↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、悪役令息を飼う  作者: 朝比奈侑生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/40

第14話 教皇の趣味

 僕は屋敷に帰ると部屋に閉じこもり、真っ暗な部屋でずっとベッドの中で震えていた。

 何故僕はあんな記憶にもないような男に恐怖を感じるんだ。

 剣を交えたら絶対に勝てる。魔術は……あいつがどのくらいできるかわからないが、多分勝てる。

 ……なのに、あいつの気色の悪い目が忘れられない。

 あいつに触られた手を掻きむしる。

 例え、ご主人様がいざとなったら守ってくれるとはいえ、講堂にすら行きたくない。


「リングレット、入るわよ」


 ご主人様の声が聞こえると、軽やかな足音が近づいてくる。


「へぁっへぁっへぁっ」


 この吐息と重さ……綿毛だな。

 何故だろう。今は綿毛を抱えた方が精神衛生上いい気がする。

 僕は布団から顔を覗かせ、綿毛の確認をする。すると部屋の明かりが僕の目を閉ざす。

 目を閉じた瞬間、綿毛の気色悪い舌なめずりが僕の頬を襲う。……本当にお前は臭いな。

 でも今はお前でもいい。か弱い僕を守れ。お前、僕の師匠なんだろう。


「随分と仲良くなったのね」


 綿毛を大事に抱える僕を見て、ご主人様はくすくすと笑う。

 気安い服を着ているのを見て、僕はほっと胸をなでおろした。


「……あの男、気持ち悪かったでしょう」


 ご主人様はベッドに座り込み、僕の頭を優しく撫でる。

 そうだ。僕は気持ち悪い思いをさせられたんだ。もっと労われ。


「ご主人様は、あの男に私を渡して、何をしたいのですか」


 僕をあの男にくれてやるはないといった。なら、目的は別の所にあるはずだ。

 そういうと、ご主人様は僕の唇を指で撫で、妖艶な表情を浮かべて見せる。


「……私が、あの男を心底憎んでいると知ったら、あなたはどうする?」

「……え?憎」


 驚く間もなく、唇を撫でていた指が口の中へ侵食してくる。

 鋭く研がれた爪が、僕の歯先を撫でると、その爪先が当たらないよう、僕はじっと息を殺した。


「何も関係のないあなたに当たるのはよろしくありませんわね」


 ご主人様が僕の口内から指を離すと、唇を唾液が伝う。

 僕は体が固まり、息をも殺した。


「いい歯並びですこと。流石フィエスタ様の愛玩物として選ばれただけのことはありますわ」


 愛玩、物……?

 確かに僕は愛されるべき人間だが、物ではないぞ。


「ご主人様……あの男と何か因縁がおありなのですか」


 つい口にしてしまった。

 僕は咄嗟に綿毛を前に構え、体を縮こまらせた。

 するとご主人様は僕の手から綿毛を取り上げ、自分の胸元へ綿毛を取り込む。

 ダメだ。僕を守るものが何もなくなってしまった。殺される……!


「……あなたは小さい頃のクラディウス殿下をご存じかしら」


 小さい頃の……第一王子……?

 

「とても可愛らしくて、天使のようだったのですが、あなたは記憶に残していないかもしれませんわね」


 あの筋肉隆々で、覇気で僕を押しつぶしそうな、あの第一王子が?

 この僕ならわかるが、天使などと形容されるとは思えない。


「信じられない、といった顔ね。あなたとは小さい頃から舞踏会で出会っているはずなのだけれど、あなたは自分にしか興味がなさそうですもの」


 そういうと、綿毛に頬を舐められながら笑みを浮かべる。

 そうだ。僕は僕以外に興味などない。ましてやあんなむさくるしい男など。


「……あの王子に、天使のような時期が……?」

「ええ。信じられないでしょう?」

「え……ええ、まぁ……」


 返答に困り、視線を戸惑わせる。

 するとご主人様は僕の目を射抜くように見つめ、不気味に笑った。


「でも本当なのよ。だから、あの男。……教皇になったばかりのフィエスタに目をつけられた」


 どういうことだ?目をつけられた、だと。


「目をつけられた、とは随分物騒な言い分ですね」

「だって、良いことではないから」

「良いことではない……?」


 ご主人様は僕に綿毛を返すと、僕の顎を掴んだ。


「クラディウス様は、あの下衆な男に教会へ誘われ、あの男の特殊な趣味に付き合わされ、心を壊されてしまったのですよ」


 ……どういうことだ。

 特殊な趣味……?心を壊され……?


「あなたのご両親はとても聡い。聖信者という上っ面の名誉のために大切なあなたを売り渡さなかった」


 僕の両親が聡い……?そんなわけがないだろう。毎日お茶会をしてへらへら笑っているだけの親だぞ。


「……クラディウス様は、洗礼を受けるためと言われてついていってしまったというのに」


 声色が細くなる。

 この女は、第一王子のことを嫌っていたんじゃないのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。