第百七十二話:変幻自在の鉄の鎧
「…ぐっ…!」
「兄様ッ!」
氷鎧巨人の核である魔石に騎士剣を突き込んだものの、寸前で鎧の破片によって受け止められた俺はそのまま奴の籠手に剣ごと払い落されてしまった。
超越の加護によって全身を強化していたことで払い落とされ地面に叩き付けられる寸前に受身を取る事が出来、何とか大きな怪我を負うことも無く離脱が出来ていた。
「…あと一歩ってトコだったな。無茶やりやがって」
「…ああ、もう少し…、流石に一人で突っ込んでも駄目だな」
戻ってきたレオが後ろから頭を鷲掴みにして髪をかき乱してくると、俺は少し苦笑いしながらそう返す。
手応えはあったが、まだ足りない。そう思っていた瞬間だった。
「見てセオ!」
フォルクが伸ばした指は氷鎧巨人を成す魔石に向いていた。
それを注視すると、光を放つ魔石から淡い光を放つ小さな破片が落ち、地面に落ちると同時に光を失う。
鎧の破片に阻まれ、若干逸らされた事で魔石を砕くには至らなかったものの、その刃は僅かに届いていた。
僅かに感じた手応えはまさにそれを示していたのだろう。
「セオ様、やはり届いていましたわ!」
「じゃあ今度は俺達が協力すりゃあ間違い無く刺せる筈だな!」
「我々もォ、いますぞォ」
「露払いってのは癪だけど、あんなデカブツ、倒せたらスカッとしそうね!」
「今こそ修行の成果を出す時…!兄様、私達が協力します!」
「ああ、今度こそ終わらせよう!」
フォルクを除き、ほぼ全員が多少なり怪我を負っているが、あと一押しで倒せるという希望が俺達を奮わせる。
「皆、勘違いするな。皆が俺に協力するんじゃない。皆でアイツを倒すんだ!」
「「オオッ!」」
鬨の声を上げると同時に氷鎧巨人が距離を詰め、その巨大な右足で俺達に蹴りかかってくる。
「氷の鎧が無いのであれば…!」
氷鎧巨人の蹴りに対し、アンリエッタが大楯を構えて先頭に躍り出る。
「私の盾は全てを弾き返しますわ!その威力、ご自分で味わいなさいなッ!」
氷鎧巨人の打撃は強力無比。魔人の加護を持つマリオンでさえ、まともに受ければ負傷する程だ。
そしてアンリエッタの盾はその力を発揮すれば、受けた衝撃をそのまま相手に弾き返す。
氷鎧巨人の鎧は所詮ただの金属の鎧、強力な打撃には脆く、アンリエッタの盾に蹴りを防がれると、その打撃はその足にそっくりそのまま返され、衝撃に耐えられずに自壊し、粉々に砕け散る。
「アンリ、上だッ!」
右足を破壊された氷鎧巨人はそのまま意に介する事無くアンリエッタの真上へ左足を持ち上げる。
人の形を成しているが、あくまで本体はあの核である魔石。最早腕や足は浮遊している破片と同じく核を守る為の鎧でしか無く、右足を失った事で体勢を崩すような事は無いらしい。
「右足を無くしても構わないって事は左足も無くして構わないって事よね? 悪いけどそっちの足も頂くわッ!」
氷鎧巨人は巨大な左足でアンリエッタを踏み潰そうとするが、銀の手斧が横から飛んでくるとその刃が具足の踝に突き刺さり、衝撃がその軌道を逸らす。
軌道を逸らされた左足が、盾を構えたアンリエッタの真横に轟音を響かせて叩き付けられると、その瞬間を狙ってマリオンが槌を構えて飛び込んでおり、アンリエッタもまたその動きを察して盾を収めてしゃがみ込んでいた。
「…貰ったッ!」
マリオンがしゃがみ込んだアンリエッタを飛び越えると、構えた槌を先程踝に突き刺した銀の手斧目掛けて振り抜く。
