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-転生奇譚- リンカネーションストーリー  作者: 彼岸花
第十一章:再会と、脱獄と
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第百七十四話:ALL IN

 「…と、こんな所だ」

 「…ですが、それでは兄様が…」

 「うまく行かなきゃァどっちにしろ全滅だろ? それに身体張ンのは俺もセオも同じこった」

 「ま、外からチマチマやるよりはこっちの方が性に合ってるわ」

 「…まぁ僕なんかはそのチマチマやる方だけどね」

 「私なんかァやれる事自体が殆どありませんからなァ。…あとはセオドア殿の言われた通りに動いてェ、うまくいくのをォ祈るだけですなァ」

 「チャンスは一度きり、命を賭した大博打、と言った所ですわね」


 死中に活、と言うにはまだ早いが、他に案も無く、俺の身を案じるクリス以外は全員直ぐに納得してくれた。

 クリスも直ぐに納得した訳では無いが、皆が納得した事で渋々ではあるものの首を縦に振る。


 「よし。皆、そうと決まれば直ぐに準備だ!あまり時間も無いし、急いで配置についてくれ!」

 「おっしゃ、任せてな!」


 説明をしている間に鉄片混じりの竜巻は既に部屋の半分を過ぎ、刻々と迫っている。

 俺達は直ぐに部屋の端近くまで後退すると、隊列を組み、迫り来る竜巻に備え始めた。


 「ま、俺はほぼいつも通りの位置ってェワケだな」

 「しっかり防ぎなさいよ? アンタが耐えきれなきゃ全員で合挽肉にされるわよ」

 「これ以上後ろは無し、背水の陣ですわね」

 「そもそも後ろなどォ、無いようなものですがねェ」

 「私の力でどこまでやれるか…」

 「クリス、緊張するのはわかるけど、もう少し肩の力を抜いた方がいいよ。大丈夫、きっと上手くいくさ」


 配置に付いた皆はどこか心の奥で上手く行くと確信している様だ。

 正直な所を言えば俺自身、上手くいくかなんて分からないし、成功する可能性に関して言えば、それは間違いなく低いのは確かだ。

 だからと言って可能性が無い訳でも無いし、これ以上の方法は思い付かない。

 幾ら危険だろうが他に良い選択肢が無い以上は最早、覚悟を決めて実行する他無いのだ。


 「賭け金(BET)は全員の命…。全賭け(ALL IN)の大勝負だな…」

 「そういうの、嫌いじゃねェぜ? さ、やってやろうじゃねェか!」


 壁際に行った事で竜巻が広がる速度も上がり、もう既に竜巻は部屋の四分の三にまで迫ってきている。

 だが、追い詰められた者は諦めさえしなければ奇跡だって起こせる筈だ。

 そう自分に言い聞かせ、目を閉じて決行の機会を待っていた。


 「シャッ!…行くぞオルァァァッ!」


 レオが真魔光珠を握り締めて獣龍形態へと姿を変えていく。

 彼の魔素の残もそう多くは無いが、少なくとも魔獣形態よりは長持ちする筈で、彼自身も不退転の決意で迷う事なく全魔素を注ぎ込む腹積もりの様だ。


 「行くよクリス!」

 「…はいッ!」


 レオが姿を変えている内にフォルクとクリスが竜巻の風上側に飛び出して各々が剣と弓を構えている。


 「この辺りかな…!旋風射(スパイラルショット)!」

 「行きます…!旋ノ二、豪風ェッ!」


 クリスの剣から放たれた風圧と旋風を纏った矢が竜巻の根元を捉える。

 風上側への逆風だ、竜巻を止めるには至らない迄も、少しは勢いを抑えられる。


 「さァ来やがれッ!」


 獣龍形態への変身を遂げたレオが今度は仁王立ちになり、竜巻の進行を食い止める。

 当然、竜巻の中を飛び交う鉄片がレオを切り刻みに来るが、この形態のレオには強靭な鱗がある。

