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-転生奇譚- リンカネーションストーリー  作者: 彼岸花
第十一章:再会と、脱獄と
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第百六十二話:氷獄

 双月兎の討伐から三日が経ち、俺は設置していたキャンプの後片付けを進めていた。

 既に骨は繋がり、打撲の痛みさえ無く、肩を回すのも剣を振るうにも全く問題は無い。

 戦闘の翌日は骨折と同時に負った打撲傷が大きく腫れ酷く痛んだものだが、加護の力と薬の効果のおかげで既に完治している。我ながら驚くべき回復力だ。


 「ふう、こんなもんかな…、さて…」


 荷物を片付け終えて、見上げた先には洞窟の入り口がある。

 外の岩壁とは異なり、内部の壁面は分厚い氷で覆われ、地面は吹き込んだ地吹雪によって雪で覆われている。とりあえずは歩くのには不自由は無さそうだ。


 「行くか…、皆が待ってる!」


 洞窟の中へと続く積雪に足跡を刻みながら、洞窟の奥へと進む。

 洞窟と言う事もあり、内部は暗いものと思っていたが、入り口から差し込む光が内部を覆う美しい水晶の様な万年氷に反射して照らしており、思いの外明るい。

 そしてある程度進むと明らかに踏み固められた雪の道に出る。

 雪の上に残る足跡には大きな人の様な足跡と竜鱗種のもの、そして鳥種のものと思しき足跡がある。

 それ以外にもいくつかの魔物の痕跡があり、この先にそれらが潜んでいる事は明白だ。

 そして上を向くと早速その魔物が此方に気付かずに天井に張り付いているのを確認した。


 「ドルマニア山で見た鬼蜘蛛(オーガスパイダー)に似てるな…、向こうと同じで自分から襲って来なければいいんだけど…」


 天井の王虫種の魔物に気を配りながら踏み固められた雪を進むが、どうやら鬼蜘蛛の亜種は襲ってくる気配は無いらしい。

 更に進むと小型の蜥蜴型の竜鱗種がたむろしており、氷の地面が剥き出しになった空間が広がっている。

 いくつか卵があるあたり、ここは彼らの巣なのだろう。

 風の流れも途絶えている事からどうやらこの先は行き止まりらしく、彼らの横を通り過ぎる必要も無さそうだ。

 奥にはここで果てた冒険者達の荷物と思しきものや白骨となった骸が転がっているが、今は宝探しをしている場合では無い。

 俺は彼らに気付かれない様にその場を去り、別の経路へと進む。


 「足音…、一旦隠れるか…」


 分厚い氷塊の陰に隠れ、近づいてくる地響きの様な足音をやり過ごす。

 足音の主は大型の亜人種で分厚く歪な氷塊の鎧を身に纏っていた。恐らくこの魔物がこの氷獄の"看守"、氷塊巨人(フロストギガント)で間違い無いだろう。


 「見つかれば仲間を呼んで追ってくるんだったか…、やり過ごすか…気付かれる前に仕留めるかだな…」


 正直な所を言えば後者の手段を取るのは好ましくは無い。

 一撃で致命傷となり得る部位の大半は分厚い氷の鎧に覆われており、また大型の亜人種故に耐久力も他の魔物と一線を画すものと容易に想像できる。

 加えて仕留めたとしても死体が見つかれば警戒されるだろうし、この巨体では処理に時間もかかる。

 見つかったとしても基本は逃げるのが最善だ。どれ程の数がいるのかも解らないし、手早く処理出来なければ次から次に仲間を呼ばれてしまい、キリが無くなる。

 

 「まずは隠れて様子を見る事からだな…、なるべく他の魔物との戦闘も避けた方が良さそうだ」


 しばらく同じ場所に留まり、氷塊巨人達の様子を伺っていると、色々な事に気付く。

 まず氷塊巨人達は一体から三体程のグループを作って一定の周期で巡回を続けており、必ず同じ方向に向かっている。つまり、巡回するルートは環状となっている可能性が高い。

 また、単体で巡回する氷塊巨人の中には他の魔物を連れている事もあり、死角をカバーしている様だ。

 中でも飛行する王虫種で大型の白い蠅の様な魔物には途中気付かれそうになり肝を冷やした。

 最初に見つけた単体の氷塊巨人ならまだいいが、他の魔物を連れた個体には近づかない方が賢明らしい。


 そんな事を考えていると二体の氷塊巨人が近づいて来る。御多分に漏れず、他の魔物は連れてはいない様だ。

 その二体は目の前の三叉路で二手に別れると、その内の一体が此方へと向かってきている。


 「この先は行き止まりと氷原方向の出口…、このままここに居れば帰りに見つかるな…」

 

