100.守護の魔法
星人のリノと、妖精のシェリィラに本当に出会えると思っていなかったララナは、自分が星人へ手紙を出せて本当によかったと思った。
どうしようもない焦燥感からシェリィラの姉がグロッチの元へ行くまでの間にララナはなにか方法がないかと魔法をかける仕事の休憩時間には炎都を歩きまわっていた。
そんな時だった。おとぎ話で願いを叶えてくれるという星人のポストを見つけたのは。
噂で聞いていたこともあったかもしれないが、突然そのポストがララナは気になった。今まで何度も通った道で、自然にとけこみ気になったこともなかったものが、突如として目に飛び込んできた日のことは忘れられない。そして、誰もがそのポストの存在を気にかけないからこそ、信じ、手紙を出した。
そうして、出会えた二人は本当に奇跡のような存在だった。
ララナの手紙を携えた少年の姿のリノと、その隣で透き通るかのような美しさを持つシェリィラ。
星神に感謝してもしきれない日だった。
◆
「お邪魔します」
僕は前回と同じようにララナの部屋に来た。
当然ララナは僕が来るのは約束通り明日だと思っていたのでとても驚かせてしまった。
「リノ様!」
少し大きな声を出してしまったララナはハッと気づき両手で口を押えていた。
「すみません……大きな声を」
「いや、本来明日来るべきなのに今日来た僕が悪いから。他の人にも聞こえなかったみたいだし、ね」
大丈夫と安心させるように伝えると、ほっと息をはきだし肩の力が抜けたようだった。
「その、リノ様。何かありましたか?」
もしや姉の身になにか?そう心配するララナに僕は今日行う予定になった計画を伝えていく。
協力者のイグルのことは驚くといけないので名前だけ伏せさせてもらう。イグルも了承済みだ。
「……確かに、ぎりぎりに行動していては後手に回ってしまいますし、わたくしの両親とグロッチの意表を突くにはなるべく早く、という意図は分かりました」
ララナが理解したことを確認してこくりと頷く。
「ですが……リノ様。先ほどの計画ですと、わたくしがこの部屋からでることが前提のようですがそれが一番難しいようにも思います。……わたくしがなんとかできればよかったのですが」
「そこはシェリィラの能力と……ララナ、君の力が必要だ」
そう、ララナをこの部屋から連れ出す方法が僕たちにはある。妖精スフィの力をもってして、シェリィラにララナも存在を薄めてもらえば基本的には見つからない。けれど人にぶつかったり声をだしたりすればララナという人間を認識している人からは簡単に見つかってしまう。そこで今回は少し荒っぽいけれど窓からの脱出作戦だった。
「窓から…ですか?」
「そう。そこで、ララナの力、守護の魔法の出番なんだ」
「……?」
ララナは自分の守護の魔法のことをあまり知らない。前に聞いた時は販売前の商品や、仕事のやり取りをするための手紙を守ることを主に行っていたということ。守護の魔法も千差万別だけれど、手紙という紙だけではない、商品という少なくとも重量があるものにも魔法をかけていたというところにララナの魔法の認識が変わる。つまり、大きなものにも守護の魔法がかけられる可能性だ。
「まず、ララナにはこの部屋を開けられないよう扉に守護の魔法をかけてもらう。そのあとは窓から出るから僕たちに守護の魔法、そして出た後に窓へも魔法……かな」
唖然とするララナに、しっかりと彼女の瞳を見ながら笑って伝える。
「ララナの能力を商品や手紙にだけ使っていた両親たちは……失礼だけど見る目がないよね」
僕の言葉を聞いたララナは静かに息を飲み、瞳には強い意志が宿ったように見えた。
そう、彼女は囲われた鳥ではなく自らどこへでも羽ばたいていける強い女性のはずだ。だって、星人に手紙を出す、その願いと勇気があるんだから。
「よし。まずは、僕たちと自分にかけてみようか」