 生身ならばひとたまりもないが、この状態のレオ

ならば幾らかは耐えられる筈だ。


 「フォルクとクリスの攻撃でちったァ弱まってくれてりゃいいが…、うっし…行くぜッ!」


 両手を広げて竜巻を受け止めるレオの踏みしめる足が氷床へと食い込む。

 加えてクリスとフォルクも引き続き竜巻の勢いを止める為に、繰り返し風属性の攻撃を竜巻の風上側へとぶつけていた。


 「さて、と…。二人とも、タイミングをしっかり合わせなさいよ。失敗したらゴメンじゃ済まないわよ?」

 「ええ勿論。マリオンさんこそ、力加減を間違えないで下さいまし」

 「セオドア殿ォ、アンリエッタ殿ォ、準備はいいですかなァ?」

 「…ああ。マリオン、マクニール、それにアンリ。宜しく頼む」


 アンリエッタの隣で最後の詰めに関わる三人に俺は頭を下げる。


 「我々の命ィ、セオドア殿に預けましたぞォ」

 「ほら、頭上げなさい。頼まれるのは悪い気はしないけどアンタにそうされちゃうと手元が狂いそうだわ」

 「行きましょう…!」

 「…ああ!一発勝負だ、必ず決めよう!」


 四人で頷き合うと、マリオンが槌を構えてマクニールへ向かって走り出し、俺とアンリエッタがマリオンの直ぐ後ろに付いて行く。


 「…せぇーのッ!」

 「ぬゥンッ!」


 竜巻に背を向けたマクニールが両手を組んでいる所にマリオンが足を掛けると、彼は全力でその足を持ち上げて背後に放り投げる。

 更に俺とアンリはマクニールの膝、肩と足を掛けて駆け上がり、マリオンの構えた槌に追い付いてしがみ付いた。


 「よしッ!」

 「タイミングは合いましたわね。あとは…」

 「さ、後は二人に任せるわよ。行ってきなさいッ!」


 マリオンが力づくで槌を持ち上げ、俺とアンリエッタはその勢いを利用して部屋の天井付近まで辿り着く。

 そしてアンリエッタが予め魔素を溜めていた大槍の先端を俺の背に向けていた。


 「高さ良し、角度良し…。行きますわよ、セオ様」

 「ああ、手加減無しの最大規模で頼む!」

 「はい…、ご武運をッ!暴風槍(ブラストスピア)ァッ!」


 アンリエッタの大槍から放たれた爆風が俺の身体を吹き飛ばす。

 その直線上には竜巻の発生源である鉄の群衆の核、そしてその手前には鉄片の混じる風の壁だ。


 「これだけ大きい竜巻ならッ…!」


 アンリエッタの大槍からの爆風によって加速し、俺は竜巻の上側から風の向きに逆らいにくい角度で急降下する形で突っ込むも、追いついて来た鉄片が身体を引き裂いていく。


 「グッ…!体勢を…崩す訳には行かないッ!」


 鉄片が身体を裂き、突き刺さる。だが、痛みに体勢を崩せば核への最短ルートを目指す事が出来なくなる。

 ぐっと歯を食いしばって痛みに耐え、ただ真っ直ぐに竜巻の奥に霞む青白い光を目指し、暴風の中を突き進んだ。


 ーーー


 「ぐ、クッ…セオォッ!早くッ…しろォッ…!」


 暴風の外では壁際まで追い込まれたレオが必死に堪えているが、押し潰されて全員が切り刻まれるのも時間の問題だ。



 「我々もォ、覚悟を決めねばァ…なりませんなァ」

 「兄様…、早く…!」

 「クリスさん…。…セオ様はきっとやってくれますわ。私達はただセオ様の勝利を信じて待ちましょう」


 マクニールは魔砲を置き、氷の上に座り込むとそっと目を閉じて決着を待つ。

 フォルクも血の流れる右腕を抑えて壁に持たれかかりその時を待っていた。

 マリオンも腰に手を当て、肩に槌斧を担いだまま胸を張って堂々とした出で立ちで迫る竜巻を睨んでおり、クリスとアンリエッタはお互いの手を取って、愛するセオドアが魔石を破壊して帰ってくる事を信じて待っている。


