第百二十三話:船旅
『それでは出航しやすゲロ!』
一刻程で航海計画を纏めたブルック達が俺の部屋にやってくると直ぐに出航を告げる。
本来ならばもう兵士に追い回されているわけでは無い為、こんな雨の中出航を急ぐ必要は無い。
しかし、俺達はガルム皇帝であるグリオネールの父ティグリオンに尻を叩かれた事で次の冒険に向かう心に火を点けられていた。
加えて、ブルックが"この程度の雨や風じゃこの船はビクともしないゲロ!"と言っていた事、ゼネルが"この大陸周辺の海の事なら我々にわからない事はありませんケロ"と言っていた事もある。
故に俺はならば、と言う事で早めの出航を依頼していた。
海から錨があげられると共に、船は波に乗ってガルムス大陸を離れていく。
帆は広げられてはいないが波の速さもあって、船は岸をどんどん離れ、搭乗口からプラットンの街へと目をやるとあっという間に小さくなり雨の向こうへと消えていく。
『帆も張ってないのに随分速いな…』
『雨期のガルムス大陸の周辺は海流がすごく速いゲロ』
『帆を張らない理由としてはもう一つあるのですケロ』
ゼネルが理由を述べる寸前、船が突然大きく揺れ、俺は搭乗口から海に投げ出されそうになるが、ブルックに手を引かれて事無きを得た。
それと同時に船の外から強く風を切る音が聞こえてきた。
『ま、この通り波は高くなるわ風も強くなるわで帆を張りゃ、すぐに裂けちまうわけですゲロ』
『な…なるほど…』
ブルック達はこの激しい揺れでも何事も無いかの様に真っ直ぐ立っており、平然としている。
後から聞いた話ではそもそも殆どを船上で過ごす為に平衡感覚が鍛えられている事と、彼ら蛙人種は指先が吸盤のように壁や床に張り付くらしく、故にこの激しい揺れでも平然と立っていられるのだとか。
ガルムス大陸を完全に離れるまでの間は甲板に出るのは強く止められた。俺自身海に投げ出されかけて危険である事は容易に想像できるし、そもそもこの雨では外に出る気も起きない。
暫くは船室に缶詰になるという事で俺達は全員食堂に集まり、人語と獣人語の語学教室を開く事になる。
当然講師は両方を話せる俺とクリスで基本的にはグリオネールに集中して人語を教え込む形を取り、合間に他の四人に獣人語を教えて行く。
「はじ…め、まし…て…私は…ガルム帝国の…皇子…グリオネール…で…す」
『まだまだぎこちないけどとりあえずは自己紹介は出来そうだな』
「兄様、よくよく考えてみたら皇子を名乗らせるのは色々と問題があるのでは…」
「たしかにそうですわね。ガルム帝国の皇子を名乗っては良からぬ輩が近付き兼ねませんわ」
クリスとアンリの言っている事は尤もだ。
グリオネール相手にそう簡単に出来はしないだろうが、身代金目的で誘拐しようと考える輩なんかが寄り付く恐れがある。
『あー、グリオネール。一つ提案なんだが偽名を名乗らないか? ガルム帝国の皇子ともなれば大魔大陸でもそれなりに名前が知れ渡ってると思うんだ。だとすればそのまま名乗ったら不都合が起こるかも知れん』
『おお、そりゃそうか…。じゃあセオ、お前が決めてくれ』
提案をしておいて何だが、グリオネールは自らの偽名を俺に決める様に言い出した。
『え…じゃあ…うーん…レオ、とか?』
返答に困った俺はついや安直な名前を出してしまう。
グリオネールは一時黙ったまま此方を見ていた。どうやら安直過ぎたのだろうか。
『…いいなその名前!獅子人種がガルム帝国を治める様になって三代目の皇帝、レオ・ヌ・ガルマリア三世と同じ名前か!ちと俺が名乗るにゃ重い名前だが…まぁ覚え易いだろうしいいんじゃねェか?』
『あ、あぁ、そうなのか。じゃあ今日からレオ、レオだ』
