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-転生奇譚- リンカネーションストーリー  作者: 彼岸花
第八章:咆哮響くガルムス大陸
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第九十六話:S級超えの実力

 エリウッドの屋敷で一夜を過ごし、俺達は次の目的地、帝都ガルマリアへの旅に出る準備を進めていた。


 『戦士長さん、いいのかいタダでこんなに沢山貰っちまって?』

 『ああ、己れの友人を案内してくれたのだ。こんなもので喜んで貰えるのなら何よりだ』

 『保存については私が氷属性の魔術で凍らせますから安心してください』

 『それに闘技大会が終わったら今度は俺が責任持ってプラットンまで送るから安心してくれ』


 タップは結局ガルマリアまで同行する事になり、闘技大会が終わったらすぐに俺が飛翔(フライハイ)の魔術でプラットンの街まで送り届ける事で納得してくれた。

 最初は持ち帰ったチーズをどうやってプラットンまで持ち帰るか頭を抱えていたが、保存の方法と移動時間についての問題が解決し、しかも俺達をブルダーまで案内してくれた礼という事でエリウッドからタダで大量のチーズを受け取り上機嫌だった。


 「…ところでエリウッド、それに奥さんも、その格好は…?」

 

 フォルクがエリウッドとヴァイダが旅装でいる事に気付き、その事について尋ねると、エリウッドは角を撫でながらフォルクに返答し始める。


 「昨日お前達がガルマリアの闘技大会を観に行くと聞いて俺もガルマリアへ行くと妻に話したらついて行くと言い出してな…」

 『何を話してるかは知らないけど、アタシも元戦士だからね、ダンナが闘技大会を観に行くってんならアタシもついてくよ!』


 フォルクはしっかりと言葉は理解していないがヴァイダの表情や仕草を見て、凡そ何を言っているのか察したらしい。


 『そうそう、昨日ダンナが持って帰ってきた毛で夜中に御守りを作ったんだ、せっかくだから皆着けておくれよ』


 そう言って取り出したヴァイダが御守りは数本の長い金銀の毛を縒り合わせて出来た糸で編んだミサンガの様なもので、自身と夫の分を合わせて全員分が用意されていた。

 ヴァイダから獅子王の毛のミサンガを受け取り身につけると何か体の奥が熱くなる感覚を覚える。


 「不思議な御守りですわね。勇気が湧くというか…」

 「ええ、心なしか力が溢れてくる様な」

 「魔素の巡りも良くなってるような気もするわね」


 ミサンガを身につけ、皆が口々にその効果を話す。勿論、俺もその感覚を実感していた。

 元はと言えば傲慢の獅子も黒龍神であるメルティナの魔力から生まれた魔物であり、永きに渡り魔力を蓄えてきた。

 そのごく僅かな一部ではあるが間接的に黒龍神からの力を得ていると言う事だろう。


 『そう言えば、エリウッドさんもヴァイダさんも、村を離れても大丈夫なんですか?』


 皆が傲慢の獅子のミサンガを身につけて騒ぐ中、クリスが唐突に二人に尋ねる。


 『問題ない。己れと妻がいなくとも村の戦士達は十分に強い』

 『それに村の周りにゃ甲冑犀(アーマーライノ)の群れがいるからね、魔物達も村に近づく前にあいつらに追い払われちまうさ』


 クリスの問いに夫婦は全く心配ないと言わんばかりに胸を張る。

 確かに村を見回しても老若男女問わず、全員が屈強な身体つきをしており、少なくとも簡単に倒れそうには見えない。


 「じゃあ出発しましょうか!」


 大きく息を吸い込み元気良く号令をかけ、ガルマリアへの九人の旅が始まった。


 ーーー


 ブルダーの村を離れてから二日が経つ。

 俺達は乾季の為に枯れた川沿いの街道を進んでおり、ガルマリアまでの道程の約四割を超えた辺りを進んでいた。

 道中はやや急ぎ足であり、のんびりと景色を楽しむ余裕はないが、俺とクリス、エリウッドの三人で獣人語を話せない四人に獣人語を教えながら旅を続けていた。

 元々は俺とクリスの二人が通訳をしながら旅を続ければいいと考えていたが、タップやヴァイダと言った獣人族の友人ができた事もあり、自分達も話せた方がいいだろうと言う考えに変わったようだ。


