99.協力関係
実はイグルには国王に会ったことを伝えるべきか悩んでいた……でも、今後国王と話をするなら遅かれ早かれきっと知ることになるかもしれない。それなら自分で伝えたほうがいい。
隠したいわけではないけれど、国王にイグルからの願いで会いに来たといった手前、彼に聞いてから話すべきだったとも思う。
「イグル。あの、この資料……すごく、すごく嬉しい。あと、それとは別に……話したい事がありまして」
「……別?どうぞ?」
「実は……」
僕はそうして、イグルの父親に会ったこと、そしてイグルが身を案じていることなどを国王に話したことを伝えた。
「リノは……意外と行動派だったのか」
「そ、そこ?確かに、分からないことや気になることは自分で確認しないと……と思って行動しているけれど」
「いや、いいんだ。ただ、私が会えない父上にあっさりと会えてしまったことに流石だなと思ってね」
別に怒ってないよ、そう軽く手をふるイグルだけど内心はきっと面白くないだろう。その気持ちは、願いの強さで僕が一番知っているし分かっている。
「イグルの願いの儀式は、昨日はまだできないとお話ししましたが、国王と話してどのような儀式にするか僕の中でほとんど固まっています」
「本当か!?」
「僕が聞いた色々なお話に関しては、僕から国王にちゃんと本人に直接伝えるように、と伝えてます」
「それって……」
「はい。まずは国王からイグルや第一王子殿下に詳しく話を聞く場が設けられると思います」
「……それだけでも、それだけでも奇跡だ」
潤んだ瞳を見られないように少し俯くイグルに、僕は少しでもこの親子の絆が修復されることを祈らずにはいられなかった。
「やはり、リノは私の願いを叶えてくれる」
「……まだ、まだですよ」
だって、イグルには言えない。この儀式をしたところで、国王は死に向かっていくことを止めることはできないのだから。
そして国王からの話を聞いて、イグルがどう思うか。僕はそれも気になっていた。
僕の考える儀式は星神の力を借りた奇跡に近いけれど禁術が関わってくればそこも難しい。叶うならば……
「……近々、きっとお話があると思うので、イグルは聞いて、そして自分の意見を言ってください」
「……半年以上話してもいないし、基本的に無口な方だ。どう話せばいいか……」
「言いたいことがたくさん出てくると思うので、その時、心のままに話すといいと思います」
この機会を逃してほしくない。
言いたいことはそのまま言ってほしい。
「それと、儀式ですが……このところ空を見上げていましたが、次の新月は四日か……五日後だと思うんです。その近くでできればと」
確か砂漠地域の新月の言い方はジャディシャでよかったはず。
アルドと一緒に習った講習を思い出しながらイグルへと確認する。
「確かに、それぐらいがジャディシャのはずだ。意外と近くだな。それと見ただけで分かるなんて星人の力か?」
「そうですね……星見が好きな人も分かると思いますが、僕の場合は見上げた時の感覚ですね」
あと隣の相棒が星神から聞いてくれたりするのでかなり正確に絞り込める。
この儀式はなるべくなら新月で、無理なら新月に近い状態が望ましい。それぐらい星の輝きという力が必要になるはずだから。
「あともう一つ、イグルの願いとは別件で」
ずっと考えていた星神からのもう一つの課題かもしれないララナの願い。ここでイグルがグロッチを追っていたこともきっと偶然じゃないはず。
「イグルに貰ったグロッチの情報。それも含めて協力してほしいことがあります」
ララナには二日後という話しだったけれど、対応できるのであればすぐにでも……そう僕は考えを改めていた。
急を要するためイグルにも詳しく話したところ、そこまでの情報があるのならば明日、捕り物だなと好戦的な意見までいただけてしまった。
ただグロッチの各拠点全てを見て回るのも難しいということだったので、どこにララナの姉がいるかは分からない。だからこそ、ここは星人の出番というわけだ。
イグルと明日の打ち合わせを細かく行い、僕は朝一番にララナの元へ向かうことへ決めた。




