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Une fine couche.

ーあらすじー

パン屋からボロ布を集めながらアンドレとドミニクに街を案内してもらうケイジ。

案内を終え一緒にいる理由がなくなってしまったケイジだったが手伝いを理由に共にレコレ修道院に向かうのだった。

「早くこっちにもパンを寄越せ!!」


レコレ修道院に着いた所で、悲痛な叫びが耳に入る。

出発する時には閑散としていた道が人でごった返しており、皆、必死なのか罵詈雑言が飛び交っている。


「泣いても叫んでもパンは焼けやしないよ!こっちも死ぬ気でやってんだ!黙って待ってな!!」


見ると一番最初に寄ったパン屋に飢えた市民が押し寄せているようで、女店主が同じくらいの熱量で叫んでいる。


あれでは逆効果ではなかろうか。


「ノアさん、荷物はそこの扉の脇に置いてください。僕らはちょっと止めに入ってきますので。」


二人は抱えていた荷物を扉近くの古ぼけた木箱の脇に降ろすと、暴動寸前のパン屋の中へと飛び込んでいった。


手持ち無沙汰になってしまった俺が周りをキョロキョロ見回すと徐々に修道院にも人が集まってきているように見える。


ここでも暴動が起きるんじゃないか、と身構えていると一人の老人がスッと手を差し出してくる。


「お恵みの時間はまだですかのぉ?」


その手は何をしたらそうなるのか、ボロボロに擦り切れており、皮膚と骨の間にはいくらの隙間も無いのではないかとさえ思ってしまう。


もしやと思って、ボロ布の中を確認すると中には麻袋が隠されており、きつく縛られた紐を解いていくと中からは、細かい切れ端や商品として店先に置くには形も色も大きさも悪い不揃いなパンが詰められている。


俺は慌てて修道院の扉を叩く。


「すいません!昨日お世話になりました、ノアです!」


小窓がスライドし、俺の顔を見ると扉を開けて門番を務める僧侶が出てきてくれる。


「おや、アンドレとドミニクはどうした?もう施しの時間のはずだが。」


やはり俺達が集めて回っていたのは『配給用の黒パン』だったらしい。

堂々と集めて回ればそこのパン屋のように暴動が起きるリスクがあるから敢えて馬車は使わず徒歩で集めていうことだろう。


「パン屋で騒ぎが起こってて、その仲裁に。俺の方で何か手伝えることはありませんか?」


彼は目を見開き、パン屋の方に目を向ける。

事態を理解できたようで、ため息をついた。


「大体ウチには100人前後配給を受け取りに来る人がいる。俺が列の整理を行うから一袋を残して、他を均等に分けてもらっていいか?目安は一握りだ。」


それを言うと彼は目の前に集まる人々をきっちり整理させていく。

彼の人望が厚いのか、レコレ修道院の信頼からなせる技か。

あるいは騒ぐだけの気力を失ってる人たちが集まっているのかもしれない。


そんな事を考えながら、俺は一握りのパンを人々に分け与えていく。



あまりにも、重たい。



パンそのものは吹けば飛ぶほどの重さかもしれないが、俺の一握りにこの人達の明日がかかっているかもしれないと思うと、分け隔てなくやらねば、しっかりやらねばと気持ちが入ってしまう。


俺が次のパンを取り出そうとした時、肩をポンと叩かれる。

驚いて勢いよく振り返ると、そこにはアンドレが立っている。


「ノアさん、笑顔笑顔!」


ドミニクがされていたようにほっぺをムニムニとこねられてしまう。


「あ、あのっ、やめて、やめてくらひゃい!」


間抜けな抗議をすると、アンドレはすぐに手を離してくれた。

悪びれる様子は一切ない。


「お手伝い感謝します。ですが、その顔はいただけない。迷える子羊達を、導く者の顔ではありませんよ?」


その言葉にハッとして列に並ぶ人々を見る。

俺は、使命感ばかりが先行して、明日への不安を抱えている皆を安心させようという気持ちが抜けていたことに気づく。


「このまま最後まで頑張っちゃいましょう!お願いできますか?」


頷いて肯定の意思を示すと、アンドレと俺の二列体制で配給を進める。

ドミニクも門番の僧侶と共に整列を行い、長蛇の列は淀みなく進んでいった。



「ありがとうございます、ありがとうございます。」


涙を流して喜ぶお婆さんに手渡したところで、全ての人に渡し終えた。


「お疲れさまでした、ノアさん。成り行きとはいえ、ここまで手伝わせてしまい、本当に申し訳ない。」


深々と頭を下げるアンドレの生真面目さに、なんとなく照れくさくなってしまい頭をかいた。


「いや、元々、何か恩返ししたかったので。包帯の件もありましたし、早めに役に立てて良かった。」


「そう言って頂けるとこちらも肩の荷が下りる思いです。」


アンドレはそういうとまた柔和な笑みを浮かべる。

そんな話をしていると、ドミニクが最後に残った一袋を抱える。

それに気づいた彼は、俺に問いかけてくる。


「最後に、もう一仕事だけ手伝っていきませんか?」


「もう一仕事……ですか?」


一向に構わないが、せめて詳細は知りたいと思いそのまま疑問を口にする。


「はい。一番、大事な仕事です。」


そこで一度言葉を切ると、彼は背を向けて少し離れると、両手を広げながら振り返り恥ずかしげもなくそれを口にした。


「この国の未来がかかった仕事です。」

次回投稿 4/25 19時〜(予約済)


ーーー

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