 氷塊巨人達の巡回の間隔はそれ程長くもない。

 此方にもやってくると言うならば、発見されてしまうのも時間の問題だろう。

 此方にやってくる氷塊巨人を仕留める手も無くはないが、いつまでもこの場所に留まっても前には進まないし、ここで手傷を負えば大きなタイムロスに繋がる上に、洞窟の突破そのものの可否にも影響する。

 逃げ回るにしても発覚する前に洞窟内の地理を先に把握しておけば幾分逃げ易くもなる、そう考えた俺は此方に向かってくる氷塊巨人が氷塊の横を通り過ぎる瞬間、入れ替わる様に氷塊の陰から飛び出してもう一方に別れた氷塊巨人を尾行し始めた。


 付かず離れずを常に意識して周囲の他の魔物の存在にも注意しながら尾行していると、少しばかり開けた空間に出る。

 そこには多数の氷塊巨人がたむろしており、寝そべっていたり、食事を摂っていたり、仲間達と談笑に興じている姿が見える。

 ここはどうやら巡回をしている氷塊巨人達の詰所と言った所で、俺が尾行していた氷塊巨人も座り込んで氷の壁にもたれかかると糸の切れた人形のように眠り込んでしまっていた。


 「数が多いな…。強行突破はやめた方が良さそうだ。奥に通路が二つ、片方は戻るだけの可能性、か…。まずは他をあたってみるか」


 一旦詰所を後にして道中にあった岐路を一つ一つ潰していく。

 その内の一つで、迷いこんだ冒険者や魔物達の成れの果てが積み重なった廃棄物の集積所と思しき場所に出ると、その場所で遂に氷塊巨人と鉢合わせになってしまった。


 「まずいっ…!」

 「ヴォッ!?…ヴォガッ…!?」


 咄嗟に羽織っていた防寒着を脱ぎ、壁を蹴って顔の前まで飛ぶと、仲間を呼ぼうと口を開けた氷塊巨人の顔に被せてその口を塞ぐ。

 そしてすかさず肩の上に捕まると魔力を纏わせた鎧通し(スティレット)を剥き出しの項に突き刺し魔力を解放する。


 「ヴォッ…!」


 短くも強力な電撃が氷塊巨人の全身を駆け巡ると、短い声を上げながら気を失い、積み上がった骨の山へと倒れこむ。


 「ふう…危なかった。…流石にバレてないよな…?」


 やってきた道の方に耳を澄ますも、近づいてくる足音は無い。異変に気付かれた様子も無く、辺りは静かなものだ。


 それから更に氷塊巨人達の巡回ルート上の岐路を一通り調べたが、どれもが行き止まりになっており、何かしらの部屋となっている事がわかる。

 そして詰所になっている広間から伸びるもう一つの岐路、それが脱出経路に繋がっている事も。


 「参ったね…、さぁて、正面突破するしかないか…?」


 広間を見渡せる氷塊の陰から少しだけ身を乗り出し、詰所である広間で思い思いに寛ぐ氷塊巨人達の様子を伺いながらどうやってこの場を切り抜けるか、俺はその方法を考えていた。