 『ヴァイダさんも戦えるんですね』

 『勿論さ、昔はダンナより強かったくらいだよ。今は家庭に入って少し鈍っちまってるかも知れないけどね』

 『己れがアトラシアに行っている間は妻が戦士長を務めていた。少なくとも足手まといにはならんはずだ』


 ヴァイダの得物はエリウッドとは異なり、斧ではなくやや小さめの鉄槌だ。とは言え、決して軽くはなく、その辺の人族の冒険者程度ならば両手でどうにか振り回せる程であり、少なくともヴァイダはそれを片手に軽々と肩に担いでいる。

 話を聞く限りではどうやら肉食の動物に似た獣人族は大抵鉤爪や自前の爪による爪術を扱うようだが、草食動物に似た獣人族は人族の使う武器を扱うことが多いようだ。

 

 『この大陸の魔物との戦いは二人の方が慣れてるだろうし、参考にさせて貰おうかな』

 『お、少しは獣人語を話せる様になったみたいだね。純粋な実力だけ言えばダンナやアタシよりアンタ達のが上だから厄介なのに出会ったらよろしく頼むよ!』

 『ええ、お任せくださいまし!』

 『善処します』

 『四肢獣種って結構タフなのよねぇ…』


 四人は早速少し覚えた獣人語でヴァイダと話している。

 俺もクリスも語学については習うより慣れろの考えであり、夜の野営中も俺とクリスがエリウッドとタップ、ヴァイダとの会話を通訳しながら聞かせ、積極的に会話に参加させる様な形で獣人語を教えていた。

 その為、四人共割とすんなりと覚えていき、簡単な会話はすぐにマスターしていた。


 そうしていると二匹の小型の四肢獣種が俺達の前に立ち塞がった。

 小型ながらも全身の毛を逆立てさせ、牙を剥き出しにしてこちらを威嚇している。

 

 『あんまり強そうじゃないですね』

 『油断しちゃいけないよ、こいつは針穴熊(ニードルバジャー)だ。この身体で百獣王(キング・ビースト)にだって襲いかかる魔物だ、気をつけな!』


 ヴァイダがそう言いながら手に持つ槌を針穴熊に振り下ろす。

 重みのある一撃が針穴熊の背中を捉え、地面に叩き伏せる。


 『よし、直撃した!』

 『いや、効いちゃいないよ!』


 直撃したと思って握り拳を作るが、ヴァイダが撃破を確信するにはまだ早いと言わんばかりに声をあげながら後ろに飛び退く。

 するともう一匹の針穴熊が飛び退くヴァイダ目掛けて鋭い爪を光らせながら飛びかかってくる。


 「させるかっ!」


 俺はヴァイダに飛びかかる針穴熊の背中に騎士剣を振り下ろす。


 「ギャッ!…グルルッ…ギャアーッ!


 確実に捉え、真っ二つにしたつもりだったが、針穴熊は剣圧に吹き飛ばされるだけに止まり、地面に落ちるとすぐに再び針の様に体毛を逆立てて鳴き声を上げて威嚇していた。


 「こいつの背中…思ったより硬い!」


 二匹とも背中に直撃を食らってはいるものの、全くダメージを負っているような素振りは見せておらず、むしろ攻撃を受けた事で一層敵意を剥き出しにして威嚇を続けている。


 小さな見た目に反してタフな針穴熊に対して、俺達は完全に戦闘態勢へと移行していた。

 それに合わせて針穴熊も俺達の周囲をチョロチョロと動き、狙いを絞らせない様に動き始める。


 「ウロチョロと鬱陶しいわね、だったら動きを止めてあげるわ!麻痺毒の風(パラライズウィンド)!」


 クローディアが闇魔術を発動させると、麻痺毒を含んだ黄金の風が周囲を吹き荒れる。

 針穴熊は麻痺毒の風から逃げられず毒を吸い込み身体を痙攣させていた。


 「動きさえ止めれば、ちょろいモンね」

 「クローディア、危ないっ!」


 魔術の毒で行動不能にしたと油断していたクローディア目掛けて針穴熊が飛びかかり、気付くのに遅れたクローディアは回避が間に合わず、鋭い爪による斬撃を右肩に受けてしまった。


