Ceux avec qui j'ai des liens sont faciles à sauver.
ーあらすじー
情報を求めて街を彷徨ったケイジを待っていたのは衛兵による理不尽な暴力であった。
命の危機を体感した彼は絶望しながらも通りを足早に抜けていく。
通りを抜けた先、左右に開けた場所に出たところで、痛みに耐えきれなくなった俺は壁に凭れ掛かる。
そのまま力なく腰を落とした。
ザラザラとした壁の感触が服越しに伝ってくるのが、なんとなく生きていることを実感させる。
通行人が座り込んだ俺を訝しむような目で見るが、腫れ上がった手が目に入ると状況が分かるのかサッと目を離し立ち去っていく。
脈動するように痛む手に表情が歪む。
「大丈夫かい?」
声をかけられて顔を上げると、心配そうに見下ろす老人の顔がそこにあった。
「ずいぶん酷い怪我だね。まるでハンマーで思い切り叩かれたかのようだ。」
俺は思わず先程の衛兵とのやり取りを思い出し、訝しんでしまう。
「……何か、御用でしょうか。」
思わず声が上擦る。
みっともないと思いながらも、吐いた言葉は飲み込めない。
「可哀想に。」
その言葉の源泉は慈愛か、憐れみか。
それとも共感なのか。
判別がつかずにいると、怪我をしていない方の手を取られ引っ張り起こされる。
老人とは思えないほどの力強さに間抜けな顔を晒してしまう。
「そのままにしておくと良くないからね。治療を受けるなら一番近いのはサン・ルイ教会だが……。」
そう言った老人の目線は俺の手に向けられていたが、何処か遠くを見ているようにも見えた。
「衛兵が巡回してる。中にはたちの悪い連中もいるからね。」
その言葉にまた同じような目に遭わされるのを想像してしまい、歯がカチカチと鳴り出す。
卑弥呼の時のように身構えて受けた傷と、理不尽に浴びせられた暴力にここまで大きな差があることは全く予想できなかった。
「レコレの方に行こう。少し遠いが、あそこは腕も確かだし、信頼できる。ついてきなさい。」
老人に手を引かれるままに、歩き出す。
抵抗しようかとも思ったが、彼の強引な温かさがどうにも心地よくそのまま手を引かれることにした。
◆
歩き続けて大体20分以上は経っただろうか、途中、俺の体を気遣って休憩を入れてくれたり、馬車の往来が激しくその間を縫ったりしていたら、距離の割には随分と時間がかかったように感じる。
「ここだ。随分歩かせてしまったね。」
老人は申し訳なさそうに微笑む。
「いや、本当に助かりました。どうしようかと思っていた所だったので。」
俺は本心からの言葉を口にする。
休憩してる最中に聞いたが、どうやら彼は家具職人をやっているらしい。
彼はジャンと名乗っていた。
王室にも卸してるんだと自慢げに話していた。
「なに、気にする必要はない。老人の気まぐれだからね。」
彼は平民と国の人間の衝突をよく思っておらず、何とかしたいと常日頃から考えているらしい。
この優しさも、彼のその思想から居ても立ってもいられなかったのだろう。
青色の大きな扉を乱暴に拳で叩くと、彼は大声を上げる。
「ワシだ!ジャンだ!怪我人を連れてきたから見てもらいたい!」
扉の一部が小窓になっておりそこがスッと音も立てずに開くと目つきの鋭い男が睨みを利かせてきた。
思わず身じろぎしてしまうも、ジャンは一切動じない。
なんならムスッと不機嫌そうにしていた。
大扉が開くと、頭を丸めた僧侶と思しき男が中へ迎え入れてくれる。
「ジャンさん、毎度そんな大きな声を出さなくても聞こえますから。」
彼は相変わらず不機嫌そうな顔のまま、腕組みして悪態をついた。
「ふん、ドアノッカーをつけん方が悪いわ。ワシの所で安く請け負うといっても聞かんのはそっちじゃないか。」
「今はどこも懐が苦しいですし、ジャンさんも忙しいでしょう?」
男は苦笑を浮かべると、俺の手に気がついたのか目を丸くした。
「これは酷い。まさかジャンさん、ついに弟子に手をかけたんじゃ!」
男は詰問するようにジャンに詰め寄る。
ジャンは顔を真っ赤にしながら反論した。
「バカモン!ワシがなんで弟子にこんなことせにゃならん!この忙しい時にワザワザ仕事を増やすような真似せんわ!」
それもそうかと彼とジャンは笑いあった。
合わせて俺も笑おうとするが、痛みに思わず目を瞑ってしまい上手く表情が作れない。
「笑ってる場合じゃないな。アンドレ!怪我人だ!見てやってくれ!」
男の呼びかけに軽快な足音が近づいてくる。
現れたのは線の細い優しげな眼差しが印象的な人だった。
次回投稿 4/11 19時〜(予約済)
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