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-転生奇譚- リンカネーションストーリー  作者: 彼岸花
第八章:咆哮響くガルムス大陸
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第百話:鋭い鉤爪と紅い鉤爪

 シェリーに呼び出された俺は仲間達にその事を伝えた後、一人宿泊施設を抜け出した。


 「ええと…ここで待ち合わせの筈だけど…あ、いたいた」


 シェリーは入り口から出てすぐの柱を背にして、気づいた俺に小さく手を振って近づいてくる。


 「来たね…、じゃあ行こうか」

 「あっ、はい…ってどこに行くんですか?」

 「ふっ、そんなに身構えなくてもいいよ。別にとって食おうなんざ考えちゃいないさ。アンタをここで倒せたとして、アタシもただじゃ済まないだろうしね。ちょっとサシで話したくなっただけさ」


 シェリーは肩を竦めてそう戯けてみせると夜の街へと歩き出す。

 呼び出された時は俺も少し身構えたが、彼女が言ったように特に敵意の様なものは感じられなかった為、俺も彼女の後を付いていく。


 ーーー


 娼館街を通り抜け、辿り着いた場所は寂れた酒場だ。

 今の時期はまだ娼館街は解禁されていない為、殆ど人通りも無く、抜け道の様な用途で通る事があるくらいで、僅かに数人行き違う程に静かだった。

 シェリーに連れていかれた酒場は客もおらず、女主人が一人、静かにグラスを磨いている。

 どうやら女主人もシェリーと同じ猫人種の獣人のようで、髪の色も彼女と同じく深く赤い色の髪だ。


 『いらっしゃい…っと、こりゃまた珍しい客がきたもんだ』

 『だろ? しっかしこの店は相変わらず寂れてるね』


 シェリーが酒場に入ると女主人がぶっきら棒に彼女を迎える。

 どうやら酒場の女主人はシェリーと旧知の仲らしく、久しぶりの再会らしい。


 『放っときな。しっかし十二年振りになるのかね、突然飛び出してどこほっつき歩いてたんだい?』

 『ちょっとドルマニアン諸島の方にね。今日は客を連れてきたんだ』

 『初めまして、セオドアっていいます』

 『へえ、アンタの知り合いかい!こりゃまた可愛らしい坊やだこと』


 シェリーに紹介され、酒場の主人に軽く自己紹介をすると、女主人はシェリーが仲間を連れて来たことに少し驚いていた。


 『この子が知り合いを連れてくるなんて、明日は季節外れの雨でも降るかね』

 『乾季だってのに降るわけないだろ、…まぁ十二年も経てば人は変わるもんさ、なぁ母さん』

 『え? じゃあこの人ってシェリーさんの?』

 『そ、アタシの母さん。アタシが生まれる前からここで酒場をやってんのさ』

 『セオドアだったかね、アタシはシェスカ、シェスカ・キャトリニア、この子の母親でしがない寂れた酒場の主人さ』


 酒場の女主人、シェスカはシェリーの母親だった。

 言われてみれば髪の色といい、話し方といい、実に親子共々似ている所ばかりだ。


 『しかし何でまたこんなしけた店に友達連れてきたのかねこの子は。他にいい店なんて街の中央に幾らでもあるだろうに』

 『他に落ち着いて話ができる店なんてここ以外知らないからね』

 『そうかい、まぁ好きにしな。酒ならそこの棚にあるから好きなの選んで構わないよ。アタシは奥で色々やる事があるからなんかあったら呼びな』

 『お代は?』

 『いらないよ。実の娘から金取ろうって程落ちぶれちゃいないさ』


 シェスカはそう言ってシェリーと俺のグラスを置くと、店の奥へと消えていった。

 シェリーはシェスカに言われた棚から二本の葡萄酒の瓶を取って栓を抜くと、お互いのグラスに注ぐ。


 「さてと…まさかアンタも闘技大会に出るとはね、とんでもない強敵がでてきたもんだよ全く』

 