 すると洞窟の天井の方から大きな揺れが伝わり、詰所の氷塊巨人達が異変に皆立ち上がる。

 すぐに彼らは一斉に洞窟の奥、まだ俺が足を踏み入れていない最後の岐路へと消えていった。


 ーーー


 時を同じくして、クリス達も漸く看守の洞窟の入り口、セオドアが目指す出口へと到着しようとしていた。


 「地図によるとォ…、この辺りにィある筈ゥ、ですがねェ…!」

 「この先は急な山があって、その先には切り立った崖があるわね。入り口があるとすればこの辺りの筈よ」

 「入り口の形がわからないからねぇ、もしかしたら雪に埋まってたりして…」

 「あり得ねェ話じゃねェと思うぜ? これだけ積もってりゃ相当デカくなきゃ簡単に埋まっちまう」


 一行はこの場所を訪れる途中で立ち寄ったティムナトの街でも情報の収集に努めていたが、遂に詳しい場所も入り口の形も解らず仕舞いだった。

 結局聞き出せたのは既に知っている入り口の凡その位置だけであり、とりあえずはその場所を目指す以外無く、腰まで埋まる様な深い積雪の森の中を進む。


 「クローディアさんどうですか?」

 「まだ魔術は使えるわね、この辺りじゃないわ」

 「流石にこれは骨が折れますね」

 「とは言え人の通りも無い僻地ですわ、致し方無い話です」


 クローディアは手の上に光を塗り潰す様な黒い光を放つ魔力の塊を浮かべて看守の洞窟の入り口を探っていた。

 看守の洞窟および、ヘレ氷原は土壌に含まれる反魔石と言う物質によって、魔術の発動もとい、魔力の形成が阻害される。

 看守の洞窟の入り口周辺まではその土壌が広がっていると言う話であり、もしその場所に到着したならばクローディアの手の上に浮かぶ魔力の塊が消滅すると言う寸法だ。

 崖の手前に広がる山岳沿いに洞窟への入り口を探していると、程なくしてクローディアの手の上にある闇の塊が霧散する。


 「あー…、確かに魔術が使えないわね。もう結構近い所まで来てるみたい」


 魔術が使える全員が反魔石の影響を確かめる。

 最初にその影響を受けたクローディアを始め、クリスもアンリエッタも、フォルクも、マリオンも、全員が魔力を形成しようとするが、その広げた手に魔力が形成される事は無い。


 「クリス、アンタの魔剣術は大丈夫?」

 「兄様の手紙では問題ないと言う話ですが…」


 クリスは騎士剣を握り、その刀身に魔素を注ぎ魔力を纏わせる。

 そして騎士剣を突き出すと共に纏わせた魔力を解放すると、その先端から小さな火球が放たれ雪の中に消える。


 「大丈夫…ですね」


 クリスは自身がちゃんと戦力になれる事を確認すると、ほうと胸を撫で下ろしていた。

 今のクリスにとって魔剣術は謂わば生命線、これ無しではせいぜいS-からS程度の剣術しか扱えない。

 本来ならば一流の冒険者のレベルではあるが、これから挑む看守の洞窟はその更に上をいくレベルの洞窟であり、一流程度の実力では付いていけない場所。

 三年かけてこのレベルまで到達してもなお"付け焼き刃"なのだ。


 「とりあえずクリスをメンバーから外さずに済んだのは幸いね」


 マリオンもまたその事を理解しており、魔剣術が使えなければクリスを探索メンバーから外す事を考えいたが、杞憂に終わった事で顔に出しはしないが、内心では本人以上に安堵していた。


 「…それはそうと、…見つからねェモンだな」


 レオが話の腰を折り、うんざりした様子で積み上がった様子で積み上がっていた氷塊にもたれかかる。

 他の七人も、レオが足を止めたのに気付いて足を止めていた。


 「…ですわね。巨人と呼ばれる様な魔物が出入りすると言うのなら大きな入り口となる筈、地面に竪穴でもあると言うのなら仕方ありませんが、一般的に考えればそう言った洞窟はそう多くありませんわ」