 ーーー


 暴風の奥に見える青白い光が強くなっていく。

 思っていたよりも竜巻の風の壁は分厚く、既にかなりの血を流していた俺は意識を保つのがやっとだった。

 幸いながら傷を受け過ぎた事で痛みは既に感じなくなっており、どうにか勢いも殺されずに済んでいる。


 「…意識は…あるな。…でも、もう身体中の感覚が無い…。…剣は…まだ握ってる…」


 薄らいでいく意識にしがみ付き、ただじっと騎士剣を握った右手を離さない様に、歯を食いしばる。

 もうダメだと言う気持ちが頭を過っても奥歯でそれを嚙み潰し、ただひたすらに耐え続けた。

 そして次の瞬間、意識も、痛みまでもがはっきりと戻ってくる。


 「……抜けたッ!」


 暴風の壁を突き抜け、失いそうになった色んなものが返ってくると、もう目の前には青白い光を放つ魔石が目の前にあり、剣の切っ先もまたそれに向けられている。

 俺の接近に魔石も気付き、竜巻の中の鉄片を戻そうとするが、最早それも能わない。


 「…これでッ、…終わりだァァァァァッ!」


 叫びながら最後に残っていた僅かな力で剣を握る。

 そしてその剣の切っ先が遂に魔石に入っていた大きな亀裂を捉えた。

 一瞬の時間がゆっくりと流れていき、亀裂に差し込んだ騎士剣がじわり、じわりと魔石を貫いていく。

 本来はごく僅かな一瞬の出来事だが、その一点だけに全神経を集中しているせいだろう、魔石を貫いた騎士剣が亀裂を通り抜け、真っ二つに割るその瞬間までスローモーションで進む時間は続いていた。


 「…やった…!…ぐえっ…!」


 魔石を貫き勝利を確信した瞬間、時間の流れが元に戻る。

 直後に俺は地面に叩きつけられ、数度地面を跳ねた後、仰向けに倒れていた。

 天井を仰ぎ、辺りを見回すといつの間にか周囲を取り囲む暴風の壁も消えており、視界も暗くなっていき、ぼやける視界の中に仲間達の顔が飛び込んでくる。


 「ああ、勝ったのか」


 声にならない言葉を口から漏らすように唇を動かした、その感覚を最後に俺の意識は途絶えてしまった。


 ーーー


 「グッ…グアアァッ…オオオ…、…お…?…グオッ!?」


 背中も遂に壁に押し付けられ、潰されまいとレオは耐えていた。

 だが突然彼を押し潰そうとしていた風の壁が消え、前へ前へとかけていた力で勢い余ったレオはそのままうつ伏せに倒れてしまう。


 「風が…止んだ…。竜巻が…止まった…?」


 マリオンが風が止まったのに気付くと、時を同じくして、竜巻の中を飛び交っていた鉄片もまた、空中で静止していた。


 「みんな!あれを見て!」


 フォルクが指を差した先、そこにはセオドアの騎士剣に割られた魔石が力無く地面に落ち、粉々に砕け散ってしまう。

 それと同時に空中で静止していた鉄片が辺り一帯に雨の様降り注ぐ。


 「ふふ…、どうやらァ、賭けは我々の勝ちィ、の、様ですなァ」


 マクニールはセオドアが魔石を割り、勝利をもぎ取った事に安堵すると、薄く微笑んで小さくため息をついている。

 そしてクリスとアンリエッタの二人を除いた三人もそれに続いてへたり込んでしまっていた。


 「…皆さん何をしていますの!セオ様が…!」

 「…兄様、兄様ァッ!」


 アンリエッタの声で四人は目を覚ます。

 粉々になった魔石の向こう、そこには全身に鉄片が刺さり、魔石を割った後にそのまま力尽きたセオドアが倒れていた。

 一足早くセオドアの元に駆け付けたクリスはセオドアを抱き起こし、涙を流しながら呼びかけ続けている。


 「…参ったぜ、流石に出血が多い。ちまちま瓦礫を片付けてたらセオが持たねェぞ」

 「だったら早く瓦礫の片付けを進めなさい!アタシとアンタぐらいしかまともに運べないのはわかってるでしょう?」

 「…わァッてる…よッ!…ダメだな、一気に吹っ飛ばせねェモンかと思ってたが殆ど固まっちまってるな…」


 レオが獣龍形態のまま氷塊の瓦礫を殴ってみるも、僅かに破片が飛んだ程度であり、マリオンも動かせそうな氷塊を一つ一つ動かしてはいるが、大きな瓦礫は既に固まってしまっており、彼女の力を以ってしてもなかなか崩せずにいた。


