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『異世界無双ショートスリーパーで生きていく〜「睡眠は趣味です」と言い放ち、1日45分睡眠で世界を救う〜』  作者: ぽてと
ショートスリーパーメソッドの布教

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第6話:食事と睡魔の因果律

冒険者ギルドでの規格外登録から数日後。

オサムは、カイン、ドン、ルミアの三人とともに、ファルガス街の近郊にある森で日中の討伐クエストを行っていた。


「ふう、午前中のノルマはこんなもんか。よし、お昼休憩にしよう!」


リーダー格のカインが声をかけると、一行は木陰に腰を下ろして携帯食を取り出した。

ルミアが幸せそうな顔で頬張っているのは、ファルガス街のパン屋で大人気の『白猫の肉球パン』だ。猫の足を模したふかふかの白いパン生地の中に、甘い蜜とイモのペーストがぎっしり詰まった、ずっしりと重い菓子パンである。

カインとドンも、大きなバゲットにジャムをたっぷり塗って平らげていく。


「オサムはそれだけ? 一番動き回ってるのに、足りるの?」

ルミアが肉球パンをかじりながら不思議そうに尋ねた。

オサムの昼食は、干し肉を数切れと、ナッツ、そして少量のチーズだけだった。


「ああ、俺はこれで十分。お腹いっぱい食べると、パフォーマンスが落ちるからね」

「ふーん? 変わってるわね。魔力を練るには、甘いものをたくさん食べてエネルギーを補給しなきゃダメなのよ!」


ルミアは得意げに言いながら、二個目の肉球パンに手を伸ばした。

オサムは「まあ、後でわかるさ」とだけ言って、水筒の水をあおった。


――事件が起きたのは、昼食を終えて探索を再開した30分後だった。


「ガァァァッ!」

茂みから突然、緑色の肌をしたゴブリンが3匹飛び出してきた。ゴブリン自体は下級の魔物であり、今の彼らなら全く苦戦する相手ではない。


「出たわね! 私が魔法で一掃するわ!」

ルミアが前に出て、杖を構え――ふわり、と大きなあくびをした。


「……あれ? 呪文、なんだっけ……ふわぁ……」

「おいルミア、何やってる! ……って、俺もなんだか体が重……」

「剣が、上がらねえ……」


ルミアだけでなく、前衛で剣を構えたカインとドンまでが、泥酔したように足元をふらつかせ始めたのだ。目元はとろんとしており、あからさまに動きが鈍い。

その隙を突き、ゴブリンの棍棒がルミアに振り下ろされそうになる。


「危ないな」


ザシュッ!

突風のような速度で割って入ったオサムが、手刀の一撃で三匹のゴブリンを瞬く間に沈めた。彼だけは、午前中と全く変わらない――いや、それ以上のキレのある動きを見せていた。


「あ、ありがとう、オサム……。また睡眠魔法を使う魔物だったのね。気を抜いてたわ……」

ルミアが涙目で目をこすりながら言うが、オサムは呆れたように首を振った。


「いや、ただのゴブリンだよ。魔法なんて一切使ってない。君たちが勝手に眠くなっただけだ」

「えっ……? でも、急に頭にモヤがかかったみたいに……それに、ものすごい睡魔が……」


「それが『血糖値スパイク』ってやつさ」

オサムは剣を鞘に収めながら、三人に講義を始めた。


「いいかい? さっき君たちが食べた甘い蜜のパンや、大量のバゲット。ああいう糖質(炭水化物)を一度にドカ食いすると、体内の血中糖度が急激に跳ね上がる。すると体は異常事態だと勘違いして、それを下げるための物質を大量に分泌するんだ」

「な、なんだって……!?」

「急上昇した糖度が今度は急降下する。その激しい落差が、脳に『猛烈な疲労感』と『強烈な睡魔』を引き起こす。つまり、君たちの眠気は敵の魔法のせいじゃなく、自分たちの食事のせいなんだよ」


オサムの言葉に、三人は雷に打たれたような顔をした。


「だ、だからオサムは、お昼に肉とチーズしか食べていなかったのか……!」

「そういうこと。日中に眠くなる一番の原因は『糖質の摂りすぎ』だ。睡眠を削りたい、あるいは日中の集中力を維持したいなら、食事のコントロールは必須スキルなんだよ」


異世界の常識では「疲れたら甘いものやパンをたくさん食べる」のが当たり前だった。しかし、それがかえって活動の妨げになっていたという事実は、彼らにとって天動説が地動説にひっくり返るほどのパラダイムシフトだった。


「も、もちろん糖質も大事なエネルギー源だから、全く食べるなとは言わない。ただ、食べる順番が大事だ。まずは肉や野菜(食物繊維)から食べて、パンや甘いものは最後に少しだけ。それだけでも、食後の睡魔は劇的に抑えられる」


「食べる……順番……」

ルミアは、自分がさっきまで幸せそうに頬張っていた『白猫の肉球パン』を思い出し、ハッと顔を赤くした。


「わ、私、明日からお昼は干し肉とサラダにするわ……! 甘いパンは、夜寝る前に食べる!」

「俺もだ! 剣士たるもの、飯ごときで隙を見せるわけにはいかないからな!」


こうして、異世界に初めて「血糖値コントロール」という概念が持ち込まれた。

ショートスリーパー・ミネの教えは、魔法の技術よりも早く、冒険者たちの胃袋と常識を確実に変えようとしていた。

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