第百三十五話:死力を尽くして
「大津波ッ!? この短時間でこの威力の魔術を使える程の魔力を練ったなんて…!」
「急げっ!この規模だと仮に俺達はやり過ごせても船が沈められるっ!」
「いや…船どころじゃない、この後ろは魔導連邦、ここで止めなきゃ魔導連邦まで被害が及ぶわ!」
帝烏賊が魔術で引き起こした大津波は最早巨大な壁の様になり此方へと接近する。
このままでは一帯の海域、魔導連邦の東岸までを巻き込んだ凄じい被害が発生するだろう。
「本当に急いだ方が良さそうですね…! 風雪舞う山より出でし女神よ かの者を安らかなる眠りに誘う抱擁を与えよ──」
「クローディアッ、クリスの手をッ!」
「わかったわ、セオッ!」
クローディアがクリスの手を握り、俺も急いで後退してクローディアの手を掴む。
「俺の魔素も使え、クリスッ!」
「行きます、"冷厳なる女神の抱擁"ッ!」
クローディアを通して大量の魔素がクリスに流れ込まれると、クリスは全力の大魔術を放つ。
波に向けてかざされたクリスの手から白く眩い光の魔方陣が刻まれ、強く発光すると、女神の姿をした白く輝く冷気が舞い降りてきた。
女神の姿をした冷気が両手を大きく広げ、大津波を受け止める様に腕を閉じると、瞬く間に周囲の海を大津波ごと氷の大地へと変貌させていた。
「──ハッ…ハッ…、ハァッ…!」
「危なかった…」
「ギリギリ…ね…」
凍り付いた帝烏賊の背後、そこには津波だった巨大な氷の山が壁の様に聳え立つ。
風が吹けば霜を巻き上げ、身を切る様な白く冷たい風が頰を掠めていった。
クリスは魔素の大半を放出したらしく、息を切らし肩を上下させる。
しばらく大魔術を放ったまま動かずにいたが、凍り付いた帝烏賊が動かないのを確認すると、糸が切れた様にクリスは後ろに倒れこんだ。
「おっと危ない、…ハハ、いつ見ても凄い威力だねぇ。これなら帝烏賊も流石に生きちゃいないでしょ」
フォルクは倒れ込むクリスを受け止めて全力で放った大魔術の威力に苦笑いを浮かべていた。
「火山の環境すら変えた程よ、海で使えばこれくらいは想像がつきそうなものだけどね」
「流石というべきか…、乳飲み子の頃からずっと見ていましたが最早末恐ろしいとすら…、…痛っ…!」
クローディアも呆れた様にクリスの大魔術に触れ、アリーシャも起き上がり足を引きずりながら戻ってくると、そんな事を話していた。
アリーシャは全身を背中から強く叩きつけられたものの、自力で立ち上がれる程で済んだようだ。
「足を捻ったのと、背中の打撲、でしょうか。ご心配を…」
「気にしないでくれ、寧ろお陰で帝烏賊の隙ができた。…と言っても結局止められなかったけどさ」
「…寒ッ…!なんだこりゃ、寝てる間に随分と景色が変わっちまってるじゃねェか…」
「…この寒さ、疲れきった身体には響きますわ…。見た所、帝烏賊も氷の中、ですわね」
「アンリ!レオ!」
アリーシャも、アンリもレオも無事起き上がり、俺は脇目もふらずに二人に抱きつく。
「おおっと…、びっくりすんじゃねェか…」
「セ…セオ様、まだ疲れきってるので…、キャッ!」
レオは少し蹌踉めくに留まったが、アンリは疲れが溜まっているのか足が縺れ、そのまま尻餅をついてしまった。
「ああ、ごめんアンリ…」
「…いえ、お恥ずかしい所をお見せしましたわ。…本来ならば私も重戦士には向かない体格、こういった手合いを相手にすると嫌でも思い知らされますわね」
アンリは尻餅をついたまま少し俯いた後、帝烏賊に視線をむけて自嘲気味にそう零す。