 「まぁ入り口を塞いで隠してあるって言うのなら別なんでしょうけどね…」

 「少なくとも魔術が使えないこの近くなのは間違いないんだからもう少し探してみるしかないわね」


 八人は小さく溜息を零すと、再び雪に下半身を埋めたまま雪を掻き分け洞窟の入り口を探し始めた。


 一刻が過ぎ、再び全員が元の氷塊が積み上げられた場所に戻ってくる。

 積雪による動きにくさもあって全員が少し疲れた様子であり、お互いに洞窟の入り口が見つからなかった事を伝え合う。


 「ダメね、雪を掘っても竪穴なんて見つからないわ」

 「こっちもダメだ、木の上から辺りを見回したけど足跡一つないね」

 「本当にィ、こォの場所にあるんですかねェ…?」

 「街で得た情報じゃみんな揃ってこの辺りを指してたしな、あるのは間違いねェたァ思うが…」


 テラービブの街でも、ティムナトの街でも、看守の洞窟を尋ね、知っていると答えた者は皆この現在地周辺を指していた。

 疑う余地は無いが、八人で時間をかけても全く見当たらず、その情報でさえも疑いたくなる程だ。


 「地面を突いても、雪を押しのけても見つかる気配がありませんわ」

 「魔術が使えるならこの一帯に炎を放って雪を溶かしてみるんですが…」

 「同感ね、私だったらこの辺りの雪、全部闇の中に吸い込んでるわ…」

 「何か手掛かりでもあれば良いのですが…」


 洞窟の入り口の手掛かりは一つも無く、掘れば自分達の身長以上に積もった雪が全てを覆い隠し、捜索は一向に進まない。

 何か方法や手掛かりは無いかと全員が頭を捻る中、フォルクの長い耳が反応する。


 「どうしたのフォルク?」

 「いや…、何か聞こえた様な気がしたんだけど…、どこからだろう…?」


 フォルクの人並み外れた聴力が、近くから微かに聞こえる物音を捉えるが、その場所が特定できない。

 時折視線が下に向く事から地下からの物音である事はわかる。そしてこの下に洞窟が広がっている事も。


 「うーん…ダメだ、下に洞窟があるのは間違いないけど…」

 「そういえば、さっき入り口が塞がれてたらってマリオンさん、言ってましたけど…」

 「そりゃ言ったけど…、でも結局見つからず仕舞いよ。山肌に沿って雪を退かしてみても何も見つからなかったわ」


 クリスが指摘するとマリオンは眉間に皺を寄せてそう答える。

 彼女の言った通り、山肌沿いの除雪の跡には何も無く、レオがもたれかかる氷塊がある程度だ。


 「…そういえばこの氷塊…やたらと大きな塊がいくつも積み上がってますね」

 「ん?あァ、そういやそうだな…」

 「上から崩れてきたみたいね…、氷だけじゃ無くて岩もかなり混ざってるわ」


 八人はうず高く積み上がった氷塊や岩塊を見上げると同時に同じ事を考えた。


 「マリオンさん、これ、もしかして」

 「奇遇ね、私も同じ事考えてたわ」

 「なら俺がここにいたら邪魔だな」

 「ああ、成る程ね」


 全員の予想が一致すると、マリオンが背負っていた槌斧を構えて氷塊の前に立つ。

 その後ろではアンリエッタが盾を構えており、残りの全員がその陰に隠れていた。


 「じゃ、やるわよ」

 「ええ、マリオンさん、お願いします」


 マリオンが構えていた槌斧を振り被り、全身全霊の力で氷塊に打ち付ける。

 氷塊は丈夫ではあるが、すぐにマリオンが二度、三度と槌を打ち付ける度に亀裂が広がり、その破片が周囲に飛び散っていく。

 そして八度目の打撃で氷塊が遂に砕けると、その上に積み上がっていた氷塊や岩塊も崩れ落ち、マリオン目掛けて転がってくる。


 「マリオンさん、危ないっ!」

 「どーって事ないわ、見てなさい!」

 「クリスさん、身を乗り出さないでくださいまし!破片で怪我しますわよ!」


 大量に転がってくる大きな氷や岩の塊を前にマリオンは問題ないと言ってのける。

 盾を構えているアンリエッタもマリオンが危険とは考えていない様で、寧ろ背後の六人が破片で怪我を負う事を心配していた。


 「準備運動くらいにはなるかしらねっ!


