3、帰宅
しかしあの後、すっかり打ち砕かれた俺は、その後人通りの少ないところで、これまで見てきた冒険者のように泣きながら帰った。
帰るところもなかったため、無料で泊まれる公園に寝転がって泊まることにした。
この町には便利なことに、眠ってもいいし好きなことができる広場がある。あまりにもホームレスが多いんで1か所に集めたそうだ。
しかしその周りはスラム街と言われている。もちろん窃盗も多い。
そして翌日からは、少しの間町の中を散歩するなどして、反省しながらも気を紛らわせていた。
街中でもあいつらとは目を合わせず、ひたすらひっそりと歩いていた。
だがその俺が追放されたという話は、噂好きの冒険者にはあっという間に広がり、蛇足も加わっていろいろと言われていた。
歩いていると、石や、軽い本、いらないであろう魔導書を投げられ、子供達にはあっかんべーとされてはしつこく付きまとわれ、大人には荷物を狙われ襲われたり、窃盗にあったりもした。
体術はそれなりに身に着けていたため、盗賊から荷物が奪われることなどもなく、いつも無事に帰ることができたが、その時にいつも捨て台詞のように言っていた俺のあだ名が、なんとも衝撃的だった。
「でしゃばりおじさん」「でしゃばり整備士」
そのあだ名はおそらくこれからもずっとついてくるのだろう。
と俺はあきれた。
冒険者パーティ、生命の息吹は、いわゆる最強格のパーティであった。
俺はそこで鍛冶をしたり、料理をしたり、武器の管理を任されたりした。いわゆる整備担当だ。
本来、メインで戦う機会はない、地味な仕事だ。
しかし俺は、前へと出た。
緊急事態、俺しかいないときに、前に出たらなんでも解決したからだ。
急いで大人を呼びに行った子供のころの記憶、反対してくるお父さんに向けて前を向いて反抗した記憶、それに、パーティーの中でも前にでてサポートをし、魔物を楽に倒せたりした記憶。
今まで、前に出ればすべて解決したのだ。
それなのに……。
それなのに。たった一つの大きな怒りでそれをすべて失った。
いや、今まで積み重なった怒りが爆発しただけか。
俺自身、その職業が今まであっていなかったのかもしれない、と思っていた。
だが経験だけで言うと、合っているような気もしてくる。
ただ、タイミングがダメダメなだけであって。
その悩みは、しばらくの間続いて、俺を苦しませた。
しかり体つくりは欠かすこともなかった。
一応パーティーから抜けてしまっただけで、ソロでも冒険者はできるのだ。
ソロ活動を申請した後に、暴力的な依頼はやめて、荷物運搬や工事などの細かな依頼をこなしては小遣いを稼いでいた。
時折それを見られて他のやつらにバカにされたりもしたが、俺は無視をした。
今はたぶん、前を向くときだ。
これは俺の信念として根付いているため変わらない。
そうして、様々な仕事をこなして、俺の金は武器を買えるだけ集まった。
そうとなったら、前から考えていたある場所に行くだけだ。
「いらっしゃい。おや、でしゃばり整備士さんじゃないか」
「ははは、そのあだ名はよしてくれよ、おっちゃん」
「あんたもおっちゃんやろがい」
「そうだった。ははは」
俺はとある店に入り、そのよぼよぼな老人にバカにされ笑われながらも、軽く受け流して入店した。
ここはパーティー結成時にもお世話になった古い武器商人の店だ。外壁の板も少しボロボロであるが、中は意外とすっきりして、武器も丁寧に置かれていた。
店主は「リチャード・マグネ」。御年68のおじいちゃんだ。意外と人をいじるのが好きで、よく馬鹿にしては嫌われていることが多い。
しかし心の底から人を馬鹿にしたことは一度もないそうで、俺はその性格が好きで昔はよくここに通っていた。マイチとも気が合ったので、パーティーにいた衣よく来ていたな。
しかし最近は依頼も忙しかったためあまり来れていなかった。
「んで、何買っていくんだい?」
「えと、剣と短剣を見ていく。なるべくなら初心者でも扱い奴にしてくれ。」
俺は手のひらでだいたいのサイズを示した。
「了解、すぐに持ってくるから、ついでにそこにある短剣見ていきな。重たいから持つときは十分注意しろよ」
「わかった」
店主はそう言って、店の奥に入っていった。
すぐ横にその短剣はあった。
装飾がいっぱいついていて、明らかに高そうだし、重たそうであるので、俺は手が触れるのに気が引けた。だが心の中では触れてみたいし、持ってみたい気持ちもあり、少し葛藤した。
するとその間に、店主がすぐによさそうな剣を持っていた。
「何見てるんだ?……あぁ、それは特に重たいから、触れない方がいい。」
「あっ、す、すみません、ですよね、ははは」
とっさに謝って愛想笑いをしてしまった自分が情けなくなる。
対人関係に少しトラウマでもできてしまっただろうか。