「そんな顔はしないでよ、アンリ。キミとレオが耐えてくれたからこそ僕らは無事だった。それにセオが来るまで耐えられたのだって二人のおかげだよ。胸を張りこそすれ、力尽きた事を恥じることはないさ」
フォルクはアンリの肩に手を置いて柔らかい表情でそう接する。
「オイオイ、そういうのは船に戻ってからにしねェか? 何はともあれ帝烏賊を仕留めた以上、もうここにいる必要はねェ。早く戻らねェと船に置いてかれちまうぞ?」
「…デリカシーのない人ですね」
「あァ?」
「アリーシャ、レオ、そういう事こそ船に戻ってからだ。レオの言う通り、とりあえずは船に戻ろう」
レオとアリーシャの小競り合いを諌め、船へ戻ろうと話して魔力を練ろうとしたその瞬間、帝烏賊の身を包んでいた氷に亀裂が走る。
氷の亀裂はすぐに全体へ広がると破片を散らしながら崩れ始めた。
「あれでまだ生きてたのかっ…!?」
「なんて生命力…、我々もそう余力は…」
「…だが帝烏賊だってギリギリなんじゃねェか? あんだけの攻撃を食らっといて…」
レオが弱っているのはこちらだけではないと言う主張をするが、氷から解放された帝烏賊はこちらに見向きもせずに切断され不揃いとなった八本の触手を天へと伸ばす。
「…何をしているのかしら?」
「何だろうと…何かするつもりならその前に仕留めるだけだっ…!今度こそ仕留めてみせるっ!」
クローディアは帝烏賊の不可解な行動に疑問を覚える。
だが、帝烏賊が完全に隙を晒している今こそ本当に仕留める好機と捉え、俺はいち早く飛び出した。
氷上にある頭部へと真っ直ぐに接近し、右手の騎士剣を振り上げる。
その瞬間、帝烏賊の瞳が此方を向いた。
既に帝烏賊の懐へと侵入しようとしていた俺は足を止める事なく、そのまま帝烏賊の懐へと潜り込む。
幾ら切られた触手とは言えあと数歩の距離、返りは最早追いつかない。
「ギュイイイィィィィ!」
「うわっ…!」
振り上げた剣を帝烏賊に振り下ろそうとした瞬間、帝烏賊は耳を劈くような叫び声を上げ、俺はつい怯んでしまう。
その瞬間、激しい水流の様なものを浴びて視界を奪われ、更に吹き飛ばされてしまった。
「くっ…目が…!」
烏賊墨──。触手を奪われ、最大の攻撃であろう大津波を破られた帝烏賊の奥の手だった。
勢いよく大量に吐きかけられた帝烏賊の墨が全身に纏わりつく。
帝烏賊の墨は粘り気のある墨で簡単には取れなかった。
「アレを…!」
「なっ、再生してやがるっ…!」
「何が起きてるんだ…クソッ、"激流砲ッ!」
クリスが帝烏賊の異変に気付き、その異変をレオが口にする。
未だに纏わりつく烏賊墨が取れずにいた俺は、水属性の魔術である激流砲を自らに放った。
「…なっ、触手が…!?」
烏賊墨を落として漸く視界を取り戻した俺はその光景に驚き、自らの目を疑う。
そこに映っていたのは不揃いながらも全て切り落とした筈の触手が復活した帝烏賊だった。
「なんて事…もう万全の帝烏賊を相手なんて…」
「ンな事言ってられねェよッ!負けりゃ全滅、諦めるわけにゃいかねェ!」
復活した帝烏賊を見て絶望するクローディアをレオが叱咤する。
「…ええ、ここまで来て…諦めるわけには行きませんわ」
「…まだ、私は…行けます…。大魔術はもう…使えませんが…、命ある限り…抗いましょう…!」
体力も魔素も底を尽きかけているアンリとクリスも蹌踉めく身体を起こし、立ち上がる。
最も消耗の激しい二人もまだ生きる事を諦めてはいない。