 シェリーはグラスの葡萄酒を一気に口に流し込むと、口元を拭いながら話を始めた。


 「俺もなんでこうなったのか…、それはそうとシェリーさん、十二年前にもこの大会に出場したって聞いたんですが…」

 「ああ、確かに十二年前アタシが十五の時だね。ちょうどセオとおんなじくらいの頃にこの大会に出てたね」


 シェリーはグラスに葡萄酒を注ぎながら俺の問いかけに答え、再び葡萄酒を口にする。


 「アタシがこの大会に出る理由はね、別に優勝を狙ってるワケじゃないのさ」


 飲みかけの葡萄酒が揺れるグラスをテーブルに置くと、シェリーの双眸が真っ直ぐ俺を見据えている。

 俺はその眼差しに囚われたかの様に視線を逸らす事なくグラスに注がれた葡萄酒に口をつける。


 「復讐だとか仇討ち、とは違うんだけどね、アタシが闘技大会に出てる理由、それは父さんを殺した奴を倒す為なのさ」


 シェリーはグラスに残った葡萄酒を飲み干すと、再び葡萄酒を注ぎ、話を続けた。


 「十六年前、父さんは闘技大会に出場して…そこで死んだのさ。そしてその四年後の大会、準決勝で父さんを殺した奴と戦った。…結果は惨敗だった。アタシはボロボロにされて這いつくばってる時にそいつは言ったのさ、『その程度で親父の敵討ちのつもりか、まだ殺す程の価値も無い』ってね」


 シェリーのテーブルにグラスを置く手に力が入る。

 表情こそ普段と変わらぬ表情ではあったが、その双眸には断固たる決意が浮かんでおり、微かに歯軋りの音が聞こえていた。


 「なるほど。今回の大会にもその相手が?」

 「ああ、何の因果か一回戦から戦う事になる。アタシは父さんを超えたい、その為にアタシはこの大会に出場したんだ」

 「…シェリーさんさえ良ければその相手、どんな人物か教えて貰ってもいいですか?」

 「構わないけど…知ったところで相手すんのはアタシだよ?」

 「何か力になれるかも知れませんから」


 シェリーは敵討ちの相手について話し始める。

 シェリーの話す敵討ちの相手、その人物は獣人族の鷲人種であり、名をヴァーミエリ・イーグレットと言う。

 彼らの武器は鋭い嘴と大きな足から伸びる爪、そして何よりの特徴として大型鳥種の翼の様な腕による飛行能力だ。


 「そう言えばいましたね、グリオネール皇子と同じくらい大きな人。あの人がシェリーさんのお父さんの仇…」

 「ああ、正直な所アイツを倒すのにゃ、まずあの飛行能力をなんとかするしか無いんだけど…はっきり言って手立てについては何も思いついちゃいないんだ。何かいい案はないかい?」


 シェリーが真剣な面持ちでヴァーミエリに対する策は無いかと聞いてくるが、俺も自分自身、獣人種との戦いは初めてである為、いまいちこれと言った策が思いつかないが、獣人族は四肢獣種の魔物と似た部分が多いという点が引っかかっていた。有翼種の獣人も恐らく例外ではなく、こちらは四肢獣種ではなく鳥種と共通する部分が多いのだろう。