 「…これじゃ治療どころか止血もできないな。…

マクニールの荷物に霊薬なんかを集めたのが仇になったね」

 「ええェ、霊薬の他にも色々と用意はしていたのですがねェ。キャンプに戻ればァ幾らかの予備はあるんですがァ…」


 フォルクとマクニールはセオドアの看護にあたっているものの、マクニールの荷物に入っていた治療薬等は先程の戦闘によって鞄ごと全て台無しにされていた為に治療はおろか、止血すらも侭ならない状態だ。


 「…ダメですわね。出られそうな場所はありませんわ。外に面した穴も断崖絶壁、とても登っていける様なものではありませんわ」

 「…たださっきの竜巻で吹き飛ばされたのか、兄様のものと思われる荷物が見つかりました」


 クリスとアンリエッタは他の脱出経路を探しに行っていたが、結局見つかる事は無かった様だ。

 その代わりに部屋の隅に落ちていたセオドアの鞄を見つけて持って帰ってきていた。


 「…そういえばセオって一人でこの洞窟を抜けようとしてたんだよね?」

 「ええ、その筈ですわ。あの手紙にも私達が来ないように、そうありましたから」

 「…だったら」


 フォルクはアンリエッタに三年前に届いた手紙の内容を確認するとすぐにセオドアの荷物を広げ、それらを一つ一つ調べていく。

 そしてその中にある小さな袋を手に取ると、中に入っていた小さな黒い塊を手の中に広げ、その匂いを嗅いでいた。


 「…それは…?」

 「…うん、薬草の匂いがするね。丸薬にした傷薬といった所だと思う。一人でこんな洞窟を抜けるんなら傷薬無しじゃ無謀もいい所だからね。セオの性格ならこのくらいは用意してる筈だよ」


 フォルクは手の中にある丸薬をセオドアの口に入れ、噛み潰させた上で服用させると、すぐに薬の効果が現れ、傷から流れる血が止まり始めた。


 「…とりあえず止血はできたけど」

 「下がった体温をどうにかしませんとォ。このままでは凍死しかねませんなァ」

 「防寒着もボロボロですわね…、焚き火でも起こせればいいのでしょうけれど」


 周囲に燃やせる様な焚き木などは当然無く、燃やせる荷物もそうは無い。

 