「クリスもアンリもそう言ってる以上、僕も頑張らないわけにはいかないな」
「私も…この程度の怪我で音をあげるわけにはいきませんね」
フォルクは腰の短剣を抜き、弓を持つ手に短剣を添える。矢筒の矢も少なくなり、いつも苦手だと話す接近戦も辞さないつもりの様だ。
アリーシャも捻った筈の足首を回しながら両手に剣を握る。
「何よ、みんながそう言うんじゃ私一人逃げるわけいかないじゃない…。…もう魔素もそこまで残ってないから大した事は出来ないけど…、こうなったらトコトンまでやってやるわ…!」
全員の決意を見てクローディアも半ばヤケではあるのだろうが自身を奮い立たせ帝烏賊を睨みつける。
体力も奪われて沢山の傷を負ったレオ、魔素を使い果たしたクリス、まともな攻撃手段を失ったクローディア、皆を護るために一度は力尽きたアンリ、隙を作るために身体を張って攻撃を受け止め負傷したアリーシャ、無傷ながらももう矢が殆ど残っていないフォルク。
俺自身も大魔術を放ったクリスに大量の魔素を分け与えた為にそれ程余裕はない。
満身創痍──。当に俺達の状況を言い表すのにこれ程相応しい言葉も無いだろう。
だが全員が復活した帝烏賊を相手に命ある限り抗う姿勢を見せ、構えていた。
「勝とう。必ず全員で船に戻るんだ!」
「「オオッ!」」
「ギュイイイィィィィ!」
クリスにはフォルク、アンリにはレオを当てがい、触手の攻撃を躱せる様に俺達は散開し、帝烏賊の攻撃に備えていた。
「決め手はセオ、お前しかいねェ!俺達が全力で帝烏賊の本体までの道筋をこじ開けてやる!抜かるなよッ!」
「わかった!」
アンリを抱えたレオが帝烏賊の間合いに入ると、帝烏賊の触手が次々にレオに振り下ろされる。
レオは帝烏賊の攻撃を躱しながら再び真魔光珠の力を解放し、獣型へと姿を変えるとその背にアンリを乗せた。
「しっかり掴まってろよ!」
「ええ、頼みますわ」
機動力を重視した姿となったレオは軽やかな足取りで次々に叩きつけられる触手を躱していた。
「…僕の事も忘れないで欲しいな!」
レオに気を取られている隙を狙い、フォルクの矢が触手の隙間を抜けて帝烏賊の頭部を捉える。
「ギュイィッ!」
矢を受けた帝烏賊は鳴き声を上げるとレオへの攻撃の手を緩め、フォルクを睨みつける。
「さ、クリス、しっかり掴まって」
フォルクは弓を肩に掛け、クリスを右腕で抱きかかえた。
痩身であるが故に非力に見えがちだがフォルクは軽々とクリスを抱えるとすぐに走り出し、振り下ろされる触手を躱す。
フォルクは軽やかな身のこなしで触手の攻撃を掻い潜っては右手の短剣で触手を斬り裂いていた。
「オイオイ…、お前の相手はこっちにもいるんだぜ!」
フォルクに意識を移した帝烏賊へレオは爪を立てる。
レオとフォルクが互い違いに攻撃を仕掛けては、帝烏賊は攻撃の狙いが絞れずに混乱し始めていた。
「今ならっ…!」
「…少しは攻撃を鈍らせられればいいんだけど…"三重毒"ッ!」
レオ達とフォルク達に気を取られている帝烏賊にアリーシャが間合いを詰める。
その後ろからはクローディアが毒弾を帝烏賊へと放っていた。
アリーシャが両手の剣の間合いへと入り、レオに振り下ろされた触手の根元へ向けて刃を振り抜く。
振り抜いた刃は切断までには至らないまでも深く大きな傷を与えており、斬られた触手は力が入らないのか、その場から動けずにいた。
アリーシャの背後から撃たれたクローディアの毒弾も、フォルクに振り下ろされた触手へと着弾する。