銀の手斧が食い込んだ箇所から二重の衝撃が具足に伝わると、一気に全体へ亀裂が広がり、右足に続いて左足をも粉々に砕いた。
「よしッ、両足とも壊れた!後は…」
両足を破壊されてもなお氷鎧巨人は止まらない。
今度は氷鎧巨人の左手が俺達を纏めて吹き飛ばそうと拳を作って迫ってきている。
「…させるかよッ!ウオオォォッ!」
今度はレオが前に出ると、真魔光珠の力を解放し、魔獣型に形態を変化させ、氷鎧巨人の左拳を受け止める。
「今の内だ、マクニール、合わせて!」
「承りましたァ…!」
レオが左拳を受け止めている間にフォルクが弓に矢を番える。
その狙いは氷鎧巨人の右腕を向いていた。
「いくら強固な鎧でも、作られたものなら必ず弱いところはあるものさ…!衝撃射・六連星ッ!」
フォルクの凄弓から立て続けに六本の矢が放たれる。
その矢は籠手の留め具を正確に射止め、伝わった衝撃が留め具を破壊すると同時に右腕を怯ませていた。
「怯んだ今ならァ…!この魔砲の威力ゥ、とォくと御覧じろォッ…!」
怯んだ右腕に向けてマクニールの構えていた魔砲が火を吹くと、赤い閃光がその右腕を捉えた。
留め具が砕けた籠手には隙間が生じており、赤い閃光を伴った砲弾がその中に入り込むと、爆発に次ぐ爆発が籠手全体を呑み込み、周囲にその破片を散らせていた。
「ヌゥゥオリャアアァァッ!」
左の籠手が作った拳を受け止めたレオが全身の筋肉を膨張させ、力任せに身体を後ろに反らしながら地面に叩きつけると、氷鎧巨人の拳が万年氷床の地面に埋もれてしまっていた。
あとはこの左腕を破壊すれば氷鎧巨人の打撃能力を失わせる事が出来る。
「クリス、話した通りに頼む!」
「わかりました兄様!」
レオが氷鎧巨人の左拳を止めた瞬間、俺はクリスに巨人の拳を砕く算段を伝えていた。
幾ら超越の加護があるとはいえ、俺自身、マリオン程の打撃力は無い。
ただ俺には工夫を凝らす知識とその能力、仲間の力がある。
「焔ノ一、烈火ッ!」
クリスが腰から抜いた銀の直剣から赤い炎が迸り、埋もれた籠手を呑み込む。
金属の籠手は高温の炎によって熱されると、真っ赤な光を宿し始め、万年氷床の氷を溶かして白い蒸気を上げだしていた。
「金属の塊…、それが繋ぎ合わされただけならッ!」
超越の加護によって強化されているのは身体能力や各部の感覚だけではない。
全身を血液の様に巡る魔素も活性化し、それを伝える能力も強化している。
剣に纏わせた魔力が冷気に変わり、刀身から放つ冷気が霜を生むと、俺はその剣を握る腕を目一杯に引き絞っていた。
万年氷床の地面を溶かし、漸く地面から引き抜かれた籠手に向け、俺は全身全霊の突きを打ち込んだ。
「喰らえッ!属性斬撃…・氷晶茨棘ッ!」
突き出した騎士剣から解放された魔力が刀身を覆う霜を氷の結晶へと昇華させる。
氷の結晶はまるで成長する茨の様に伸び出すと金属の籠手をすり抜けていくかの様に貫き、そこから枝分かれした氷の棘が次々に籠手を突き刺し貫通していった。
瞬く間に広がった氷の茨の太い茎は金属の籠手を呑み込むと、完全に氷の中へと閉じ込めてしまう。
「急熱急冷、硬い金属だって急激に熱され、急激に冷やされれば脆くなる。ただの鉄の寄せ集めだったらこれでッ!属性斬・石破撃ッ!」
氷の茨から剣を引き抜き、即座に剣に纏わせた魔力の属性を変える。
軽い刀身に土属性の魔力を纏わせることで重く、硬く、そして斬れ味を鈍くさせると、俺は高く跳躍して空中で身体を翻し、その鈍重な刃を氷に閉ざされた氷鎧巨人の籠手へ勢いよく叩きつけた。
