鋼の支配者
ムルータ・レスぺ「いいね〜!!いいね〜!!最っ高の気分だね〜!!まさか、アートルム様の像が出来るなんて!!」
シーカー・メレーオン「まさか、こんな代表作を作るとは!!」
エレキ・ソン「我らが生みの親、アートルム様に敬意を評してますねー!!」
ムルータ達はムルータのアトリエでパーティーをしていた。今日は自身の代表作であるアートルム像が出来た事であるお祝いだ。ムルータ達はカオス兵を使い、料理や酒を持ってこさせた。3人は楽しくなり、盛り上がっていた。
ムルータ・レスぺ「あとはこの地球の至る所にアートルム様の像を建てれば、世界中がアートルム様の脅威を知る事になるな!!」
シーカー・メレーオン「なんならアメリカの自由の女神も変えるか!?」
エレキ・ソン「ピラミッドやモアイ像、エッフェル塔もいいですなー!!」
3人が楽しんでいる所とは別に、灰川はずっと監禁されていた。食事もまともな物は出ず、風呂も入ってない。何なら手足に枷がついていて、動く事すら出来ないのだ。おかげでみるみる痩せていき、手足にはアザが出来ていた。
灰川(もう5日・・・太陽の光を見たのはいつだったかな・・・)
監禁されたショックなのか、頭の中は麻痺していた。なんなら曜日も時間もおかしくなった。期日まであと2日だが、もしモデルになれば一体何をされるか分からない。寧ろ何されるか分からないなら、死んだ方がマシだ。今までずっと現実から逃げて来た自分が許せなかった。家を継ぐとか自由に生きたいとかではない。それを考えるための明日という未来が必要だったのだ。しかし、それすら奪われた。私には生きる意味も資格もなかったのか・・・?
灰川「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
そんな事を考えている時、急に外が騒ぎ始めたのだ。壁は分厚くても、ドアの隙間から僅かに聞こえた。あれは誰かが侵入してきたのか?その時、急にドアが吹き飛んだ。ドアは後ろの壁まで吹き飛んだ。入って来たのはムルータではなく、全身黒ずくめの人が入って来た。
???「うん、君は?」
灰川「・・・え?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カオス兵「じゃがあぁぁぁぁー!?」
ムルータ・レスぺ「何事なんだなー!?」
ムルータ達が楽しんでいる時、突如爆発音がした。その爆風の影響か、カオス兵が何人も吹き飛んだ。さらにカオス兵が出動するも、何者かにやられてしまった。
エレキ・ソン「だ、誰だ!?」
???「パーティー中、ごめんね」
???「今日はあなた達を倒しにきたわよ」
煙から謎の黒ずくめの人が現れた。手には剣と銃を持っており、顔はフードで隠れていた。声からして女性である事に間違いはない。
ムルータ・レスぺ「何なんだな!?何故この場所が分かった!?」
???「防犯カメラの映像を解析しました。するとそこにあなたが映っていました」
今度はスマホが喋りだした。最新鋭のスマホではない、まるで生きてるみたいだった。
シーカー・メレーオン「くそっ!?一体全体どうなってる!?」
???「言ったでしょ?あなた達を倒しに来たって」
するとシーカーの後ろから誰かが現れて、首元に刃物を突きつけた。身動きが取れなくなったシーカーは思わず固まってしまった。
エレキ・ソン「なっ!?いつの間に!?」
ムルータ・レスぺ「ぐぬぬ〜!?て、うん?な、何だあの魔力は!?」
入り口からとんでもない魔力を放っている人が入って来た。それはこいつらよりも雰囲気が違く、カオスよりも悍ましい何かだった。
???「ここがアトリエか。確かに美術品がたくさんあるな」
ムルータ・レスぺ「何なんだ、貴様!?」
???「我が名はノワール。通りすがりのスライムだ。覚えておけ」
声の主は男性、しかもノワールという。ノワール?・・・まさか!?最近、グレゴリー内ではノワールの噂で持ちきりだ。奴隷を解放したり、カオスを倒したりと騒いでいる。そんな奴が何故この地球にいるかは分からない。だが、彼に出会したらこう思えとアートルムが言っていた。確か、
『彼らに会ったら100%負けると思え』
と言われたような。
ノワール「ムルータ、無駄な話をする気はない。奴隷は何処にいる?」
ムルータ・レスぺ「な!?何故私の名と奴隷の事を!?誰が教えるか!?」
ノワール「・・・ここだな」
するとノワールは大きな絵画をどかした。すると、そこから一枚のドアが隠れていたのだ。コンコンと叩くと中が空洞である事が分かり、思いっきり蹴飛ばした。すると予想通り、中は部屋があり中は明かりすらなかった。中に入ると、そこには枷に繋がれていた少女がいた。
ノワール「うん、君は?」
灰川「・・・え?」
なんか見た事ある顔が見えた。確か、灰川って名前だったっけ?ていうか、何でここにいるの?