 四肢獣種は元の世界で言う哺乳類、鳥種ならば鳥類に当たる。ならば何かしらの弱点、あるいは苦手とするものが必ずある筈だ。


 「どうだい? …まぁ思いつかないならそれはそれで構わないさ」

 「…一つだけ、鳥種の様な翼空を飛ぶ相手に上手くやれるかはシェリーさん次第ですが…」


 元の世界でとある体験をした事を思い出した俺はシェリーにその事を耳打ちする。


 「なるほど、試してみる価値はありそうだね…。あとは本当に効果があるのかとアタシ次第ってことか…!」

 「そうなりますね。もし上手くいって効果があったならシェリーさんの戦局に持ち込めると思います」


 シェリーは既に空いていた二人のグラスに瓶に残っていた葡萄酒を注ぐ。


 「セオ、明日の試合しっかり観てな。アタシはヴァーミエリを倒して父さんを超えてみせるよ」

 「ええ、期待して観てますよ」


 シェリーとグラスを鳴らして一気に葡萄酒を飲み干し、席を立とうとすると丁度シェスカが店の奥から戻ってくる。


 『話は済んだのかい?』

 『ああ、母さん。明日、アタシは父さんが勝てなかった奴を倒してくるよ』

 『そうかい、まぁ精々死なない様にね。…血は争えないって奴かね、止めやしないけどアンタが死んだらアタシはあの人の墓にどんな顔して行きゃいいのかね、全く…』

 『アハハ、そん時ゃ一緒に埋めてバカ娘がそっちに行ったって断っといておくれよ。じゃ、明日生きてたらまた顔出すからさ』


 縁起でもない事を言いながらシェリーは母親シェスカの店を後にした。


 『セオドアといったね。猫人種ってのは刹那的な感情で生きる種族なんだけど、あの子の場合、十一の頃に芽生えた感情に十六年も囚われたまんまなのさ』


 残った俺の肩にシェスカが手を置く。


 『一つ頼み事をしてもいいかい?』

 『シェリーさんの戦いを見届けて欲しい、そんな所ですね?』

 『ああ、娘が、シェリスが旦那を倒した男に勝とうが負けようが、…生きようが死のうがしっかり見届けておくれ。旦那があの娘に一体何を残したのか、…アタシにはそれを知っておく義務がある筈だから…。頼んだよ』


 俺の肩に置かれた手、そしてシェスカの声は言葉を重ねるにつれて震えが増すのが分かった。


 『ええ、確かに任されました』


 俺は彼女の方を振り向かずにそう答え、酒場を後にした。


 ーーー


 翌日、夕刻より始まるシェリーの試合の前に大闘技場に到着した俺は仲間達に先に観戦席に向かわせて、シェリーのいる控え室に行っていた。


 『シェリス選手、間も無く試合が始まりますので入場口の方へお願いします』

 「さて、いよいよだねぇ…十二年前の借り、返させて貰うとするか…!」


 シェリーは準備運動と言わんばかりに足を伸ばしながらそう呟く。


 「シェリーさん、頑張って」

 「ああ、奴の羽、毟りとってやるさ」


 シェリーは腰に付けていた鉤爪を両手にして、軽く跳躍しながら答えると入場口の扉を前に横顔を見せる。

 その瞬間、魔導器を通して実況役を務めるティリスの声が響きだした。


 『さぁご来場の皆様!大変長らくお待たせ致しました!これより本日の最終戦、大闘技大会、第一回戦の第四試合を開始致します!』


 ティリスのアナウンスが観客席に向かう途中、スピーカーを通して聞こえてくる。

 

 『東ゲートからやって来るのは皆さんご存知、大会常連っ!大空を支配する巨影、ヴァーミエリ・イーグレット選手の入場だぁーッ!そして西ゲートからは真紅の爪術士、シェリス・キャトリニア選手の入場だぁーッ!』


 二人の入場が済んだらしい。間も無く試合が始まろうとしている所で俺は漸く観客席に到着した。


 『さぁこの試合、勝敗を左右するポイントはズバリ、シェリス選手がヴァーミエリ選手の飛行能力にどう対抗していくのかッ!…既に二人の選手の入場は済み、両者睨み合っておりますッ!』


