10,鑑定ミス
掲示板の前は人でごった返している。
昼頃になってきたので今頃起きた冒険者が来始めたのだろう。その中には朝にもいた生命の息吹もいた。
だが俺のことは目にも留めずに過ぎ去ってしまった。
いくつかランクごとに分かれていて、俺はD~Bの間にあるミッションと、それ以下のランクのミッションを受けられる。
だが、D~Bランクのミッションのところに、大きな張り紙が貼ってあった。
「緊急!Aランクの新ダンジョンが出現!?」
なぜAランクのダンジョンの依頼が貼ってあるのだろうと思ってみていくと、その理由が分かった。
それはAランクの人の戦いっぷりを見ようという見学会であったのだ。
また、Bランクなら昇格試験も受けられる特別構造らしい。
これはぜひ見に行きたいものだが、おそらく人数もとんでもないものになるだろう。かなりすごいイベントになりそうだ。
だが、思い立ったが吉だ。
俺は早速、受付の人に話をしてみた。
「そうですね……少々お待ちください。」
そういわれて、俺は受付の前で待たされた。少し時間がかかると思いきやすぐに戻ってきて。
「はい、わずかですが開いていますよ。冒険者ランクを拝見いたしますのでギルドカードの提示をお願いします。」
と言われた。
言われるがままギルドカードを出すと、驚かれてしまった。
「え、筋力が9000ですか?」
「はい、そうですが……それが何か?」
まさか触れられるとは思ってもいなかったので、思わず聞き返してしまった。
「ええと、通常ならこのステータスだとBランクのはずなのですが……念のためミスがないか聞いてきますね。こちらの番号でお呼びしますので、少々、そこの席に座ってお待ちください。」
刺されたのは待合室の中にある椅子で、そこを見ると近くにあいつらがいた。
なんとも運の悪いことだろう。
「わかりました」といって番号を貰いその場を去ったが、待合室の前で止まり、椅子の中では待たずに外の壁によりかかって待っていた。
彼らはとても楽しそうに会話をしている。あまり聞こえなかったが、たぶん楽しい話だろう。
いいなぁ。と思いつつも、それ以上は気にしないでおこうと思った。
もう縁を切った仲だ。
しかしまぁ、正式鑑定で間違えることなどあるのだろうか。
しかも、総合評価を。
めったにないであろうことで、俺も正直驚いている。
内心あの人のようにわかりやすく目を開き、開いた口が塞がらない状態になりかけていたくらいだ。
少し時間が空いて、その結果が返ってきた。
その間時間があったので近くの椅子に座っていると、番号を呼ばれ、受付に戻る。
特別にそこだけあけられていて、受付の人に出口がわから通ってくるようにと手招きされた。
「はい、すみません何度も。一応確認はしたのですが、どうやら本来Bランクだったものがギリギリの判定でCランクになっていたそうなんです。」
「ギリギリの判定?」
「ええ、性格には、お客様の筋力は8990です。しかし数値を間違っておりまして、1桁抜けておりました」
「……え?」
一桁抜けていただと?
「正確には、88990で、約9万です。それに他のものも、1つ0が付け足されます。」
「え、えと、それはつまり?」
「はい、攻撃 13000 防御 7000 魔力 50000 筋力 88990 総合評価はAになりますね。お見事にAランクでございます。」
Aより上は試験を受けないと取れないため、これが鑑定上だと実質、最高ランクとなる。
最高ランクだ。
「は、はぁ!?」
「ミスがあり、大変申し訳ございません。」
「ミス……」
正直ミスがあったほうが気楽……とも言えず、口ごもった。
返されたギルドカードの、その暴力的に大きなステータスを見て、もうスキルの魔法補助とか要らないじゃん……とも思ってしまった。
「では、今回の緊急依頼はAランクとして登録させてもらいます」
「わ、わかりました……」
本当に開いた口が塞がらない。まさか1桁違って判断されているとは思いもしなかった。
またギルドカードを渡すと、すぐに奥の方へと向かっていった。そして何か書類を書いてきた受付の人は、その紙と一緒にギルドカードを持ってきた。
紙には、上に大きな文字で「依頼受領書」と書いてあり、その下に俺の名前、誕生日とかが入っていた。
そしてその下にさっき書いた受付者のサインが書いてあった。
「こちら、依頼受領書のため大切に保管してください。それとギルドカードです。……お客様?」
俺はその一桁ステータスが増えたという事実が受け入れきれずにいて、それにつられて話が耳に入ってこなくなっており、反応が少し遅れてしまった。
「あ、アリガトウゴザイマス」
素直にギルドカードとそれを受け取ると、若干手の力が入らず落ちてしまった。
するとそれを見かねた後ろにいた冒険者がカードを取ってくれた。そこでカードを見られ、大きな声で驚かれそうになったが、なんとかギリギリのところで黙ってもらった。
騒がれると無駄に注目を浴びてしまい、またヘイトを買ってしまう。
それだけは避けなければ。
だが、男は静かにする代わりにギルドカードと一緒に一枚の小さな板を渡してきた。
パーティーの名刺であろう。やはり目をつけられてしまった。
まぁいいか。
そうして、俺はAランク冒険者になったのであった。
本の中の話のように叫ばれることもなく、あまりにもあっさりしていたので実感は湧かなかった。
だが、俺は冒険者ランクAだ。
元と同じ。それだけだ。