 「…あれ、使えませんか?」


 クリスが指差したのは氷塊巨人(フロストギガント)の死骸だった。

 雪に埋もれてはいるが、竜巻に巻き込まれていながらもその強靭な肉体はそれ程傷ついてはおらず、その体毛も十分に残っている。


 「…成る程、確かに使えそうだね。よし、クリスは火を起こす準備をしててくれるかい? 僕があの毛を集めてくるよ」

 「わかりました、お願いします、フォルクさん」


 フォルクは短剣を口に咥え、氷塊巨人の死骸によじ登る。

 彼が毛を刈り取り、マクニールが下で受け取るとすぐにクリスの元に届けられ、彼女は剣から起こした火で氷塊巨人の体毛に火を付けていた。


 「…これで一旦は寒さも凌げますわね」

 「そうですなァ。あとはァ、セオドア殿の体力とォ、瓦礫の撤去作業にあたっているあの二人次第ィ、といった所ですかァ」

 「明日には出られるとよいのですが…」


 通路を塞ぐ大きな瓦礫をどかそうとしている二人を見ながら三人は焚き火の前に座り込んでいた。


 さしもの二人でも瓦礫の撤去作業は思うように進んでおらず、脱出は難航するばかり。

 日も沈み、日中は差し込んだ光が反射して明るかった洞窟も焚き火の周囲以外は既に闇に包まれていた。

 途中でレオの変身も解けて魔素切れで倒れてしまい、マリオンもそのタイミングで彼を運んで戻ってくる。

 フォルクが毛を刈り取るついでに剥ぎ取った氷塊巨人の毛皮を全員が身に纏い、寒さに耐えながら一夜を明かす事になった。


 翌朝、クリス達が目を覚ますと既にマリオンがまた一人で瓦礫の撤去を再開していた。

 細かい瓦礫は既に取り除かれていたが、一つの大きな氷塊が通路を完全に塞いでおり、これが一番の障害となっていた様だ。


 「ふんッ…!…ダメね、流石に重すぎるわ。叩いても壊れやしないし…、全員でやっても動く気配がないわね…」

 「ふあ…、な? やっぱ動かねェだろ? …俺も昨日やってみたけどよ、どうにもなんねェ」


 鬣を掻きながらレオが起きてくると、目の前の瓦礫にため息をついているマリオンに話しかける。


 「二人でやってみるのは?」

 「多分無理ね。昨日はもう暗くなってわからなかったけど、粗方小さい瓦礫を片付けた後にやってたと思うわ」

 「ああ、俺は夜目が利くから見えてたが、あの状態の俺とマリオンの二人がかりでもビクともしやしねェ。こうなったら崖を登る方が幾らか現実的だ。…っても…上でねずみ返しになってんだっけな」

 

 完全に閉じ込められてから一日が過ぎた。

 もう数日程度であれば氷塊巨人の死骸を食らって飢えを凌げるが、一番の問題は寒さだ。

 外気が流れ込んでくる為に洞窟の中は非常に寒く、既に氷塊巨人の死骸も凍り付いてしまっている。

 昨夜刈り取った体毛も余裕は無く、耐えれても良くて一日か二日と言った状態だ。


 「…アレを砕けりゃいいんだけどね」

 「硬過ぎて欠けやしねェんだよな」


 力自慢の二人ですら、通路を塞ぐ氷塊に対し、眉間に皺を寄せる程だ。


 「兄様だったらもしかしたらいい考えを思い付くかも知れませんけれど…」

 「当の本人は意識不明の重体だしね、どうしたモンかしら…」

 「いっそ、俺が全員抱えて飛び降りて脱出してから仕切り直すってのはどうだ? …少なくとも、ここで凍えるのを待つよりゃいい」

 「ですが、それでは兄様が持つかどうか…」


 無理矢理脱出をするかどうか、三人が悩む中、突如空間の一部が歪む。

 歪んだ空間は渦を巻くと、少しずつ中央からその奥が映り、そこからクローディアが疲れた顔を覗かせていた。


 「ふぅ…魔素が切れてたから繋ぐのが遅くなったけど、どうにか繋がったみたいね…」

 「クローディアさん!」


 クローディアは魔素を大量に消費する空間と空間を繋ぐ魔術でクリス達との接触を図っていた。


 「距離は短いからそこまで魔素の消費は大きくは無いけど、自分の足で行った訳じゃないから凡その位置しか分からなくてね。四、五回失敗して最後の一回で漸く繋がったわ。随分とぼろぼろになってるみたいだけど…、とにかく、あまり長くは維持できないから急いで頂戴」


 クローディアは自身の魔素を限界まで使い、どうにかこの広間と空間をつなげる事に成功したようで、その表情には疲れが見えていた。


 「…助かったわ!みんな、起きなさい!脱出するわよ!」

 「…本当かい?」

 「ああ、急げ!」

 「…むゥ、ならばセオドア殿はァ私が運びましょォ。アンリエッタ殿はァレオさん、お願い致しますぞォ。彼女、昨夜ずっとセオドア殿の看護をクリスティン殿と一緒にしておりましたからァ」

 「脱出したら直ぐに兄様の治療をします!急ぎましょう!」


 五人は重体のセオドアと看護で疲れ眠っているアンリエッタを抱えると、クローディアが繋いだ雪原へと続く空間の歪みの中へと飛び込んでいった。

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