106.目的地へ
西の方角へと進むなか、シェリィラから止まるように合図がきた。
振り返るとララナが足を止め、手をぎゅっと握りしめて不安気にこちらを見つめていた。
「あの、リノ様……石が少しずつさっきよりも温かくなってきました」
「ちょっと触るね」
シェリィラの手から叶え石を受け取り確認する。火傷するぐらいの熱さではないけれど、最初に比べれば格段に温度が高くなっていた。その叶え石を東西南北と向けるように移動させると、ある一方向だけ温度が上昇した。最初に地図で温度が上がった西側だった。
「方向もだけど、道も示してくれているみたいだ」
星神の導きできっとこの道を選んだ方がいいということなんだろう。叶え石はしっかりとララナの手に返した。
これはララナが持っていなければいけないもので、ここからの案内は基本ララナを主軸に叶え石の方向を教えてもらおうと決める。そのことを静かに伝え、ララナとシェリィラに先頭を変わり、ゆっくりと叶え石の温もりが高くなる方に進んでもらうことにする。
ゆっくり、ゆっくりと静かに進んでいく。進行方向は市場などから離れ、裕福層もいそうなくらい整えられている住宅が多い印象だった。イグルが警備の強化を頼んでいるからか、警備兵とすれ違うこともあり、住人たちはほっとして歩いている人もいれば緊張して肩に力が入っている人もいるようで、その様子が僕には顕著に見えた。
「あ、……ここ?のようです」
ララナが止まった先を見ると、大きめの家がどしりと鎮座していた。周りの家は少し離れているようで権力者の家と言われればそのようにも見える。地図を確認するとこの家を含まれる周辺に目印が描かれている。叶え石も示しているし、ほぼ間違いないだろう。
「姉が、ここにいるのでしょうか……?」
「……シェリィラ」
シェリィラに頼んで家に近づいてもらい、目的の家だった場合はイグルに合図を出すよう伝える。
イグルには城下が見えるところにいてほしいと伝えておいたのできっと大丈夫だろう。イグルは僕やシェリィラが見えるので、シェリィラの他の人に見えないよう行動している時もイグルに見せるように調整すればきっと簡単に気づくはずだ。西側のこの場所が今回の目的とするグロッチの拠点ということが。
暫くするとシェリィラがふわりと側に戻ってきた。やはりグロッチの拠点のようだということで、イグルにもこの場所をばっちり伝えられたらしい。
イグルに場所が伝わったということは、手筈通り暫くすると兵たちがこの拠点を包囲する予定だ。ただ、踏み込む要因がないところが現状なので、そこは彼女の勇気が必要だった。
姉を取り戻すという強い意志を持つララナの行動が僕たち全体の鍵を握る。