『おう。じゃあ姓も皇族じゃない獅子人種の姓を取って…レオ・レオリア、ってトコか!俺はレオ・レオリア、よろしくな!』
俺は知らず知らずの内に十八代皇帝の名前をグリオネールに名付けていたらしい。まぁ本人も気に入っているのであれば問題はないだろう。
「ふふ、レオ、改めて宜しくお願いしますわ」
「三代目皇帝がどうとかはわからないけど私は覚え易い名前は大歓迎よ?」
「間違えない様にしないといけませんね。レオ様、宜しくお願い致します」
「それじゃレオ、そのまま人語で自己紹介してみようか?」
「お…おう…あー、私は…レオ・レオリア…です…よろ…」
「はい、もう少し自信を持って話してくださいレオさん。私達と一緒にいたエリウッドさんやシェリーさん、それにノアールさんもスラスラ話せてましたからレオさんも出来る筈ですよ」
どうしても詰まってしまうレオに痺れを切らしたクリスが他の人語を話せる獣人族を引き合いに出して焚きつける。
「あー…ゴホン。俺は…レオ、レオ・レオリア…よろしく…頼む!」
「お、今のは結構いい感じだったぞ。その調子だレオ」
「お、おう。マジか…じゃ、じゃあもう少し…頑張ってみるか…!」
グリオネール改め、レオはその後も人語の練習を懸命に続け、ガルムス大陸の周辺海域を出るまでの八日間の間で一通りの人語を話せる様になっていた。
ーーー
「ようやくガルムス大陸の周辺海域を抜けたみてェだな!」
ガルムス大陸の周辺海域を抜けた途端に雨は止み、空には青空が広がり、輝く太陽が見える。
ガルムス大陸の方を見ると、どうやらガルムス大陸の上空だけ分厚い雨雲が覆っているらしい。
雨が止んだ事で漸く甲板に出た俺達は十日強ぶりの日光を満喫していた。
「んー…やっぱり日の光の下が一番だねぇ」
「ええ、雨期に入ってからはずっと雨でしたから」
「はー、久しぶりの太陽が気持ちいいわー…」
雨期に入ってからずっとお預けだった日光浴も束の間、甲板からすぐにある船長室から戦闘の準備をしたブルックとゼネル、船員達が出てくる。
『あー、皆さん。気持ちよく日光浴を満喫してるトコ失礼ですが、戦闘の準備をお願いしやすゲロ』
『そろそろ奴らが出てくる頃ですケロ』
俺達は突然の戦闘準備要請に目を丸くしていた。その様子を見たブルックとゼネルが理由を説明し始める。
『この周辺海域は半魚人達の縄張りゲロ』
『奴ら一体一体は大した事は無いのケロが、数が多すぎて我々だけでは討ちもらしがどうしても出てしまいますケロ』
二人の説明を聞いている間に突然、海面から勢いよく水柱が立つ。
水柱と共に海面から飛び出してきたのは当然、たった今二人が話に出していた半魚人だ。
翠色の皮膚に不揃いの無数の牙、背中と両腕にある研ぎ澄まされた刃の様な大きな鰭、まさにファンタジーの世界の半魚人そのものだ。
「キシャァーッ!」
半魚人が敵意を孕んだ鳴き声を上げると仲間の半魚人が次々と水柱を上げて甲板へと飛び出してくる。
「セオ、お前達は船室に武器を取りに行って来な。俺が場を繋いでてやるよ」
「レオさん、一人で仕切らないで下さい!皆さん、ここは素手で戦える私とレオさん、クローディアさんに任せて船室へ!」
「久しぶりの戦闘ね。思いっきり暴れてやるわ!」
三人はやる気満々と言った様子で身構えており、俺達は頷く。
「すぐ戻る、皆船室へ!」
ーーー
「それじゃあゲストもお待ちしてるわけだし…行くとしますか…オォラァッ!」
「ギシャアッ!?」
高速で接近してくるレオに半魚人は反応できず、懐への侵入を許してしまう。
懐に入ったレオは爪を剥くと直ぐ様一閃、半魚人の胴を切り裂いた。
半魚人は斬りつけられた勢いそのままに吹き飛ぶと蒼く深い海へと還っていく。
「キシャァー!」
