92.見える国王
国王の寝室に二人きりという、場所と沈黙に耐え切れず、僕は礼儀としても名乗ることにした。
「僕は、星人のリノといいます」
「あぁ……私はこの国の王、ソディルアだ」
名乗ったけれど、ここでシェリィラまで紹介すると二人で不法侵入したと思われる。
イグルに貰った輝石を衛兵に見せたからといって、衛兵が認識していなければ不法侵入と一緒だ。
だから僕だけの紹介のほうが何かあったときに対処がしやすいはず。
そう考えながらも、国王はじっと僕を見つめてくるだけだった。
「……城に知らせは届いていた。星人の開かずの門が開いたと」
だから、来ると思っていたのだよ。そう、ささやくような声が聞こえた。
「……?」
国王は何を言っているんだろうか。僕が国王に会いに来たのは、イグルの願いに情報が足りなかったからだ。
休んでほしい、の願いの根源を知りたかったから。
国王は僕が来ることを予想していた?
僕がはっきりと見えている時点で、国王の願いの強さは相当だ。
ただ、彼はきっと星人に願うような人じゃない。そう話していて感じる。
分からない言葉に僕は眉を寄せることしかできず、どう話せばいいかを必死に考える。
「僕が見える……のは、あなたがその身に強い願いを持っているから。……そうですよね?」
「…………願い、か。おとぎ話や伝説は本当なのだな」
国王はそう話しながらも、もう用はないというように、また手元の書類を読み始めた。
近くにあったペンを使い書類にサインを書いていく様を僕はただ見つめることしかできなかった。
「……そなたが見えることで、私に願いがあるというのなら、私はそなたに叶えてもらうような願いはない。そなたも捕らえられる前に出ていくといい。いや、捕らえらえないのか?」
不思議なものだ。
微かに笑いながら呟かれた言葉に、僕は怒っていない様子にほっとした。
そして、めまぐるしいほどに先ほどの言葉の"叶えてもらうような願いはない”の意味を考える。
国王はきっと、自分の願いを叶えるために僕、星人が来たと思っている。
確かに僕が見えるぐらいの願いを持っているということは、星人が話を聞く対象ということでもある。
ただ、星人は見えるものの全員の願いを叶える訳でもなければ、隣で気配を消している相棒の促しも、ない。つまり、星神からも関わらなくてもいい願いだと思われているということだ。
「僕は、あなたの願いを叶えるためにここに来たんじゃありません」
そう正直に伝えたところで、と思ったけれど僕が知りたいことを知るには、情報を得るためには、僕の持っている今の手札を見せていくしかない。
だって僕は、イグルの願いの情報を知るためにここまで来たのだから。