 「くっ…麻痺毒が効かないなんてっ…」

 「クローディアさん、治療します!治療(キュア)!」

 「どうやら毒にも耐性を持ってるらしい、見かけによらず意外と強敵みたいだよ!」


 クリスが負傷したクローディアの治療にあたる。

 針穴熊は小型ながらも高い防御能力を持ち、また毒にも高い耐性を持っている事が分かり、一筋縄ではいかない相手だとフォルクが全員に注意を促す。


 『ヴァイダさん、攻撃して隙を作ってください!合わせます!動きを止めたらエリウッドさん、後は任せます!』

 『了解した!』

 『任せなっ!はああああっ!』


 ヴァイダが一気に間合いを詰め、槌を振り下ろすと針穴熊は横に大きく飛び退いて回避する。


 『ちっ、躱されたかっ!』

 「その着地の瞬間、隙だらけだっ!放電撃(エレキサンダー)!」


 針穴熊が回避をし、その着地に合わせて放電撃の閃光が針穴熊を貫く。

 針穴熊の背中を覆う毛皮の装甲は丈夫だが電撃に対してはその防御能力は発揮できず、身体を駆け巡る電気に動きが止まる。


 「ギャッ!」

 『捉えたぞ!ヌゥンッ!』


 電撃を喰らい怯んだ針穴熊の正中をエリウッドの大斧による斬り上げが捉える。

 顔面から胴体に掛けてエリウッドの大斧が針穴熊の身体に食い込み、斬られた針穴熊は刃から離れると真っ青な血を撒き散らしながら吹き飛んでいく。

 力無く地面に落ちた針穴熊はピクリとも動かず絶命していた。


 「ならばこちらも…!」

 「アリーシャさん、合わせますわ!フォルク、トドメは任せましたわよ!」

 「ああ、任せて!」


 アリーシャが飛び込み両手の剣で針穴熊を攻め立てる。

 針穴熊は丈夫な背中の毛皮でアリーシャの剣を受け続けており、ダメージこそ無いものの、完全に釘付けにされていた。

 しかしアリーシャもただ無闇に無駄な攻撃を続けている訳では無かった。


 「そろそろでしょうか、アンリエッタ様、宜しくお願いします」

 「任されましたわ!せえいっ!」


 アリーシャの猛攻に晒されて守りを固める針穴熊の上からアンリエッタが入れ替わり、空中から槍を突き立てる。

 しかしその切っ先は針穴熊ではなく地面に突き刺さっていた。


 「いきますわよ!暴風槍(ブラストスピア)!」


 アンリエッタが声をあげながら魔導器である槍に魔素を注ぐと、槍は切っ先から淡い緑の光を放ち、爆風を発生させる。

 槍が発生させた爆風は地面を吹き飛ばし、破片ごと巻き上げられた針穴熊は腹を晒して身体を浮かせていた。


 「フォルク、しっかり決めなさいな」

 「勿論、僕は狙撃手(スナイパー)、外しはしないよ…三ツ星(トライスター)!」


 フォルクが三本の矢を真上から無防備に落ちてくる針穴熊に向けて放つ。


 「ギャッ…!」


 針穴熊は回避を試みようと手足をばたつかせるが、空中に投げ出された身体が動く筈もなく、無情にも三本の矢は針穴熊の下顎、胸、腹の三箇所を一直線に貫いた。