クローディアの放った毒弾を受けた触手はフォルクの短剣によって受けた傷から毒に侵されると、徐々に動きを鈍らせていた。
「…もしかして、帝烏賊も実はかなり弱ってきてるんじゃない?」
「…みてェだな、最初に比べて再生も遅ェし触手も叩きつけてるってェよりも倒れ込んで来てるみてェだ!」
「私が斬りつけた触手が物語っています、再生しないどころかもう自ら持ち上げる事すら出来ていません!」
一見強力に見えた再生能力だったが、どうやら体力を消耗した事で著しく弱体化している事がわかる。
加えて大津波を使ってからと言うもの、帝烏賊は魔術による攻撃を一切行っては来なかった。
「どうやら魔素も相当に消耗してるみたいですわね」
「ええ、あれだけの規模の大津波…、相当な魔素を消費している筈です」
帝烏賊は海の脅威として恐れられる存在だ。脅威的な再生能力に全部で十本もある強力な打撃や締め付けを繰り出してくる触手、そして広域に渡る不可避の水魔術、それらが"海の脅威"を裏付ける帝烏賊の能力だ。
しかしその能力も強力故に代償も大きかった。
再生能力については代謝能力が異常に高いという事、つまりそれだけ体力の消耗も大きくなる。
強力な魔術についても、本来ならば上級魔術に相当する大津波だが、大魔術相当の威力で放てばそれだけ魔素の消費は激化してしまう。
体躯の大きさも攻撃能力の高さも、再生能力の高さも、裏を返せば燃費の悪さを表しているという事であり、つくづくバランスの悪い魔物である事が表面化していた。
尤も、大抵の冒険者ではそこに至る前に圧倒的な攻撃力と手数の前に為す術なく海の藻屑にされてしまうのであろうが──。
「ギュイイイィィィィ!ギュイイイィィィィ!」
帝烏賊は激昂し、アリーシャに斬りつけられた一本の触手を除く、全ての触手を持ち上げて俺達を威嚇する。
最早悪足掻きとも言える帝烏賊の行動にフォルクもレオも全く怯まない。何故なら二人も帝烏賊が俺達と同様、満身創痍である事に気が付いたからだ。
「馬鹿が…、俺達相手にわざわざ隙見せやがって…!」
「もうそんな虚仮威しは通用しない。さ、下ろすよ、クリス」
「…私も迎撃します!」
威嚇が無意味だと気付いた帝烏賊が持ち上げた触手を一斉に振り下ろす。
しかし、威嚇をしている間に迎撃の準備をしていた仲間達も同時に動き始める。
「避けられはしませんが…、ならば斬り飛ばせば良いだけの事…、ハアアッ!」
「…これでホントに打ち止めね、喰らいなさいッ、"邪歪力"ッ!」
「…とっておきの一発、外しはしないッ!"神罰の一矢"ッ!」
アリーシャ、クローディア、フォルクの攻撃が帝烏賊の触手を再び千切り飛ばす。
特にフォルクの放った最後の矢は、触手に命中すると大穴を開けて貫通し、帝烏賊のヒレをも吹き飛ばしていた。
レオはアンリを乗せたままアリーシャが開けた触手の隙間を通り抜け、触手の上へと大きく跳躍する。
「アンリ、行くぞォッ!」
「ええ!私も槍を突き立てるくらいならッ!」
空振りし甲板に叩きつけられた触手目掛けて、レオに跨り騎兵の様に槍を構えたアンリが大槍を突き立てる。
「"暴風槍"ァァッ!」
大槍の先端が触手に突き刺さると、アンリが魔素を流し込む。
触手の内部より大槍の先端から風が放出され、触手は大きく膨張し破裂して千切れてしまう。
さらに大槍から放たれた爆風は脆くなった船の甲板に大穴を開け、アンリ自身の身体も反動で大きく打ち上げられてしまっていた。
「さぁて、そろそろ終いにしねェとな…」
レオはアンリが吹き飛ばされた後、元の獣人の姿へと戻るが、真魔光珠の力はまだ解放されたままだ。
