラの木片となっていた。
「魔術によって防護された木人の身体を使った人形があんなになるなんて…」
「さすが副学長だ…」
シグルドはジュリエットの見せた彼と同じ下級、中級魔術の流麗な連続攻撃に見惚れ、固まっていた。
勿論、魔術に於いては自身の姉クリスはおろか、兄であるセオドアにも敵わないであろうし、ジュリエットも魔導学校の副学長だ、当然敵う相手ではない事は分かっている。
だが彼なりの技術の全てをぶつけた試験の内容を一目見ただけで簡単に模倣かつ、それを更に上回るジュリエットの技術を見て、彼は立ち尽くすしか無かった。
「シグルド君と言いましたわね。今見せたのは上位の魔導戦士の為せる技術、それを独学で身につけた事は称賛されるに値する事ですわ。ですがまだあくまで抵抗をしない人形相手に対するもの、今後は実戦でも扱える様精進なさいな。入学試験は十分合格点、貴方の活躍に期待しますわ」
「は、はい!」
難なくシグルドは入学試験に合格し、周囲の学生達に祝福の拍手を浴びせられていた。
ーーー
入学試験を終えたシグルドはジュリエットに連れられて再び学長室を訪れる。
すると、どうやら先客がおり、ソファには学長のユーゼルと二人の礼服を着た人物が対面していた。
「失礼、実は今日入学試験を受けていた子がいまして、試験を終えて副学長と共に戻ってきた様です。思ったより早く終わったようで、結果はどうだったね?」
「ええ、十分な結果かと。彼には明後日より本格的に我が校の学生として学んでもらうことになりますわ」
「それはよかった。ああ、紹介しておきましょう。我が校の副学長、ジュリエット・カエサル・ローム君と、先程まで入学試験を受けていた子でシグルド・ホワイトロック君です。ホワイトロック騎士団長殿」
ジュリエットは当然知っていたと言わんばかりに来客の二人に頭を下げていたが、シグルドは同じ姓を持つ来客に驚いていた。
「ホワイトロック…、という事は団長の?」
「ああ、恐らくは兄のもう一人の息子だね。そうかそうか、初めましてシグルド君。僕はトリスタン、トリスタン・ホワイトロック、君からすれば叔父にあたる。僕は君のお父さん、アルフレッド・ホワイトロックの弟で今はブリュンヒルデの王都、ヒルデガルダの騎士団長を務めている」
「は、はい!宜しくお願いします、叔父上!父上からお話は聞いております!」
シグルドは突然の叔父との邂逅に驚いていたが、トリスタンの事は父であるアルフレッドから話は聞かされていたようで、トリスタンの差し出した手を両手で握り返し、それに応えていた。
「さて、話を戻しましょう。トリスタン殿、貴方方が我が校に訪れた目的ですが…」
「はい、以前お送りさせて頂いた手紙の通りですが、我々ヒルデガルダの擁する騎士団にも魔術を取り入れようという機運がありまして、世界に名だたるこのグリモリオ魔導学校にて騎士団で選抜された団員を留学、貴校にて魔術を学ばせて頂きたい。その件で伺わせて頂いた次第です」
「ふうむ、確かに手紙の通り。此方からもお返事を返させて頂きましたが、既に受け入れの準備は整っております。ヒルデガルダの騎士団と言えば、以前アトラシアの英雄、"流星"こと、貴方の兄君であるアルフレッド・ホワイトロック殿を擁していた騎士団だと聞いております。その騎士団に見初めて頂けた事は当に我が校にとって光栄の極み、喜んでお受け致しましょう」
ユーゼルはトリスタンの手を固く握り、彼らの留学を歓迎する。
するとトリスタンはシグルドの方を向き直り、笑顔を見せていた。
「そういう事だ、シグルド君。我々は一年限りの留学になるが、これから宜しく頼むよ」