剣が叩き付けられた瞬間、氷の茨の茎から棘の先に至るまで、全体に亀裂が走る。
亀裂は中にある籠手にまで波及すると、氷と同時に完全に砕け散ってしまっていた。
「残ってるのは兜と本体だけね…!」
「ああ、攻撃力激減だ。ひとまずは誰かが一撃で倒される心配は少なくなった筈!」
「でも一つだけ懸念材料もありますわね…」
「…そうだね」
アンリエッタの話す懸念材料、それは防御能力の上昇だ。
鎧から籠手、具足までを破壊したまではいいが、核となる魔石はその破片までをも操る。
その破片が生み出すくず鉄の盾はレオの力も弾き、俺の会心の突きをも逸らした。
砕け散った破片が宙を舞うと、魔石の周りへ集まり元々周囲を揺蕩う破片と合流する。
兜がそれに加わり魔石に覆い被さると、まるで巣を守る蜂の群れの様だ。
「こうなると"氷鎧巨人"ってェより"鉄の群衆"ってとこだな」
「ああ、一撃の重さは多分無くなった筈だろうけど、まだ魔術もあるし油断はできないぞ…!」
「ならばァクリスティン殿ォ、これを使って頂きたいィ。貴女ならばァ、私が使うよりはァずっと効果的でしょォ」
マクニールが荷物から取り出したのは魔術の発動式が描かれた魔導書だ。
描かれている式通りの効果しかもたらすことは無いが、使用者の魔術の能力に応じて発動までにかかる時間が変わってくる為、使う人物については一番の適任者はクリスだ。
「なるほど、一番危険な魔術に対する打開策ですね」
「ええェ、こんなこともあろうかとォ用意しておりましたァ。さァクリスティン殿ォ、頼みましたぞォ」
「はい、では早速」
クリスが魔導書に手を翳し、魔素を流し込むと、魔導書に描かれた発動術式が光を帯びる。
「…!オイ、奴の魔術が来るッ!急げッ!」
クリスが魔導書の魔術を発動しようとするのを見てからか、レオが指差した鉄の群衆の中心にある兜の中から怪しい光が放たれていた。
その瞬間、澄んだ空気の中に雪が現れ、次第に周囲の空気を冷やしていく。
「"対魔の衣"」
クリスが魔導書の魔術を発動すると同時に俺達全員が魔力の衣に包まれた。
その瞬間、部屋全体に及ぶ猛吹雪が俺達に襲いかかる。
「くッ…!"大吹雪"か…!」
「しかもかなりの威力…!」
荒れ狂う凄まじい吹雪が俺達を一呑みにした。
視界は雪で覆われ真っ白になり、強烈な冷気が体温と体力を奪っていく。
「みんな耐えろよッ…!」
そんなレオの声も吹雪の中に消え、暫くすると強烈な吹雪は去り、視界が戻ってくる。
「ハァ…ハァ…、みんな、無事かっ!?」
「ええ…!直前の防御魔術のお陰ですわ…!」
「私は、平気です…!」
「こんな隠し玉があるなんてねぇ…」
「…中身はァ精霊級の魔物ォ…、いやはややはりィ魔術の威力もォ、相当なものですなァ…」
振り向いて全員の安否を確認すると、吹雪によって雪に塗れており、身体の雪を払い落としていた。
しかし、一人だけマリオンの顔が見えない。
「マリオンはッ!?」
「──!…──!!」
マリオンを探す為に視線を左右に動かすが、その姿は見えない。だが、俺達のすぐ後ろで声にならない声を上げながら、雪だるまが蠢いていた。
「──ぷはっ…!…アタシも無事よ!」
雪だるまが弾けマリオンの上半身が中から飛び出して来る。
魔術に対する耐性の低いマリオンだが、身体を冷やし震えてはいるものの、何とか無事だった様だ。
「ふうううう…、あ…あの魔導書がなかったら…、ま、また氷漬けになってたと、ところだわ…」
マリオンは褐色の顔を青褪めさせ、身体を震わせながら弱々しくそう零す。
