107.竦む足
ララナにはシェリィラが確認してここがグロッチの拠点で間違いないことと、お姉さんの姿は今はまだ確認できていないことを伝える。
「あっ!」
突然声を上げたララナは慌てたように片手で口を塞ぎ、僕と自分のもう片方の手の平を交互に見る。そっと手を平を見ると、先程まで行き先を導いてくれていた叶え石が役目を終えて砕け散っていた。
夜ではない朝に儀式したことや、今回はそこまでの力がいらなかったことから目的地にたどり着いたことで力を失ったんだろう。
「大丈夫。ここまで案内したから力を使いきったんだ。ここからは星神の力じゃなく、僕たちの力で進んでいかなきゃいけない」
不安そうにしていたララナだけど、僕の言葉にしっかりと頷いてくれた。
「さっき話した通り、ここからはシェリィラとララナ、二人でお姉さんを探せる?」
一連の流れは路地に入ったときに伝えてあった。拠点が分かったら僕とは別行動。ララナはシェリィラに存在感をできる限り薄くしてもらい、グロッチの拠点の中に入り込みお姉さんを探して会うことが目的。僕は僕で、あとから合流予定のイグルを外で待つ。そして、相棒から合図が来たら拠点の家にお邪魔する手筈だ。
「ララナのお姉さんにはあらかじめどういう風に動くか伝えてほしい」
分かりましたと答えるララナに僕は頷いたけれど、これは口実であって本来の目的じゃない。グロッチを捕らえるだけならイグルが来てから一斉に立ち入ってもどうにかなるほど色々な証拠がある。
ただ、ララナにはお姉さんと二人できちんと話し合う時間が必要だと思ったんだ。
きっと二人とも今まで両親の方針……監視などもあり、まともに話せていないだろうと予想がついた。きちんと話し合わなければきっとこじれていくだけだろう。どちらも人生を親に縛られてきたからこそ、父親と母親、二人がいない今が本音を話せる機会でもあるはずだ。
「大丈夫です。わたくし、行きます。……シェリィラ様、どうぞよろしくお願いいたします」
決意を固めたララナは、シェリィラへと手を伸ばした。
◆
リノ様と別れて、シェリィラ様とわたくしはグロッチの拠点とされる家へと入り込む。
「シェリィラ様……ありがとうございます……」
手を繋いでもらっているシェリィラ様には伝わっていると思うけれど、わたくしはお姉さまに会えると思うと、嬉しい反面とても緊張していた。だってわたくしは純粋にお姉さまのことを慕っていたけれど、今となればわたくしの勘違いの可能性が大きい。誰が好き好んで妹の真似をするの……親から強要されたとも思わずにただ喜んでしまっていたわたくしは自分を許せない。お姉さまはわたくしのことを恨んでいるかもしれない。そう思うと、全身が震え、足を一歩踏み出すのもすごく力が必要だ。
シェリィラ様はお話にならないということでしたが、わたくしのことをすごく気遣ってくださっているのが繋いだ手や瞳からもとても分かります。
ここまで来れたのもリノ様とシェリィラ様のおかげ。わたくしはお姉さまを助けたい一心で手紙を出したけれど、今この場にいるのは以前の親の言いなりになっているだけのわたくしではない。リノ様たちのお力をかりてでも、お姉さまを助けたいと動けたわたくしなの。だから、あと少しだけ……怖くても、どう思われていても、わたくしはお姉さまに会いたいから。わたくしの身代わりなんて許すことなんかできない。
深呼吸をしながら、そっとシェリィラ様の後を付いていく。わたくしとお姉さまは血縁関係にあるので、その強い絆をシェリィラ様は辿ってくれている。面識がなかったり、広すぎる範囲だったりすると精度は落ちるというリノ様のお話でしたが、この家の中ではお姉さまの居場所が分かるようです。
シェリィラ様が一つのドアの前で止まりました。
きっとこの向こうに、お姉さまがいる。