「キシャァァァッ!」
仲間がやられた事に腹を立てた半魚人達は更なる増援を呼び出す為に頭を天に向け大声を上げると、それに呼応するかの様に再び海面から幾つもの水柱が立ち半魚人が飛び出してくる。
「…出てきた端からお帰り頂かないとキリが無さそうね。邪渦門ッ…!」
「ギシャッ!?」
増援の半魚人達が甲板に飛び上がってくるタイミングを狙っていたクローディアは空中に邪悪な力場を発生させる。
飛び上がっていた半魚人達はその力場に捕らえられると空中でひと塊となって藻掻いていた。
「じゃ、あとやっちゃって、クリス」
「…今夜は焼き魚ですね。炎精撃ッ!」
魔力を解放される同時に小さな炎がクリスの掌から浮かび上がる。
小さな炎は空中で揉みくちゃとなっている半魚人達の前まで移動すると激しく燃え上がり、巨大な炎の柱となって半魚人達を薙ぎ払った。
「しまった…!」
激しい炎が塊になっていた半魚人達を貫いた後、そこに残っていたのは芯まで焼け焦げた炭クズと灰だけだった。
クリスは失敗したと言わんばかりに床を蹴っていたが、それは決して仕留め損なった事に対する仕草では無い。
「ヒュー、相変わらず凄い威力ね」
「いえ、火加減を間違えました。炭クズにするまで焼くつもりは無かったんですが…」
「…本気で食べるつもりだったの?」
「食べられるのだったら食料の足しになるかと。船旅ですし、食料は貴重ですから」
「…呆れた」
至って真面目な顔で答えるクリスにクローディアは目を細めて呆れ果てていた。
そんな中、半魚人達の増援は尚も現れ続けており、いつの間にか船員達も半魚人達との戦闘に参加している。
『ゲロォ!この船で好き勝手は…』
『させませんケロッ!』
ブルックとゼネルは武器を扱うタイプの獣人族であり、ブルックは両手の手斧、ゼネルは短槍を巧みに操り半魚人達と応戦している。
他の船員達にも剣を持つものや、一般的な獣人族同様に体術を駆使する者もおり、船長・副船長を中心に各々が奮戦している。
ーーー
「待たせたっ!…っ、これはっ…!」
船室へ装備を取りに戻っていた俺達は甲板に出ると状況があまり芳しくない事に気付く。
決して押されているわけではないが、半魚人達の増援が際限なく続いた結果、甲板は既に敵味方入り乱れた乱戦状態となっていた。
「シャアァァッ!」
「…くっ!」
乱戦の中響いてきた鳴き声に振り向くと、クローディアが半魚人達に囲まれている。
彼女は闇魔術士故に直接的な戦闘は不得手だった。
下級の闇魔術には単体を直接攻撃するものがない為、乱戦下においては自衛手段が無いのだ。
クローディアは基本的には誰かしらに護衛してもらえる位置取りをしている筈だが、この乱戦の中でいつの間にか孤立してしまい、半魚人に囲まれてしまっていた。
「ギシャアッ!」
「…チィッ!」
「クローディアさんっ!……?」
半魚人が今まさにクローディアへと飛びかかろうとしており、俺は咄嗟に足を踏み出したが、その前にフォルクが弓を構えた状態で割って入る。
番えた矢を持った手が離れると、矢はクローディアへと飛びかかる半魚人の側頭部を貫き、一撃で絶命せしめた。
「こういう時は僕の出番さ。さぁセオ、遅れた分は取り戻さないとね」
「…ああ!フォルク、皆の援護を頼む。さぁ蹴散らしてやろう!」
フォルクは頷くと乱戦の中では全体を見渡すのに不利と見てメインマストを駆け上がる。
俺とアンリ、アリーシャは乱戦の中へと飛び込み戦況が押され気味となっている船員達の援護へと回った。
「ギッ!?」
「ギャッ!?」
「これじゃ思うように剣を振るえないか…!」
長尺の騎士剣を振り回せば乱戦下の甲板では味方を巻き込んでしまう為、俺は騎士剣を背中に納めて銀の直剣と氷の魔導器の短剣を両手に半魚人達を斬りながら甲板を突き進む。