 ティリスの実況が切れると同時に観客席のフェンスの前が一瞬光り、不可視の壁によってアリーナは完全に隔離される。いよいよ試合開始だ。


 ーーー


 『試合開始ッ!』


 審判を務めるラヘアの合図に合わせてティリスが試合開始を観客席に伝える。

 アリーナで身構えた二人はまだ睨み合ったまま動かない。


 『お前は確かあの時の…十二年前、私に為す術無く負けた娘か』

 『…そうだ。あれからアタシはアンタに勝つために十二年間、鍛え直して戻ってきたんだ』


 構えた状態のまま、二人は会話を始める。


 『ふむ、確か十六年前に私が殺したお前の父親、ロイ・キャトリニアの仇討ちか?』

 『父さんがアンタに殺されたってのはただのきっかけさ。戦士が正々堂々とした戦いの中で死ぬなんて寧ろ本望じゃないか。アタシは純粋にアンタに勝って父さんを越えた事を証明したい、それだけさ』

 『結構。なるほど、当時の様な慢心や自惚れ、は無い様だ』


 ヴァーミエリが両腕を大きく羽ばたくとその風圧で砂煙が激しく舞う。

 そしてその羽ばたきが行われる度にヴァーミエリの巨体が宙に浮かぶ。


 『さぁヴァーミエリ選手、早速その飛行能力を披露しシェリス選手を上空から見下ろしているゥッ!対するシェリス選手はここから繰り出されるヴァーミエリ選手の攻撃をどう捌くのかッ!』


 悠然と羽ばたきながらヴァーミエリはシェリーを見下ろしており、なおも上昇を続けて既に最上階の観客席の高さにまで達している。対するシェリーはと言うと、とても攻撃の届く距離ではないにも関わらず、右手の鉤爪を今にも突き出さんと振りかぶっており、鉤爪を微かに赤く輝かせていた。


 『む、魔導器の鉤…!』


 シェリーの鉤爪にヴァーミエリが気付くがその瞬間、シェリーは振りかぶった右腕を真っ直ぐにヴァーミエリ目掛けて突き出した。

 突き出された鉤爪の光が輝きを炎へと変えると、ヴァーミエリに目掛けて真紅の火球を撃ち出す。

 ヴァーミエリは飛んできた火球を難なく避けるが、鉤爪から繰り出された炎による遠隔攻撃に対して僅かに面食らっていた。


 『なんと先制攻撃はシェリス選手からっ!これは魔術でしょうか、放たれた火球は躱されてしまいましたがっ、ヴァーミエリ選手、これでは安心して上空に逃げることは出来ませんッ!』