灰川「あ、あなたは誰!?」
ノワール「あ、我が名はノワール。通りすがりの人間だ」
灰川「さっきスライムって言ってなかった?」
ノワール「・・・何の事だ?」
しばらく気まずくなり、沈黙が続いた。それにしても、何で知ってる人がこんな目になるんだろう。不思議というか、何だか怖くなってきた。とりあえず枷と鎖は外した。灰川はぶるぶると震えながら、立ち上がった。恐らくまともな食事を摂らせてないんだろう、筋力が衰えつつあった。
ノワール「大丈夫か?」
灰川「えっと、とりあえず・・・ありがとう」
ノワールは灰川の体を掴み、外へ出た。
ムルータ・レスぺ「貴様っ!?私のモデルを盗む気かっ!?」
ノワール「盗むも何も、盗んだのは貴様らだろ。ブラン」
ブラン「はーい」
ブランは灰川の体を掴み、ポーションを飲ませた。少しは回復すると思う。
ムルータ・レスぺ「もう許さねー!!やっちまえ!!」
ムルータは怒りに震え、カオス兵達に指示した。カオス兵がゾロゾロ襲い掛かるも、ブルーノやルージュが蹴散らし、アスールとヴェルデはシーカー、アマリージョとヴィオレはエレキと戦っていた。残ったノワールとブランは灰川を守りつつ、ムルータと戦い始めた。
ノワール「貴様の事は全て調べた。貴様が贋作を作っている事も素性もな」
ムルータ・レスぺ「何だとー!?もう容赦せんぞ!!"ネバーエンド・ガン"!!」
ムルータは左手のチューブ状の武器から色のついた物を放出した。ノワール達は避けたが、壁に当たるとそれはネバネバした物だった。さらに超強力な奴だ。
ブラン「あれに当たれば、私達動けなくなっちゃうよ!!」
ムルータ・レスぺ「これで貴様らを捕まえて、私のモデルにしてやる!!」
ムルータは無差別に当たりに撃ちまくった。みんな壁に隠れたり、カオス兵を盾にして身を守った。中には作品を盾にしていたが、それを見たムルータが
「私の作品に何をする!!」
とキレ始めた。とはいえ贋作だから、何とも言えないが。
エレキ・ソン「こら!?私に向かって攻撃するな!?」
シーカー・メレーオン「おい!!巻き添えするな!!」
敵にも攻撃しているせいか、仲間割れを始めてしまった。その隙にノワールは灰川を外に出して、脱出させた。それに気づいたムルータ達も外に出て、再び交戦し始めた。ムルータが左手の武器を連射し、エレキは電気攻撃、シーカーは舌を伸ばしながら攻撃した。それでもノワール達は臆する事なく戦い、泥沼戦へと発展した。するとムルータは痺れを切らしたのか、近くにあった石像に寄り始めた。
ムルータ・レスぺ「おのれ〜!!こうなったら、"誰が誰を作ったのか!!」
すると石像は粘土状になり、籠手を手に何か作り始めた。完成したのは無数の槍だった。そしてその槍を投げつけて、地面に刺した。しかし、みんなにはあたってなくただ投げてるかのように感じたが、辺りを見て理解した。檻状に囲んだのだ。しかも360°覆い囲むように。
アマリージョ「しまった!?閉じ込められた!?」
ヴィオレ「さっきあの像から作ったものだったわよ!!」
アスール「まさか、能力者!?」
困惑するみんなを他所に、ムルータは笑い始めた。
ムルータ・レスぺ「いいね〜!!いいね〜!!美女達が閉じ込められているというのはそそられるね〜!!」
ブルーノ「ナント!!」
ヴェルデ「ふざけんな!!キモい!!変態!!早く出して!!」
ムルータ・レスぺ「それは無理ね。貴様等は私に刃向かった罰を与えてやる!!」
灰川「!!いい加減にして!!」
すると灰川の服からチリンッと何か出てきた。小さな鈴だ。何かの拍子で落ちたんだな。それに気づいたムルータは鈴を拾い上げ、