甲板全体が戦闘状態であり、特に船首付近ではレオが独り、次々と襲いかかってくる半魚人達を相手に大立ち回りを演じていた。
「…とと、ンットにキリがねぇな…おわっ!? …ッぶねェな畜生ッ!」
半魚人の背後からの鋭い鰭を用いた攻撃を躱したレオは振り向き様に回し蹴りを放ち、半魚人を海へと蹴り飛ばす。
「オラオラ魚ども!幾らでもかかってきやがれッ!」
恵まれた体格と鍛え上げた肉体から繰り出す自慢の体術を駆使してレオは活き活きと立ち回っており、半魚人は現れた端から次々になぎ倒されていく。しかし倒されても倒されても、半魚人達の増援は止まるところを知らずに現れていた。
「オラァッ!せいッ!オォリャッ!でぇいッ!」
引っ掻き、正拳突き、裏拳、回し蹴り。次々と繰り出される体術が半魚人達をなぎ倒す。
「ウオオォォ…ヌァッ!?」
走り込んで半魚人に殴りかかろうとするレオは思わず床に伏した半魚人に蹴つまずいてしまう。
「チッ…!」
「ギシャアッ…ギッ…!?」
バランスを崩したレオに半魚人が腕の鰭による斬撃を見舞おうとしていたが間一髪間に合い、半魚人の頸から銀色の刀身を貫いていた。
「遅かったじゃねェか。先に楽しんでたぜ? そらッ!」
「ああ、でもどうにか間に合った。まだまだパーティーは終わりそうになさそうだ…ハッ!」
俺とレオは迫って来る半魚人達を倒しながらお互いに背を合わせ、取り囲む半魚人達と対峙する。
半魚人達もやはりこちらの力量を把握しているのか、先程レオを囲んでいた時よりも更に数を増やして俺達を取り囲んでいた。
ーーー
「ハアァァァ…せやァッ!」
「ギシャアァァッ!?」
アンリは大楯を構えたまま半魚人達に突っ込んで行く。
彼女は自身の防御力と大楯の性能をを活かし、ブルドーザーのように半魚人達を大楯に巻き込んでは甲板から次々と押し出して行く。
「ギシャッ!」
アンリが突進を終えた瞬間、隙を伺っていた半魚人が真上から飛びかかる。
「隙ありとでも言いたくて? ご生憎様、隙だらけなのはそちらですわっ!」
アンリは大槍を持つ右腕に力を込めると、蒼天目掛けて突き上げる。
半魚人は大槍で腹を貫かれ槍の途中で止まると、そのままアンリに海へと投げ捨てられる。
「クローディアさん、私の後ろに!まだまだ来ますわ!」
「助かったわ。援護は任せて頂戴!」
アンリはクローディアの救出の為に乱戦の中を突っ切っていた。
無事にクローディアと合流したアンリは彼女を護る様に背中と大楯で覆い、槍を構える。
「シャアァァ!」
「ギシャアァァッ!」
更に二匹の半魚人がアンリを目掛けて飛びかかって来た。
それを見てアンリは攻撃に備え、大楯を前にかざして防御の姿勢を取る。
「火矢・二連」
魔術の詠唱が聞こえると、飛びかかってきた二匹の半魚人の背中から胸を貫いて炎の矢が飛び出してきた。クリスの魔術だ。
「援護などいりませんのに」
「流れ弾です。お気になさらず」
クリスの目の前には首元が炭クズになり、頭のない二体の半魚人が膝をつき倒れ込んでいた。
狙ってか偶然か、クリスに襲いかかってきた半魚人に放った火矢が頭を焼き貫いた後、アンリに襲いかかってきた半魚人に命中していたらしい。
「クリスッ、危ないッ!…睡魔の霧」
クリスの背後に迫る半魚人達を見たクローディアが闇魔術を放つとクリスの背後から黒い霧が立ち上る。
黒い霧に包まれた半魚人達は足元をふらつかせ船を漕ぎ始める。
しかし、それに耐えた個体もおり、クリスに襲いかからんと鋭い鰭を振り上げていた。
「くっ、距離がありすぎますわ…ですがっ!」