魔術に対する耐性を上げていながら、彼女はこれだけのダメージを負っている。これ以上好きにさせれば真っ先に倒れてしまうのは彼女だろう。
「早い所仕留めないと…!」
「…見ろ!次の魔術が来るぞッ!」
「させないよッ!」
兜の中からまた怪しい光を放ち魔術を発動させようとしているのにレオが気付く。
同時にそれに気付いていたフォルクが既に弓を構えており光の矢を放つと、兜の周りを揺蕩う鎧の破片がそれを防ぐ。
すると魔術を発動させようとする兜から光が失われ、どうにか阻止に成功した様だ。
「…危ない危ない」
「油断も隙もあったモンじゃねェな…」
「むゥ、また光がァ。今のとはァ少し様子が違う様ですがァ…」
「皆さん、注意して下さい!」
兜から覗く光が鋭く光ると取り巻く破片の半数程が本体から離れ、もう一つの群れを作る。
「成る程、そういうのもあるのか…!」
「各自で回避、あるいは防御を!私の盾一つでは防ぎ切れませんわ!」
破片の群れが七つに分かれ、それぞれが帯の形となり向かってくる。
それに加えて本体から最初に見せた氷柱の追尾弾が俺達全員に放たれていた。
「物理と魔術の同時攻撃…!器用な奴だ、なっ…!」
「チッ、小賢しいってんだよ…!」
「わっ!…ととっ、危っ…ないっ…なぁっ…!うーん、これじゃしっかり狙ってる暇もないよっ!」
「くっ…これでは動けませんわ…!」
「躱すのでっ…精一杯、ですね…!」
「むゥ…、また魔術の発動準備…ですかなァ…!」
「攻撃で突破しろって事ね…!…上等じゃないっ!」
再び強力な魔術を発動しようとする魔石に気付いたマクニールが攻撃に耐えながら漏らすのを聞いたマリオンが氷柱だけを躱しながら、突っ込んでいく。
「俺達もマリオンの援護だ…!行くぞッ!」
「ンなモン屁でも無ェッ…!」
マリオンに続いて俺達も攻撃を躱しながら、あるいは耐えながら、彼女の援護に乗り出した。とは言え、被弾覚悟の吶喊故に、防御も回避も疎かになった事で、蜂の群れの様な鉄の破片が俺達を容赦なく切り裂いていく。
それでも歩を進め、前へ前へと鉄の破片の雨霰の中を突き進んでいった。
「ぐっ…く…!早く止めないとっ…!」
「…耐えるのは私の領分、マリオンさん私が血路を切り開きますわっ!」
盾を構えながら、アンリエッタが確実な足取りで群がる鉄の破片と氷柱の弾丸の雨の中を突き進む。
彼女の鎧と盾は鉄の破片を弾き返しているが、流石に魔術で生み出された氷柱に対してはそうはいかない。
「なんの…、これしき…!」
直撃した氷柱が突き刺さった様にアンリエッタの鎧を凍て付かせる。
実際に突き刺さっている訳では無いが、氷柱が鎧越しに内部にある身体を凍て付かせている筈で、細身のアンリエッタにとっては耐えがたい痛みとなって襲っており、彼女の足は徐々に鈍っていく。
「アンリ、もういいわ!このままじゃアンタが氷漬けになる!」
「わかりましたわ…。ですが、せめて一撃だけでも…!」
「…完全に射程外よ!」
アンリは氷柱に打たれながら構えた盾を横に、大槍を前に突き出した。
彼女もこれ以上は限界だと見極めていたのか、既に槍に魔素を溜めており、槍に埋め込まれた魔石が燦燦と緑の光を湛えている。
大槍から放つ爆風の射程からは完全に離れている、そんな事は彼女自身が誰よりも一番理解していた。
それでも彼女なりの意地がそれを実行に移していた。
「私にも女の意地というものがありますわッ!暴風槍ッ!」
アンリエッタに襲い来る鉄片の帯に向け、大槍から放たれた爆風が炸裂する。