「トリスタン殿達には留学生として一年間、同じ学び舎で学んでもらう。騎士団員や騎士団長としての肩書きはこの学び舎で学んでもらう限りは一時的に捨てて頂く事になるから、同じ学生としてシグルド君、君もまた、彼らと共に多くを学んでいきなさい」
「はい!宜しくお願いします、ユーゼル学長、叔父上!」
お互いの紹介を終えた所で学長のユーゼルはトリスタン達に学内の案内をする為に学長室を後にすると、今度はジュリエットとシグルドがソファにつき、入学に際する説明を受けていた。
「…以上が注意点でしてよ。何か質問はお有りかしら?」
「いえ、ですが一つ、別件になるんですが宜しいでしょうか?」
「構わなくてよ、何かしら?」
「はい、一つお訊ねしたいんですが、兄上と姉上がこの学校に在籍してはいないかお聞かせもらえませんか?」
「ホワイトロック姓の学生はいない筈だけれど…」
シグルドはジュリエットにセオドアとクリスの在籍を訊ねてみたが、その答えは期待していたものとは異なっていた。
かつて小さな頃に両親に聞かされていた敬愛する兄姉の行方、自身もその後を追ってこの地にやってきたが二人が此処にはいない事を聞いてシグルドは肩を落としていた。
「シグルド君、二人の名前を聞かせて貰っても宜しくて?」
「ああ、はい…。兄上はセオドア、姉上はクリスティンと言います」
「まぁ…」
ジュリエットはセオドアの名前には記憶があった。
三年前、学長に向けて送られてきた文にその名があった事を覚えていたのだ。
詳しい内容までは知らないが、手紙の主は学長と自身の知る人物からのものであり、凡そ推薦状のような内容であった事だけは覚えている。
「セオドア君だったかしら、その名前には見覚えがあってよ。詳しいことは学長の方が知っているかも知れないわね。後で話を聞いてみるといいわ」
「兄上が!?…よかった、じゃあ無事に旅を続けているんだ…」
少なくとも兄の手掛かりが少しでも掴めた事にシグルドは安堵していた。
そしてその最中、学長室の扉が開かれると、そこには先程部屋を出て行った筈のトリスタンの姿があった。
「あらトリスタン騎士団長様、如何なされましたの?」
「いや、隣に座っていた部下がどうも忘れ物をしていたらしく、我が部下ながらお恥ずかしい」
トリスタンはソファの横に立てかけられたままにしてある剣を取りながら恥ずかしそうにジュリエットに頭を下げている。
そしてシグルドの方を向くと、彼はシグルドの肩に手を置いた。
「少しだけ話を聞いていたけれど、セオドア君もクリスちゃんも今この魔導連邦にいるよ」
「ほ、本当ですか!?」
「本当だとも。数日前に僕もテラービブの街でクリスちゃんには会ってるけど、どうも旅の途中でセオドア君の方が何かに巻き込まれて今迄は別行動を取っていたらしい。まぁ今頃は二人とも合流している筈だし、もしかしたらその内二人ともここにやってくるかも知れないよ」
「良かった…、本当に良かった…。ここまで来た事が無駄じゃなかったんだ…!」
ジュリエットから得られた兄の情報に加えてトリスタンから得られたのは数日前、実に有力な直近の情報だった。
長い期間カルマン村で待ち、旅に出て兄姉の後を追いかけるつもりだったシグルドにとっては喜びもひとしおと言うものだ。
若干のすれ違いはあったとは言え、シグルドは兄姉との再会を待ち焦がれながら、魔導学校で送る生活に心を躍らせる。
全ては旅の間に更に強くなった兄姉に自身の成長を見せる為に。
姉であるクリスとニアミスをしていたホワイトロック家の末弟シグルド!
果たしてセオドアとクリスとの再会は果たせるのか!?
なーんて事を思いながら十二章のお話を執筆しております。
とりあえずは十一章についてはこれで完結としまして、次回更新からは十二章のお話となります。
三人の再会はいつになるのかは決めていませんが、それはいずれ描いていくつもりですのでお楽しみに!