アンリの位置からではクリスに迫る半魚人には攻撃が届かない。それでもアンリは飛び出そうと足を踏み出し身体を前に傾ける。
「心配ありません、クリスティン様には私がついています」
一陣の風がクリスの背後を通り過ぎると、クリスに襲い掛かろうとする半魚人と船を漕いでいた半魚人達が一斉に動きを止めた。
「助かりました、アリーシャ」
クリスが礼を述べた瞬間、背後に迫っていた半魚人達が一斉に無数の傷から青い血を吹き出して倒れこむ。
「皆さま、個々の能力は此方が上ですが敵は多勢、油断なさらぬ様」
アリーシャはそう答えるとまた風の様に半魚人達や船員達の隙間をすり抜ける様に走り始め、次々に半魚人達を斬り伏せていった。
ーーー
セオドア達が参戦してから船員達も徐々に半魚人達を押し始めていた。
無論、船員達の戦闘能力は半魚人達に負けてはいないし、数人組で死角をカバーしあっている為、そう簡単に崩れはしない。
それでもここまで圧倒的な数の力で攻めて来る半魚人達に少しずつ彼らは一時はやや押され気味になっていたのだ。
彼らが戦況を押し返し始めたのには理由があった。
『危ないっ!』
『うわっ!』
「ギシャアァッ…ギッ!?」
攻撃を受けると思って両腕で防御態勢に入っていた船員は何の攻撃も来ない事に気が付き恐る恐る防御の態勢を解くと、そこには脳天を矢で射抜かれ、倒れこむ半魚人の姿があった。
『死角はカバーしてあげるから気にせず戦って!』
『流石は半長耳種、いい腕してるぜ!』
『危なかった…!畜生、お返しだ!』
"凄腕の射手が背後を護ってくれている"
その安心感から船員達は一層奮起して、半魚人達を押し返し始める。
彼らの背後からはフォルクが援護射撃を行なっているのだ。
『あの半長耳種のおかげでかなりやりやすいゲロ』
『ええ、これなら安心して攻撃に集中できますケロ…ですがもうひと押し、船員達の士気を高めた方が良さそうですケロ』
『そうゲロ、もうひと押しゲロ…、全員、半魚人どもを海に押し戻すゲロ!数に恐れるな!獣人族の力を見せつけるゲロォッ!』
『『ウオオオォォォォ!!』』
ブルックが檄を飛ばし、船員達を鼓舞すると、船員達は雄叫びを上げて再び戦闘に臨む。
半魚人達はそれに怯み、徐々に戦線が崩れ出していた。
「ギジャアアーーッ!ギジャッ、ギジャッ、ギジャアァーッ!」
半魚人達の戦線が崩れ出すと直ぐに一際ドスの効いた半魚人の鳴き声が轟いた。
「ギッシャアアアァーッ!」
『うぉっ…!?』
『コイツらさっきよりも攻撃的にっ…!』
ブルックの檄で船員達は士気を高めた事で一気に押し切りにかかっていたが、半魚人達はある一個体の一吼えで持ち直し、踏み止まるどころか再び押し返し始める。
『指揮者半魚人に近衛半魚人…!やっぱりいたゲロ…!』
『このままじゃ泥沼ケロ…敵の指揮官、アイツを仕留めるケロォッ!』
ゼネルが半魚人達が持ち直すきっかけとなった咆哮を上げた個体を指差して甲板全体に叫ぶ。
その個体は他の個体よりもふた回り程大きく、また立派な鰭を持っている。体色も他の個体よりも深い緑色で、不揃いの凶悪な牙を覗かせており、顔の上半分は群れのリーダーたる証なのか、海王種と思しき魔物の頭骨で覆っている。
更にその周囲には半魚人達の上位個体で他の半魚人達よりやや大きく、腕の鰭を甲殻に変えた半魚人近衛を侍らせている。
「…こんな雑魚に構ってる場合じゃ無さそうだな?」
「アレを倒して終わりですわね」
「これ以上戦闘を長引かせるのは得策ではありませんね。仕留めます」
「援護…いや、仕留めるよ!」
「とっとと終わらせましょ。さっきから生臭くって仕方ないわ」
「焼き魚はもう十分です。消し炭にします」
「ああ、これで終わりにしよう。全員、指揮者半魚人を撃破するぞ!」