 三つの急所を同時に貫かれた針穴熊はその場で力尽きたのか、地面に落下すると衝撃に備える様子もなく、力無く地面を跳ねる。


 『大したものだ、一流の冒険者達でも手を焼く針穴熊のつがいをあっさりと撃破するとはな』

 『そうだね、アタシらだって二匹の針穴熊は簡単に倒せやしないのに、この子ら直ぐに弱点を見抜いて仕留めちまった』

 「シャアアアッ!」


 二匹の針穴熊を撃破し、俺達に感心している二人の背後から新手の針穴熊が襲いかかる。


 『エリウッド、ヴァイダ!後ろだっ!』


 新手の針穴熊の襲撃に気付いたフォルクの声に気付いたエリウッドがヴァイダを突き飛ばし、針穴熊の攻撃を引き受けようと身構える。


 『ぬ…!』

 「邪歪力(イビルフォース)…!流石にやられたままじゃいられないわよね…!」


 針穴熊がエリウッドに飛びかかる寸前、クローディアの闇魔術によって空中で動きを止められる。

 クローディアは左手で負傷した右肩を抑えながら右手を伸ばしている。


 「ギャ…ギャ…」

 「私だってこの一年で力をつけたんだからっ!」


 空中で動きを止められ苦しむ針穴熊の体が軋む。

 クローディアが伸ばした右手を握りしめると同時に針穴熊の四肢が鈍い音をあげながらあらぬ方向に曲がりくねる。

 針穴熊は不可思議な力に身体を破壊されながら青い血を吐き、最期は空中で押し潰されてしまう。

 クローディアの闇魔術から解放された針穴熊は地面に落ちると全く動く事は無く、全身が氷嚢の様になったまま絶命していた。


 「ちょっとやりすぎたかしら?」

 「クローディアさん、闇魔術は他の魔術に比べて魔素の消費が多いんですから…!」


 クリスか心配しながらクローディアに駆け寄るとクローディアは力が抜けた様に膝を付く。強力な闇魔術を放った事による魔素欠乏だ。


 「ほら!そんな強力な闇魔術を無闇に撃たないでください!私や兄様がいなかったらどうするんですか!」

 「ごめんごめん、ちょっとムキになっちゃった。次からは気をつけるから許してクリス?」


 クリスがクローディアの手を取り掌を合わせる。

 クローディアは謝りながらクリスから共魔の加護の力で魔素を分けてもらうと再び立ち上がり、膝に付着した砂を払う。


 「油断しているばかりと思っていたがお前も強力な切り札を持っていたか」

 「ま、見ての通り一人だけだと外したり仕留めきれなきゃ終わりの博打魔術だけどね」

 「せめてもう少し魔素総量を増やしてくれないと…。毎回私や兄様がいるとは限らないんですから、ここぞと言う時に備えてもっと軽い魔術で立ち回る様にして下さいっ!」


 クリスに怒られながらクローディアは舌を出す。

 彼女の最大の魔術である邪歪力、不可視の力で相手を拘束し、強力な力で押し潰す魔術だが強力さ故に他の上級闇魔術に比べると倍以上の魔素を消費するらしい。

 クリスでさえも魔術の原理が解らず習得できていない為、彼女だけが使える切り札であり、その代償として威力の制御は効かず、一発撃てば即魔素欠乏寸前に陥ると言う諸刃の剣である。


