誘誘傷
誘誘傷 (誘い誘われたその先に、あなたの望みを叶えましょう、決して癒えない傷と共に)
規模2 平凡
継続4 一年以上にわたってほぼ毎日使用された例は少ない
特殊3 主に意識に作用する、破綻した際には精神的ダメージが発生する
マスター 中本過凪
理想となる相手を作り出し、その幻影を見せる。
極論、これはただそれだけのクラストである。
クラスト内で過ごす時間が長ければ長いほど消耗するものの、そのダメージは日常生活に支障が出ない程度に収まる。
これは、理想を見せることではなく、それが去った後に起きることを主目的としている。
理想そのものを与えられ、トラウマを想起させる形で消失した。
以後、何をしても決して埋められない穴が開くが、本人はそのことを自覚できない。
中本過凪は、そこにつけ込む予定だ。
中本過凪はマスターだった。
あのクラスト内に幻想の理想はいたが、恋人などではなかった。
執着する相手は別にいた。
彼ら三人は中学からの知り合いであり、仲が良かった。
だが、その関係は徐々に離れた。
大学に進学すれば関係はほぼ途切れるだろうと予測できた。もともと、あまり接点のない三人だ。
だから、中本過凪は先手を打った。
決して逃れることのできない罠を仕掛けた。
マスターとしての彼は、クラスト内で何が起きているかを把握した。
二人が何を好み、何を嫌い、他者に何を求めているか、一年以上をかけて調査した。
このクラストは、中本過凪が二人を支配するために作成された。
放課後、佐竹八館と過ごす際。
何をすれば喜ぶか、すでに中本過凪は知っている。
これから夜間、近くに借りたスタジオで右野山聖と過ごす際。
彼がセッションに対して何を求めているか、中本過凪はもう知っている。
一度は与えられ、奪われたものを、彼の手により再び与えられる。
無意識下で強烈に求めていたものだからこそ、疑うことはできない。
四人目のことなど、二人はもう覚えていない。その代わりというように、現実でそれを与えてくれる人間がいる。
あなたはこの企てに気づいたが、見過ごすことにした。
原因となったクラストは消えている。
これ以上悪用されることはない。
なにより――
これにより、三人の不仲が解消されることに変わりはないのだから。




