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『異世界無双ショートスリーパーで生きていく〜「睡眠は趣味です」と言い放ち、1日45分睡眠で世界を救う〜』  作者: ぽてと
異世界の常識を破壊する目覚め

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第3話:睡眠魔法は効きません

街道に出た長夢(オサム)の目に飛び込んできたのは、三人の若い冒険者パーティが馬車を背に立ち回る姿だった。

彼らを包囲しているのは、額に奇妙な紋様を持つ、十数頭の灰色の狼たち。


「くそっ、数が多すぎる! ルミア、魔法の詠唱はまだか!?」

「だ、ダメ、こいつら普通のウルフじゃない! 『催眠狼(ヒュプノウルフ)』よ! 早く耳を塞いで――!」


杖を構えた魔法使いの少女――ルミアが叫んだ直後だった。

ヒュプノウルフの群れが一斉に天を仰ぎ、奇妙な遠吠えを上げた。

ワォォォォォン……。

それは耳から入る音というより、脳に直接響くような不快な共鳴だった。空間が歪むような感覚とともに、紫色の靄(もや)が広がる。強力な範囲睡眠魔法だ。


「あっ……ヤバ、い……」

「剣が、重……」


前衛で剣を振るっていた剣士と、盾を持っていた戦士が、糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。

ルミアも杖を杖代わりにして必死に立とうとするが、抗いがたい強烈な睡魔に膝を折る。


「ウゥ〜〜……」

冒険者たちが無力化されたのを見て、ヒュプノウルフたちはゆっくりと包囲の輪を縮め、鋭い牙を剥き出しにした。ルミアは絶望に目を閉じる。


「おっと、そこまでだ」


狼たちの背後から、軽い声が響いた。

間一髪で駆けつけたオサムだ。

突然の乱入者に警戒した狼たちは、オサムに向かって一斉にあの紫色の靄を吹き付けた。ルミアたちを一瞬で眠らせた、強力な睡眠魔法だ。


(ん……?)


まともに靄を浴びたオサムは、ふわりとした心地よさを感じた。

春の陽だまりにいるような、ちょっと油断したらうとうとしてしまいそうな、軽い眠気。ステータスの【状態異常耐性(睡魔)】が働いているとはいえ、本来なら人間を昏睡させるほどの強力な魔法なのだろう。オサムの脳に「休め」と微かなシグナルが送られてくる。


「なるほど、これが睡眠魔法か。なかなかいい技を持ってるじゃないか」

オサムは余裕の笑みを浮かべた。

「だが、甘いな。ショートスリーパーを舐めるなよ」


オサムは武器を構えることなく、すっと両足を肩幅に開いた。

そして、背筋を伸ばし、両腕を胸の前でクロスさせる。


「いち、に、さん、しっ!」


オサムは、その場で小気味よくスクワットを始めた。


「……え?」

薄れゆく意識の中で必死に目を開けていたルミアは、自分の目を疑った。

助けに来てくれた謎の青年が、なぜか魔物の群れのど真ん中で屈伸運動をしているのだ。狼たちも「こいつ何してんの?」とばかりに呆気にとられ、動きを止めている。


「ごく、ろく、しち、はち! ふぅ、よし!」


十数回のスクワットを終えたオサムの瞳から、先ほどの微かな眠気は完全に消え去っていた。

前世で学んだメソッドの基本だ。

眠気というのは、血流が滞ったり、体温が下がったりしたときに感じやすい。つまり、下半身の大きな筋肉を動かして血流を全身に送り込み、心拍数を上げてやれば、大抵の眠気は吹き飛ぶのである。

異世界の魔法だろうがなんだろうが、肉体のメカニズムに従っている限り、物理的なアプローチで対抗できる。


「血行が良くなって、完全に目が覚めた。さあ、第二ラウンドといこうか」


バッチリ覚醒したオサムは、一晩の狩りで手に入れた新しい力――レベル12の圧倒的な身体能力を解放した。

地面を蹴り、狼の群れに飛び込む。

狼たちが反応するより早く、その拳が狼の顎を撃ち抜く。レベル1の冒険者なら苦戦する相手でも、一晩中魔物を狩り続けてレベルを上げたオサムにとっては、もはやスローモーションにしか見えなかった。


「はあぁっ!」

打撃と、初歩的な風の魔法を組み合わせた連続攻撃。

ほんの数十秒の間に、十数頭いたヒュプノウルフはすべて光の粒子となって消え去った。


「ふう。いい運動になった」

オサムが額の汗を拭っていると、地面に倒れていたルミアが、信じられないものを見るような目で彼を見上げていた。


「あ、あなたは……いったい……?」

「俺? 俺はミネ・オサム。ただの通りすがりの……」

オサムは言いかけて、ふと思いついたようにニヤリと笑った。


「睡眠を極めし者、かな。まあ、起きたばっかりで寝起きが悪かったらごめんよ」


ルミアはポカンと口を開けたまま、彼を見つめる。

こうしてオサムは、異世界で初めての「まともな(?)」人間関係を築く第一歩を踏み出したのだった。

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