 炎を躱したヴァーミエリは様子見は無駄と判断したのか、再び上昇すると両脚の爪を光らせてシェリーを狙い澄ます。

 シェリーもヴァーミエリの次に出る行動に備え、両手の鉤爪で迎撃の体勢をとっていた。


 『まずは一合…!』


 ヴァーミエリはそう呟くと体勢を一気に傾けて真下に頭を向ける。

 両腕の翼を一掻きすると、その巨体は途轍もない速度でシェリー目掛けて急降下を始めた。


 『鷲人種のパワーは知ってるよ…!まともにやり合うつもりはさらさらないさっ!』


 真っ直ぐにシェリー目掛けて急降下するヴァーミエリに対してシェリーは両腕の鉤爪から火球を立て続けに放つ。

 ヴァーミエリは火球が迫るのを認めると、急降下する自身の体を錐揉みさせて火球を直撃寸前で躱す。


 『その速度…ここまで引きつけたなら避けられやしないよっ!喰らえっ!』


 シェリーは紅く輝く鉤爪を上空に向かって薙ぎ払う。

 鉤爪の軌跡からは真紅の火炎が拡がり、突っ込んで来るヴァーミエリを呑み込まんと激しくうねる。


 『ふん…見くびられたものだ…』

 『シェリス選手、鉤爪から出る真っ赤な炎を操り壁を作るがヴァーミエリ選手は全く怯む事なく突っ切るつもりだッ!』


 ヴァーミエリは目の前を火炎に塞がれるも大きく速度を落とす事なく、翼を顔の前に交差させて炎の壁に突っ込んだ。


 『勿論このくらいで止まるなんざ思っちゃいないよ。でもほんの少し、これだけ速度が落ちれば十分さ』


 シェリーは身体を低く身構えると、炎の壁を突っ切ろうとするヴァーミエリを待ち構えていた。

 その僅かに遅れてヴァーミエリが腕を交差させたまま炎の壁を突き抜ける。

 身を包んでいた炎を払い、ヴァーミエリの降下する軌跡の残り火が消えていく。

 交差させた翼を再びはためかせ、巨大な足の爪を構えるが、そこにシェリーの姿は無かった。


 『いないだと…!?…今の炎の壁は目眩しかっ!』


 突如、忽然と姿を消したシェリーにヴァーミエリは驚き、辺りを見回すがやはりシェリーは見当たらない。


 『今更気が付いてももう遅いっ!』


 シェリーの声がヴァーミエリの上から聞こえてくる。

 声が聞こえると同時にヴァーミエリは真上を向くと、そこには真紅の輝きを纏わせた鉤爪を振りかぶったシェリーがヴァーミエリ目掛けて飛びかかっていた。

 顔だけはシェリーの姿を発見してそちらを見ていたが、上空から降下した勢いのまま蹴りつける体勢に入っていたヴァーミエリの身体は既に伸びきっており、反撃も回避も既に間に合わない。

 シェリーの振りかぶった紅く輝く鉤爪が炎を纏わせてヴァーミエリの胸元に迫る。


 『うおおぉぁぁっ!』

 『シェリス選手の鉤爪がヴァーミエリ選手の胸を直撃ィーッ!どうやら先程の炎の壁はただの目眩しだった様ですッ!一瞬ヴァーミエリ選手が見失ったシェリス選手が今度は空中から逆にヴァーミエリ選手に襲いかかるッ!斬撃で負った傷を更に炎で灼かれたヴァーミエリ選手、これは手痛い一撃だァーッ!』


 真紅の火炎に包まれた鉤爪がヴァーミエリの胸を灼きながら引き裂く。

 身体を捻って致命傷こそ避けたものの、シェリーの鉤爪による一撃を食らったヴァーミエリは吹き飛び、鉤爪から噴き出た炎に斬られた傷口を灼かれてのたうちまわっていた。


 『…立ちな。鷲人種の戦士はまだまだこんなモンで参りましたなんて言やしないだろう?』


 胸を灼かれたヴァーミエリは火を消し止めるとゆっくりと立ち上がる。

 痛々しい胸の傷跡は痛々しく真っ赤に灼け爛れており、かなりの深手である事は間違いない。


 『…無論、どうやら十二年前とは別人の様だ。当時はまだ狂戦士の様にひたすら向かってくるだけだったが、なるほどどうして魔導器を持ったからと言うだけではないということか』


 ヴァーミエリは身体を覆う羽毛に付着した砂埃を払うと懐から魔石の欠片を取り出して翼状の手の中に握り込む。

 ヴァーミエリが取り出した魔石、それは獣人族の奥の手である人獣化のトリガーとなる魔光珠だった


 『よかろう、貴様もまた獣人族の戦士として認めよう!シェリス・キャトリニア、存分に死合おうぞ!』

 『ああっと!ヴァーミエリ選手が握っているのは魔光珠だッ!我々獣人族の奥の手を早々に投入ッ、劣勢と判断したのかヴァーミエリ選手、一気に形勢を逆転させるつもりでしょうかッ!』


 ヴァーミエリが握り込んだ魔石が光を放つとヴァーミエリの骨格が変形し、全身の羽毛が伸び始める。

 人に近い姿をしていたヴァーミエリは大きな鷲の姿に変わると、翼を一掻きして飛行を始め、その鋭い眼光でシェリーを睨む。


 『ゆくぞ!鷲人種の爪術、とくと味わうがいいっ!』


 人獣化したヴァーミエリの大鷲の咆哮が結界の中を震わせる。

 シェリーはその咆哮に臆する事なく、静かに鉤爪を構えていた。

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