レオは腕の筋肉を張り裂けんばかりに膨張させて小さく跳躍すると、背を反らせて体を引き絞り右手の爪を振り上げる。
「見せてやらァ…、真魔光珠の力を解放した獅子人種の力をッ!…オオォォ、"地裂爪''ゥッ!」
レオは豪快なスイングで爪を振り下ろすと、船の甲板と氷の地面を引き裂き、一本の長い爪痕を残す。
爪の一撃の軌跡上には帝烏賊の触手が二本あり、二本の触手は当然のように切断されていた。
その威力は切断されているにも関わらず、その切断面が潰されてしまう程の威力だった。
フォルク達の攻撃で半数程の触手が吹き飛び、攻撃の隙間ができた事でクリスは攻撃を免れた。
だがクリスもまた、フォルクに護られているばかりではなく、更なる追撃の準備をしていた。
先程の大魔術で大きく魔素を消費して軽度の魔素欠乏の症状が現れていたが、クリスにしてみればまだ上級魔術を放つ程度の余力は十分にある。
「本体が姿を現している今なら…!"豪雷槍"ッ!」
クリスが雷の槍を空から呼び寄せ、直接帝烏賊に落とす。
強力な雷に打たれ、帝烏賊の全身に激しい電流が流れると、大きく痙攣して怯む様子を見せていた。
「さぁ兄様…、とどめをッ!」
意識を失ったのか帝烏賊は身体を痙攣させたまま動かないが、落雷を受けながらも帝烏賊は二本の形状の異なる丈夫な触手を交差させて防御の体勢を取っており、その状態のまま動きを止めていた。
俺は落雷による電撃で熱されて湯気を放つ触手の上に飛び乗り、超越の加護の力で身体能力を限界まで引き上げると、帝烏賊の本体へと一直線に駆け出した。
「…仕留めるッ!ウアアァァッ!」
強く踏み切って大きく跳躍した俺は防御する触手の上から騎士剣を振り下ろす。
超越の加護で強化された腕力で防御する触手を叩き斬り、そのまま帝烏賊へと斬りつけると、帝烏賊は意識を取り戻す。
強い痛みを感じて意識を取り戻したのだろうか、身体の上に乗った俺を振り落とそうと触手を振り回し、身体を大きく揺する。
「…くっ、そうか今斬ったのは胴体、頭を潰さないとっ…!」
俺が斬りつけたのは帝烏賊の胴体だった。
烏賊とは俺の世界では所謂頭足類と呼ばれる生物で、当然胴体にも重要な器官は存在するが、人間で言うところの脳にあたる部分はその名の通り触手の根元、目がついている頭部にある。
暴れ始めた帝烏賊に咄嗟にしがみついていた俺は騎士剣を持つ手を引き絞り、魔力を纏わせた。
「今度こそとどめだッ!…"属性斬撃・"三叉雷槍"ッ!」
しがみついていた帝烏賊の胴体を蹴って離れ、電撃を纏わせた騎士剣を雷の閃きの様に突き出す。
その一閃が帝烏賊の眉間を貫くと、剣からの放電によって帝烏賊の全身を激しく痙攣させた。
電撃が帝烏賊を焼き焦がし、痙攣を続けさせる内に今度は触手が熱によって収縮を起こして巻き始め、電撃が止まると同時に帝烏賊は力無く溶けた氷の上に浮かんでいた。
「今度こそ…本当に終わりだ…!」
ボロボロになっていた甲板の先端に着地し、剣に纏わせていた魔力を解放して黄色い光の粒を散らせると、俺は騎士剣を背中の鞘へと収める。
同時に超越の加護の力を解除するとその反動が全身に返ってきた。
強い疲労感が全身を襲い、思わず脱力して柵の無くなった甲板から落ちそうになってしまったが、間一髪、レオが俺の胸当てのベルトを爪先で引っ掛けてくれた事で海への転落を免れていた。
「…ッたく、最後ぐらいキッチリ締めろよな、リーダー」
「ハハ…、返す言葉もないよ」