「何だ?こんな汚い物は?私のセンスに似合わないね。踏み潰してやる」
と言って鈴を地面に落とし、踏み潰そうとしていた。それを見た灰川は
「返して!!それは大事な物なの!!」
と槍を掴んでいた。恐らく槍を抜こうとしているようだが、槍が重く、地面に深く刺さっているので抜く事が出来なかった。それでもムルータは鈴を踏みつけ、ボロボロにした。
ムルータ・レスぺ「ごめんだな〜。鈴壊しちゃった」
灰川「何で・・・何で、そんな事をするの・・・」
ムルータ・レスぺ「残念だが、我らは人間なんてどうでもいいんだな。馬鹿みたいに金さえ払ってくれる都合のいい金づるなんだよ」
エレキ・ソン「そうだ。人間は我々の役目を果たす道具なんだよ」
残酷すぎる真実。しかし、これがグレゴリーだ。目的の為なら犠牲をもいとわない。人間はまさに彼らにとって都合がいい操り人形だ。それをまさか本人の目の前で言われてるから、相当ショックを受けるだろう。実際、灰川はがっくりとひざまづいてる。灰川はしばらく黙ってしまった。すると、灰川は再び立ち上がった。
灰川「馬鹿って?道具って何?私達人間をそんな風に考えてるの?何で?あんた達には心がないの?」
ムルータ・レスぺ「心だ?そんな物あるわけねぇだろ」
灰川「ならあなた達は人間より馬鹿ね。確かに人間は馬鹿だわ。自分の都合のいいように動く。その美術品のように偽物を売って金儲けする人だっている」
エレキ・ソン「何が言いたい?」
灰川「だけどね、この絵だってあんたが踏んだ鈴だって、たった一つの作品を作るのにどれだけ苦労してるか分かるの!?あんたが模してる美術品だって有名になる前は1枚も売れない時があったの!!やっとの思いで評価してもらえたから、人気が出たの!!私の鈴も、最初はその小さな鈴から始まって次第に会社は大きくなったの!!そこにはどれだけ沢山の人に支えられたか!!あんた達に分かるの!!」
シーカー・メレーオン「ふん!!貴様が何を言おうが、どうせ貴様らは我々に従うしかないのだ!!苦労がどうしたってんだ。そんな面倒な事をしなくても、楽して稼いだ方がいいじゃないか」
灰川「それは誰だって楽したいよ!!でもね、楽したらその分、大きく自分に帰ってくるのよ!!そんな考えしか出来ないあんた達は散々馬鹿にした人以下よ」
ムルータ・レスぺ「な、何だとー!!」
灰川「説教されたくなければ本気で美術品を作りなさいよ!!贋作ではなく、自分の作品でね!!」
すると体の中から灰色の石が飛び出た。という事は彼女を選んだのだ、この石が。灰川はその石を掴むと、光は灰川を包み込み、やがて黒いオーラが出た。石は灰川の体に入り、灰川も悶え始めた。
灰川「な、何なの、これ・・・」
ムルータ・レスぺ「い、一体何が起こってるんだな〜!?」
お互い状況が理解出来なかった。やがて黒いオーラは消えて、中から出て来たのは灰色の髪に瞳、黒コートにヘソだしの服、黒いホットパンツに黒ブーツの彼女が出て来た。彼女は鋼属性の支配者になったのだ。
灰川「何なの、これ?嘘っ!?私、この姿!?」
ブラン「わお!!なんて大胆な!?」
ブルーノ「アメイジング!!」
アスール「また仲間が増えた!?」
ルージュ「まさか、有り得ませんわ!?」
ヴィオレ「まあ、せっかく仲間になったんだし?」
アマリージョ「そうよ!!あ、名前決めましょうよ!!」
ヴェルデ「いや呑気かっ!?」
ノワール「そうだな、なら"グリーズ"だ」
グリーズ「グリーズ?何だか分からないけど、あんた達を倒すなら何でもいいわ!!」
こうして新たな仲間、灰川もといグリーズが仲間になった。




