4、おっちゃん1
店主が持ってきた武器は、刃の部分が硬い石で出来ているものと、装飾もない太ももくらいの大きさがある鉄剣が2つおいてあった。
「今日は在庫が少ないんだ。このふたつしかなかったでの」
おっちゃんは口では申し訳なさそうにしていたものの、肘をついて全くその気持ちはないように見えた。
「大丈夫だよおっちゃん、十分だ。」
俺はそう言いながら、どちらにするか悩んだ。荷物持ちをしているときも色々、小道具だったり馬車とかをつかっていたので、あまり筋力には自信がないのだ。
おっちゃんは不安そうに俺のことを見てきた。
俺はそれに目を合わせ首をかしげると、うーんと唸った。
「言われたから剣を持ってきてみたけどよ……やっぱあんた魔法の方がいいんじゃねぇか?」
「いや、魔法はいいや。ちょっとの間は使いたくない。」
先ほどの戦闘では魔法を使って彼を怒らせてしまったので、少し魔法のことがトラウマになってしまった。
幸い剣もマイチから使い方を学んでいて、いくつかは体に染みついている技もあるため、小さい魔物を刈るくらいはできるであろうと思って短剣と剣を選んだのだだ。
おっちゃんは残念そうに「ふーん」と鼻息で話した。
「そうか、そうなると大変だな。ついでに、剣技とかも習った方がいいんじゃないか?」
「あぁ、それならあてがある。」
「ほほぉ、俺以外にも当てがあったとはな!」
俺は親指で自分を刺して刺して胸を張りながら、そのあおりに答えた。
「俺ももう48だぜ?さすがに人脈はいろんなところにある」
しかしおっちゃんも同じようなポーズをして、
「人脈がほとんどない武器商人の老人がここにいるんだがね」
と言っては「がはは!」とわざとらしく笑った。
「それはすまん」
「でも人脈はお前だけでも十分なんだなあ、これが」
二人で合わせてへへへへへ、と顔を上げてわざとらしく笑った。
「しかしまあ、魔法をやめるなんてよっぽどのことしでかしたんだな、お前」
「あぁ。味方の邪魔しちゃってさ、足を引っ張っちゃんたんだよ、何回も何回も。それで飽きられてこのざまさ。」
足をひっぱった、って言った方がニュアンスもはっきり伝わるだろう。
「ほーん、にしては落ち着いて気分も晴れやかそうにみえるがな?」
またおじさんはぴくぴくと眉をあげた。
「街中で石投げられるやつがそんな晴れやかになれるか!」
イラついて少し声を張り上げると、おじさんはまた大笑いをした。
「あっはは、その話もよく聞くのぉ、ご苦労さん」
「ほんとにご苦労さんだぜ、まったく」
呆れてため息を吐いてしまった。
そこで話は終わり、カウンターに寄り掛かっては、真剣に剣を選ぼうとした。
まず俺は、長い方の剣を持った。ずっしりと重く、軽くゆっくりと振り回すと空気を切り裂く感覚がちょうどいい。だがその分反動が重くなり、地面に剣が下がりやすい。それにこれを持っていたら腰痛持ちになってしまいそうだ。
剣をゆっくりとカウンターに降ろして、次は短剣を握る。その短剣は軽く、持ち上げるとまるで木の枝のように思えてしまった。そしてまた武器を振り回すと、その武器は軽々と何回も連続して攻撃ができるが、やはりリーチが狭いため、いろいろと戦闘では不便なところもあった。
腰痛持ちになるか、近距離戦向けにするか。
俺はどちらか悩んで、結局前者を選ぶことにした。
長さがあったほうが攻撃が当てやすいと考えたのだ。
「こっちにするよ」
「了解、4銀貨だぞ」
「あぁ。ちょっと待ってな……」
財布をガサゴソと漁り、少し時間がかかりながらも、やっと5銀貨分を出し、そのうち4銀貨を机の上に落とした。カランコロンときれいな音がする。
「あいよ。しっかり4銀貨ね。んであんた、泊まるところはあるのかい?」
「いや、ほとんど無料の野宿場を使ってるよ」
そのことを聞くと、おっちゃんはカウンターからはみ出すほど乗り出してきては驚いた。
「まじか。じゃあうち泊まっていくか?」
机に手を置き聞いてくるおっちゃんを見て、少し俺は渋った。
1回この家に泊まったことはあったが、床で川の字で寝ているときに、とにかくおっちゃんが寝相が悪くて動くので、なかなか寝付けなかった記憶が強い。
なのでそれでパーティーメンバーが怒って夜中におっちゃんに襲い掛かったこともあったっけ。
そんなことを思い出すと、今度は俺がそれになりそうで、泊まるのには少し気が引けた。
しかしそれを言うとおっちゃんも悲しむと思い、代わりに言い分を作った。
「遠慮しとく、結構あそこ落ち着くんだ」
「本当か、大丈夫か?あそこは臭いし寝心地悪いし民度も悪いぞ」
「そ、それは……まぁ耐えられるレベルって感じだな。」
実を言うとだいぶ苦しい。
夜中に真横で脱〇してるやつがいたら、そりゃあきついに決まっているだろう。さすがにその日は別の場所に行って寝た。
「そうか……本当にいいのか?」
「いいんだ。落ちこぼれはこんなもんで」
ははは、と乾いた笑いが口から漏れる。実は半分諦めていたのだ。
そのことを読み取られないかと少し心配になったが、その後の言葉は少し以外なものであった。
おっちゃんは突然こちらを凝視しては、少し考えてこういった。
「やっぱお前、病んでるな」
「え?」
俺は驚いておっちゃんと目を合わせてしまう。
「来た時から様子がおかしいとおもったんだ。少しばかしふらふらとして、顔も青白いし。解散してから4日経つのにそんな悪そうな症状なのは、さすがにおかしいと思うぞ、俺は」
図星だった。
俺は病んでいる。十数年付き合った仲が突然無理やり切り離されたんだからそりゃあ病んでしまうに決まっている。
今回ここに来たのも、その病みが取れたと思ったからなのに。
「そ、そうかな?元からだよ」
「前のお前はもっと活気があった。30代ころなんか毎日顔を赤くしてたくらいだぞ、怒っては注意して、まるで先生のようだった」
「ちょ、やめろよおっちゃん!」
過去の恥ずかしい歴史を漁られ、俺は恥ずかしくなってしまう。
そう仲良く話していると、店の中に人が入ってきた。
「あっ!ルイルス、悪いね。ちょっと待ってて。……お客さん、どんな御用で?」
おっちゃんはそのまま走っていって、接客をした。
見事な切り替えだと俺は思った。




