表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/22

La préparation prévient les malheurs.

ーあらすじー

ジャンを見送ったケイジとアンドレ。

修道院でアンドレに治療してもらったケイジは街を案内してもらう約束を取り付けた。


「帰り道は大丈夫そうですか?」


見送りに出てきてくれたアンドレの顔には、心配の色が差してみえた。


「覚えてるから平気です。あそこの広場に覚えがあるので。」


話しながら左側にチラリと目をやると、見覚えのある馬車がひしめき合う広場があった。


「良かった。最近は本当に殺気立ってますから、くれぐれも気をつけてくださいね!では、また明日。神のご加護を。」


優雅な仕草で俺の為に祈ってくれるその姿に温かい物を感じる。

ジャンに、アンドレ。

腐った人達だけじゃないことが分かっただけ、怪我をした甲斐もあったかな、なんて思いながら帰路についた。



部屋に戻り、倒れ込むようにしてベッドに飛び込んだ。

枕に顔を埋め、麻と藁の香ばしい匂いに包まれつつ、今後の事を考える。


あまりにも旗色が悪い。

現状考えられるルートを並べてみても絶望的だ。


1つ目『時を止めて宮殿内部に潜入する。』


広場でも考えたが、これは論外だ。


ただでさえ厳重な警備の目を掻い潜らなければいけないのに、肝心の『権能』にはクールタイムが存在することまで分かった。


そんな物に頼って、仮に上手く潜入できたとして、今度はあの広い宮殿の敷地内から、マリーアントワネットを探さなければならない。


恐らくは、離宮にいると思うが、そこは宮殿敷地の最奥だし、そもそも離宮そのものが広い。

その上、王妃様はよくパリに抜け出していたなんて話もある。


苦労して辿り着いて、結局見つけられませんでしたでは話にならない。


――それに。


寝返りをうち、包帯の巻かれた手を煤けた天井に向ける。

硬いリネンの感触に、踏まれたあの瞬間を思い出してまたズクリと疼く気がした。


もう二度と痛いのは、ゴメンだ。



2つ目『ジャンに取り次いでもらって堂々と侵入』


これは可能性があるように思えるが、ジャンとは会ったばかり。

信用してもらうのは難しいだろう。


そもそも王室に納める家具職人だからといって、商売的な伝手はあっても個人的なお願いを聞いてもらえる可能性は極めて低い。


仮に取り次いでもらえたとして、王妃であるマリーアントワネットが『平民のノア』と一体何を話してくれるというのか。


どちらにしても夢物語の域を出ない。

思わず音がなるほどに歯噛みしてしまう。


急がなければ。


今のヴェルサイユは、パンパンに膨らませた風船みたいなもの。

有名なあの誤解に満ちた『記事』が出回ってしまえば、破裂するのは時間の問題だ。


まずは『交友関係を広げる』

選択肢を増やし、王妃への到達可能性を1%でも高めないと。


アンドレから広げる手段と、本人の人脈の両方を探ってみる必要がある。


明日の案内の中では、そこを念頭に置いて行動する必要があるなと気を引き締める。


その後も、どこを案内してもらうか、何を聞くかを考えている内に、次第に日は落ちていった。



「おはようございます、ノアさん。」


アンドレは人懐こそうな笑みを浮かべながら恭しくお辞儀をしてくれる。

その隣には、随分と大柄な修道士がムスッとした顔のままこちらを睨んでいる。

あまりの圧に面食らっていると、その様子にアンドレは少し吹き出しながら紹介してくれる。


「彼はドミニクって言います。私の先輩で、今日の同行者になります。」


ドミニクと呼ばれた彼は、特に口を開かないまま軽く会釈してくれる。


「あの、もしかしてドミニクさん……俺がついていくの、嫌だったりします?」


ドミニクは口を開かないまま、ブンブンと頭を振るう。

その様子にアンドレがまた吹き出した。


「大丈夫ですよ、彼、口下手なので。怒って見えるかもしれませんが、元々こういう顔なんです。」


そう言ってアンドレは俺に背を向け、ドミニクの両の頬を持ち上げる。


「だからいつも言ってるじゃないですか、先輩!この顔じゃ、皆が怖がっちゃいますって!」


持ち上げた頬をムニュムニュと餅のように捏ねるがその表情はやはり変わらない。


諦めたのかアンドレはため息を1つ吐いて、手を離した。

ドミニクは笑うでも泣くでもなく、頬を擦っている。


無表情でも痛いものは痛いらしい。


「二人は随分仲が良いんですね。ところで、皆が怖がるって言うのは?」


ハッとした顔をしたアンドレが俺の方に向き直り、誤魔化すように咳払いする。


「今日の目的は人が沢山絡みまして……。この辺の通りを案内しながら話しましょうか。」


アンドレが先導して歩き出すと、ドミニクは俺に前を歩くよう促してくる。


怪しまれてるわけではなさそうだが、念の為の監視と言ったところだろうか。


特にやましいことがあるわけではないので、促されるままに俺も歩き出した。


「では、近くのパン屋から向かいましょう。受け取るものがありますから。」


次回投稿 4/13 19時〜(予約済)


ーーー

評価・ブックマーク等で応援して貰えるとモチベになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