 「とりあえず私以外全員無傷なんだし、結果オーライでしょ? それに闇魔術って中級以下は殆ど直接攻撃できる魔術がないんだから仕方ないじゃない。さ、先急ぎましょ?」

 「あっ、話は終わってませんよクローディアさん!」


 そう言ってクリスから逃れるように先に進むクローディア。

 それを追うクリスを見ながら俺達は苦笑いを浮かべ、更にその後を追いかける。


 『ア、アンタらホントに強かったんだなっ…!オイラずっと隠れて見てたけどまだ震えが止まんないよ』

 『言っただろ? 全員S級以上だってさ。クリスもまだ全然戦ってないし、俺達だってまだまだ本気でもないさ。…まぁ一人だけ手の内晒したのはいるけども』


 気付かぬ内にタップは隠れていたらしく、戦闘が終わると同時にいつの間にか戻ってきて声を上ずらせたまま話しかけてきた。

 かく言う俺もガルムス大陸に到着してから初めての戦闘を終え、安堵していた。

 タップは気付いていないが、幾らそれなりに実力を積んできたとは言え、初めて訪れる地での初めて出遭う魔物との戦闘はわからない事が多い為、少しばかりの不安がある

 だが、その不安も杞憂に終わった為、俺も肩の力を緩めていた。

 針穴熊を撃破した俺達は再びガルマリアへの旅路を急ぐ事にした。


 ーーー


 更に二日が経ち、俺達はガルマリアの南に広がる礫砂漠地帯を進む。

 タップが用を足したいと言い、街道から少し離れた場所へ行った為、待っているとタップが慌てて戻ってくる。

 タップの背後を見ると盛り上がった砂がタップを呑み込まんと追いかけていた。


 『助けてくれー!ベ、ベ、小巨獣(ベビーモス)だああぁーー!』


 息も絶え絶えに逃げるタップが叫ぶ。

 必死に逃げてはいるが、砂の津波はもうすぐ後ろまで迫っており、今にもタップは砂の中へと呑み込まれそうになっている。


 「兄様、タップさんがっ!」

 「ああ、でも少しばかりでかいな。クリス、足止め頼む」

 「了解しました。…ー風雪舞う山より出でし女神よ かの者を安らかなる眠りに誘う抱擁を与えよー」


 クリスが大魔術の詠唱に入ると同時にタップを追う砂の津波の中から巨大な口と前脚が姿を現わす。

 その姿はまるで小型の鯨から手足が生えた様な姿で巨大なカエルのようにも見える。


 『わああああ!食われるっ!助けてええええ!』

 「…冷厳なる女神の抱擁エンブレイス・オブ・スカジ!」


 クリスの大魔術が発動すると同時にタップに喰らい付こうとする小巨獣の周囲の景色が凄じい温度差によって生じた陽炎で歪む。

 尻餅をついて目を瞑っていたタップが目を開くと目の前には周囲の砂ごと氷漬けになった小巨獣が動きを止めていた。

 しかし大き過ぎる故か、クリスの大魔術を以ってしても小巨獣は身体の芯から凍りついてはいないらしく、分厚い氷の中で藻搔いているのか、既に身体を覆う氷に亀裂が入り、軋む音が鳴り始めている。


 『す…凄え…』

 「コイツなら五割増しぐらいでいいか…? よし…はあああっ!」


 握り拳を作り力を込めると手の甲に魔力で描かれた魔方陣が浮かびあがる。

 魔方陣が発生しきると同時に心臓の鼓動が速くなり、全身に力が湧き上がる。

 俺は背中の騎士剣を抜き、その剣に魔素を注ぎ込みながら氷漬けとなった小巨獣目掛けて真っ直ぐに走り始める。


 『タップ、まだヤツは死んじゃいない!動くなよ!』


 俺はタップに動かない様にと叫ぶと、地面を力一杯踏み切り、大きく跳躍する。

 

 「属性斬撃(エレメンタルスレイ)旋風斬(ワールウィンド)!」


 魔素を注ぎ込み魔力を帯びた騎士剣の刀身が緑色に発光する。

 跳躍したまま振り上げた剣から魔力を解放すると、刀身から激しい旋風が巻き起こる。

 剣から発生する旋風が周囲の砂を巻き上げ、細長い砂嵐となり、剣を振り下ろすとその軌跡を辿る様に砂嵐もまた小巨獣に向けてしなりながら倒れ込んだ。

 砂嵐となった旋風は斬撃を纏い、凍てついた小巨獣を抉り斬りながら凄じい勢いで頭から斬り裂いていく。

 さながら電気鋸に斬られたかの様に小巨獣は正中から青い血飛沫を上げながら綺麗に真っ二つになると、中心から裂けるように倒れていった。


 『んん、上々。タップ、ケガはないか?』

 『…オ、オイラどっちが化物かわからなくなってきたぞ…?』


 タップは小巨獣に襲われた事か、俺とクリスの攻撃に驚いているのか、小刻みに震えながら口をパクパクと開閉させている。


 『はは…コイツはたまげた…小巨獣を真っ二つとはね…』

 『うむ…村の戦士達が総出で多くの犠牲を払いながら討伐する魔物だが…。よもや十四の子供がたった二人で討つとはな…』


 真っ二つになった小巨獣を見ながらエリウッドとヴァイダが言葉を漏らしながら立ち尽くす。

 想定外の結果に二人は驚いているのだろう。


 「ふう…っとと、流石に疲れるなっと…」


 握っていた手から剣を取り落とし、再び拾いあげて背中の鞘に戻す。

 既に手の甲の魔方陣も無くなっており、指を開閉させてみるがしっかりと力は入らない。


 「…これでもまだまだか…難しいな」


 そんな事を呟いて、尻餅をついたままのタップを起こし、街道で待っている皆と合流する。


 「さて、ガルマリアも見えてきたし先を急ごう」


 剣から発生した旋風に巻き上げられた砂がまだ僅かに舞っているものの、目を凝らせば遠目に巨大な岩石の塊の様なものを背景にした大きな都市があるのが目に映る。

 その都市に向けて俺達は再び歩き始めていた。

 

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