強烈な爆風に吹き飛ばされた鉄片は四散すると、万年氷床の壁や地面、天井にまで弾き飛ばされ、次々に突き刺さっていた。
だがそれでも全体の一部、まだまだ大量に残る鉄の破片がひと塊りに集まり鉄の拳を形為すと、爆風の反動で体勢を崩していたアンリエッタの腹に深々と突き刺さる。
「かっ…はっ…!」
アンリエッタは鎧を突き抜ける強烈な一撃に身体をくの字に曲げ、膝から崩れるも、槍を地面に突き立てて倒れてしまうのを拒否する。
「大丈夫…、私はまだまだ…この程度では倒れませんわ…!」
膝を笑わせ、身体をふらつかせながら、アンリエッタは立ち上がろうとする。しかし、そんな彼女の肩に手を置いてレオが前に出る。
「無理すんな、後は俺が代わってやらァ。アンリは少し休んでなッ!」
レオはそう言ってまた真魔光珠に手をかけ、魔獣形態に姿を変えると、腕を一薙ぎして群がる鉄の破片を一掃する。
「あの様子じゃあさっきより強力な魔術を構えてンな…。急ぐぜマリオン、しっかりついてこいよ!」
「ええ!」
鉄片の群れを掻き分けて魔獣形態のレオが突き進む。
俺達に襲いかかってきていた破片達も、最低限の数を残して突っ込んで来るレオを抑えに入っていた。
だがそれでもレオは止まらない。皮膚を切り刻もうとも、先程アンリエッタをダウンさせた拳になり殴り付けようとも、レオは一歩も怯む事無くマリオンの行く道を切り開いて行く。
「オオォォッ!」
「…いいわ、もう少し!」
俺達に襲いかかっていた鉄片達も合流し、突っ込んで来るレオに対する抵抗も激しくなる。
それでもなお、レオは一歩ずつ足を踏みしめ、腕を振り回しながら強引に歩を進めていた。
しかし、突如として鉄片達はレオへの抵抗をやめて魔石の元へと集まっていく。
「…あァ!?」
「擬似的に鉄人形を…!」
集まった鉄片達が人の形となり二人の前に立ちはだかる。
氷鎧巨人程大きくはないが、魔獣形態のレオよりも一回りは大きい。
「邪魔だ、どきやがれッ!」
レオが魔石が作り出した鉄人形に殴りかかる。
しかし、先程の鉄片とは違い、密集した鉄の塊である鉄人形は硬く、また重く、レオの一撃を受け止めてしまう。
そして、その反撃もまた、重い一撃となっていた。
「ぐおッ!?」
それまで鉄片に切られても、集まって作られた拳になり殴られても怯まなかったレオが鉄人形の拳に顔を殴られると、顎を上げ、身体を反らして大きく怯む。
頑丈さだけでは無く、そのパワーもまた凶悪そのものだ。
「チッ…!…けどよ、力比べだったら…望むところじゃねェかッ!」
立ち直ったレオが鉄人形に組付き、取っ組み合いの力比べに持ち込む。
がっちりと組み合い、互角の力比べだ。レオは筋肉を膨張させ、その腕を震わせながら、鉄人形と張り合っている。
「…今の内ッ!」
レオとの力比べを繰り広げる鉄人形の虚をついて、陰にいたマリオンがその傍をすり抜け、魔術の発動を構えている本体へ一直線に駆け出していた。
魔石を守る鉄片は大半がレオと力比べをしている鉄人形と俺達を抑えるのに割いており、本体の守りに備えているのはごく僅かだ。
「なんならこのまま倒してしまってもいいのよねッ!」
魔獣形態のレオの巨体の陰に隠れていたマリオンに気付き、魔石はマリオンの前に鉄片を集中させようとするが、レオを抑えていた鉄片の群れはまだ彼女の背後であり、とても防御は間に合わない。
「終わりよッ!」
彼女は槌を振り上げたまま、無防備なままの魔石へと迫っていた。




