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16/22

C'est pourri... C'était trop tôt.

ーあらすじー

18世紀フランスの現実に直面するケイジ。

不快なニオイと、一触即発の雰囲気の中、情報を求めてヴェルサイユの街を彷徨うのだった。

広場の外縁を歩いていると、馬の嘶きが耳に入る。


遠目で見た時にはバザーか何かのように見えたが、どうやら簡易的な建物のように見えていたそれはすべて馬車のようだった。


ニオイの質もこの辺りは、田舎の田畑を彷彿とするような動物系の物が主のように感じられた。


馬車に忍び込むのもアリじゃないか?なんて考えて足を止める。


御者や従者の目を盗んで荷物の中に忍び込めれば、難なく入れる可能性も、とそこまで考えて馬車の周りを観察するとどの馬車も常に御者と従者が貼り付いている。


その上、衛兵がその周りを巡回しており、ここに付け入る隙がないことは明白だった。


時間に関する権能とやらも、全くの未知数だからそれを頼るのも難しい。


発動方法についてキチンと調べなくちゃと、考えてまた歩き始めた。


広場からは3本の通りが放射状に伸びていた。

どこから行くか考えて、どうせあてもないんだからと手近な右手の道へと歩を進める。


そちらに進むとすぐに雰囲気が変わったことに気づく。

馬車の往来が激しく、足元が非常に悪い。

油断すればコケてそのまま馬車に轢かれることも考えられる。


それにやたらと衛兵が多い。

やはり直近のバスティーユ襲撃が効いてるのか、厳戒態勢が敷かれているといった雰囲気だ。


右手の建物は厩舎や倉庫がすき間なく立ち並んでいる。


通行人がいないわけじゃないが、とにかく息苦しさを感じて俺は足早に通りを抜けていく。


その脇を、1台の馬車が通った。

パシャリと音を立てて跳ねた水が俺の服にかかってしまう。


「あっちゃー。濡れちまったよ……どうしたもんなぁ。」


濡れた箇所を観ながら歩いていると、ドンと身体が何かにぶつかった。


その反動で思わず尻もちをついてしまう。


目の前には、ロイヤルブルーの上着を羽織り、キュロットを履いた如何にも貴族といった格好の男がいた。


「おっと、これはこれは。大丈夫かね?青年。」


彼は柔和そうな笑みを浮かべて手を差し出してくる。


「あぁ、すいません。馬車が跳ねた水に気を取られてしまいまして。」


その手を取ろうとしたところ、すぐに手は引っ込められ、上から足で踏み抜かれる。


「あぐっ!!」


足にどんどんと力が込められているのか、ゴリゴリと音を立てて圧迫された骨が地面との間で摩耗するのが嫌でも分かってしまう。


「何様のつもりだ市民風情が!爆発寸前のこんな状況じゃなけりゃ、見せしめでギロチン送りにしてやるのによぉ!」


日頃からの鬱憤が些細なことで爆発したのか、苦悶の表情を浮かべる俺を痛めつけることよりも、市民を階級の差で押さえつけてることそのものが今の彼にとっては重要なことのように見えた。


「ほら!衛兵様、許してくださいお願いしますって言ってみろ!」


痛みに支配されてしまい中々言葉にならないことに苛立ってしまう。

現代人としてのプライドも、多少なり邪魔をしているのかもしれない。


「え、えいへっ、さまっ、ゆ、ゆるっ、許してください!おねが、おねがいっ、しますっ!」


その言葉を聞くと最後に俺の顎に一撃蹴りを入れてきて道の中央に投げ出された。


赤く腫れ上がり、熱を持っていること以外分からなくなった手を胸元に寄せて、もう片方の手で支える。


屈辱的な扱いを実際に受けて、分かった。

あまりにも価値観そのものが腐敗している。


俺は痛む身体を引きずって、道の端に寄ろうとする。


しかし、次の瞬間には、背後に馬車が迫っていた。


瞬間、俺の脳内でスイッチに指がかかる感覚がある。

手を伸ばす、走る、跳ねる。


そういった感覚と並列に存在する、何か。


スイッチをパチリと降ろした。


目前に迫る馬車が、ピタリと静止する。

俺は身体を転がし、何とか馬車を避けることに成功する。


道の端まで辿り着いて、無残な状態になった左手を見て、すぐに目を逸らした。


死に直面したことで脳内物質が過剰に分泌されているのか痛みはあまり感じなかった。


これであの感覚は2度目だ。

卑弥呼の時と、今回。


ゆっくりと立ち上がり、周囲に気を配りながら歩き始める。


共通してるのは、俺が死に直面していたこと。

相違してる点は、前回は無意識で、今度は意識的だったこと。


もう一度使ってみようと先程と同じスイッチを探すが、元の状態に戻っていないような感覚がある。


丁度、上げた手をそのまま伸ばしていて、それ以上伸ばそうとしてもただ痛むだけのような、そんな感覚。


恐らく、短時間に何度も使えるものではないんだろうと推測する。


時間が経ってきたことで、徐々に痛みが戻ってきているのを感じる。


折れてはいないと思うが、念の為、病院に……と思ったところでここが現代ではないことを思い出し、絶望する。


この時代のフランスの病院がどこかなど知る由もない。


俺は諦めてどこか休める所を探して、そのまま歩き続けるのだった。

次回投稿 4/4 19時〜(予約済)


ーーー

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