 長柄の槌斧をまるで棒切れを扱う様にくるくると両手で振り回して待ち受ける。

 迫り来る氷塊や岩塊を待ち受けるマリオンはその一つ目が目の前にやってくると同時に右手一本で振り抜いた。


 「おいおい…なんて馬鹿力だよ…!」

 「そういえばマリオンさんって」

 「ええ、"魔人の加護"、その持ち主ですわ」

 「それでも普通受け止めるので精一杯の筈じゃないかしら…」

 「だとすれば彼女、相当に鍛えてきたのでしょうね」


 この中で最も身長の高いレオの四倍以上の直径を持つ氷塊が、まるで小石でも投げたか様に突然転がる方向を変え、勢い良く真横にすっ飛んでいく。


 「さーて、い、く、わ、よォ〜♪」


 弾き飛ばした岩の遠くで木をなぎ倒す音が響いてくると同時にマリオンは嬉々とした表情で槌斧を再び振りかぶっていた。

 その後も氷塊や岩塊が転がってくる度にあらゆる方向へと弾き飛ばされて行く。

 中には脆く、マリオンの槌斧に弾かれた瞬間に砕け散るものもあったが、その破片もアンリエッタの城壁を模した大楯に弾き落とされて後方に被害は無い。

 時折、弾き飛ばした岩のかけらがマリオン自身に直撃していたが、魔人の加護による鋼の肉体を持つ彼女はビクともせず、岩を弾き飛ばし続けていた。


 「最後の一つッ!海まで打ち返してあげるわ!」


 最後に転がってきた岩塊を打ち返そうとマリオンは槌を大きく振り被り、全身全霊を込めて振り抜いた。


 「あっ、ヤバ」


 轟音を上げて振り抜いた槌が岩塊に当たると甲高い音を上げてふわりと浮き上がる。

 思い切り振り抜こうと力んだ結果、マリオンは芯を外して打ち損じていた。

 ふわりと浮き上がった岩塊は見事にアンリエッタを始めとする七人の所へ落ちようとしており、アンリエッタはそれを防ごうと大楯を上に構えていた。


 「馬ッ鹿野郎ッ!」


 アンリエッタの大楯を踏み台にして飛来してくる大岩目掛けてレオが飛び上がる。

 レオは両腕を広げて大岩を受け止めると、そのまま後方に放り投げて地面に叩きつけ、まるで隕石が地面に落ちたかの様な轟音を立てて砕け散っていた。

 その衝撃で岩の周囲には大きな穴がぽっかりと空いており、周囲の木々に積もっていた雪も大半が落ちてしまっていた。


 「ごめんごめん、ちょっと力み過ぎたわ」

 「ったく、魔人の加護の力が凄ェのはわかるけどよ、ちゃんと最後まで締めろよな」


 マリオンがウインクしながら舌を出し、軽いノリで謝罪しに戻ってくると、レオは手を叩きながら戻りそう返す。

 そしてその拍子に大きな手でマリオンの頭を鷲掴みにする様にして撫でると、彼女はそれが気に入らなかったのかレオに食って掛かった。


 「ちょっと!子供扱いするのはやめなさいよね!」

 「うおッ!なんだいきなり!?」

 「ああ…、レオさん、一応彼女、四十を越えてますわ。子供扱いすると怒りますわよ」

 「うっそだろ!? このちびっ子がかよ!?」

 「アタシは"鉱山種(ドワーフ)!いい、年齢だけ言えばそこの半長耳種(ハーフエルフ)の次に年上なの!獅子人種だかなんだか知らないけどもう少し年長者に対する敬意を持ちなさいッ!」

 「ぐおっ…!」


 癇癪を起こしたマリオンの強烈なボディブローがレオの腹を突き抜ける。

 無防備にそれを食らったレオはその場で横たわるともんどりうって転がっていた。


 「…ったくッ。このバカが起きたら突入するわよ、みんなちゃんと準備は済ませておきなさい」


 狂犬の様な顔付きで憤慨しながらそう伝えるマリオンに一向は無言のまま首を縦に振る。

 殴られたレオはまだ立ち上がれずに切迫した呼吸を繰り返しながら震えていた。


 「そういえば、入り口はっ!?」

 「ちゃんと開いてるわ。塞がれていたのか、塞がってたのかはわからないけどね」


 岩塊と氷塊が取り除かれた山肌には地割れで裂かれた様な洞窟の入り口がある。

 その中からは冷たい空気が流れ出しており、氷で覆われた洞窟が奥へと続いていた。

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