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第七十六話 人魚の村

 トムキャットのトム子の報告から三日が経過している。家の増築は蜂っ子達の頑張りで順調に進んでいた。


 人魚の村は発見者のトムキャットのトム子が所属する第一飛行部隊の第一小隊が護衛として、サファイアを連れて行く事になった。


 サファイア達が村に到着すると人魚達は警戒していたが、見知ったトム子が挨拶すると人魚達も安心したようだ。


 サファイアはすぐに妙な事に気がついた。海に関する物を食品から工芸品に至るまで、購入か物々交換を申し出ても責任者らしき人物は出てこないのだ。


 責任者が不在なら、代わりに話が分かる者が出てきても良いはずなのに。目の前にいるのは、まだまだ少女と言っても良い子供だ。


 まぁ私も生まれたばかりだけどね。

 と、サファイアは考えた。


 ファントムとイーグルは、サファイアが交渉してる間に村の中を見てまわった。理由は単純で、この村と戦闘になった時に備えて、武器庫や食糧倉庫の場所を確認してたそうだ。


 村の中を歩いても誰にも会わない。

 村に訪れた時に出会った者にしか会ってない。

 二人を見張ってるつもりなのか、子供がついてくるけど、その子供だって村に来た時に出会った一人だ。


 そう思って村を、特に家を見ると傷んでるように思える。家は人が住まないと、すぐに傷むと聞いた事がある。

 だからサファイアに報告して、家を見てもらえば良い。彼女なら判断出来るに違いない。


 村をまわってから元の場所へ戻ると、サファイアが困った顔をしていた。とりあえず一度帰る事を進言するとサファイアは頷いた。


 イーグルはトムキャットに、残って住人の数が少ない理由を聞いておくようにと小声で囁いた。


 トム子は頷いてサファイア達を見送る。


 「お姉ちゃんは帰らないの?」

 「もう少し、みんなと遊んだら帰るよ」


 トム子が子供と遊んでる頃、ファントムとイーグルはサファイアに見聞きした事を話した。サファイアは自分の感じた違和感と合致したと思えたが、仮に住人減少が何者かの攻撃や陰謀によるものだとしたら、サファイアの手に余る。

 だから問題解決にはフェイロンに頼むしかないと判断したのだった。


 「そんなわけで、よろしくお願いします」

 

 と、サファイアに頼まれた。

 

 「よし、あとは任せろ!」


 と言ったが、俺は石橋を叩いて壊す性格だ。

 安全策を取る。

 その安全策はキーラが分身作成で産み出す強い兵隊鉢っ子だ。キーラは既に3〜4人作成してるはずだが見せに来ない。

 この場合は相当に凄いのが産まれて、自慢してやろうと考えてるはずだ。


 なので、12人揃うまで待つのが、俺の安全策ってわけだ。待ってる間は増築工事の監督だって張り切っていたのに、サァベルに捕まって部屋に閉じ込められた。


 働き蜂っ子からサァベルに、仕事の邪魔をしないように遊んでやってほしいと頼んだらしい。俺が現場監督すんのって、そんなに邪魔かよ。


 自分の部屋のベッドに寝かされて、サァベルは俺に添い寝してんだけど、まるで母猫みたいに尻尾で俺の胸をぽんぽん叩くんだよ。

 こんな時のサァベルは、すんごい優しい慈愛に満ちた顔で俺を見てるんだ。この表情で見られる奴は俺一人だけ。

 サァベルの豊かな胸に顔を埋めて、抱きしめて寝てたら優しく後頭部を撫でられた。


 「あなたの子を産みたい」


 ポツリとサァベルが呟いたので、反射的に「絶対に嫌だ」と答えてしまった。俺を撫でる手が止まり、震える声で「何故?」と問われた。


 サァベルを見たらショックを受けた顔して、涙を流していた。拒否されるとは思わなかったようだ。だから教えて理由を教えてやったのだ。


 「俺を見る

 愛情に満ちたサァベルの顔が好きだ。

 俺を優しく撫でるサァベルの手が好きだ。

 俺を優しく抱きしめるサァベルが好きだ。

 俺を全身全霊で愛してくれるサァベルが

 大好きだ。

 だけど俺の子を産んだら

 お前の愛情が俺の子に向くだろ?

 例え我が子でも絶対に嫌だ。

 お前の愛情は俺の物。

 俺だけの物。

 だからお前が俺の子を産むのは

 許さない。分かったか?」


 我ながらガキみたいだが本音だ。

 サァベルの愛情を独占したいという、子供の我儘みたいな理由から拒否したと知ったサァベルは、泣き顔が一転して笑顔になった。


 「子を産んでもフェイロンに向ける愛情は減りませんわよ。むしろ無限に増えて、貴方と我が子に愛情を注ぎ込みますの」


 翌朝までサァベルの愛情をたっぷりと受け続けた。翌朝、部屋を出て操縦室へ向かうと、トム子とサファイアが待っていた。


 「ゆうべはおたのしみでしたね」


 と、トム子。

 こいつ、RPGの宿屋の親父みたいなセリフを言いやがる。


 「今晩のおたのしみはトム子とするか」

 「わ、わた、私ですか!?」

 「何か分かったのか?」

 「いえ! 聞き耳立てても聞こえず」

 「俺の部屋じゃねぇよ」


 サファイアが「村のことよ」とトム子をつついた。


 「村の人間が何故いないのか。聞き出すことは出来ませんでした。ただ、話して助けを求めたい気持ちは強いようなので、あと一押しだと思います」


 なるほど。

 では、キーラの分身作成を待ってからにしておくか。切羽詰まった状況でも無いだろうし。


 「トム子。お前達第一小隊は毎日遊びに行け。食料品も持っていけ。他にも必需品があれば持っていけ」

 「了解です」


 さて、家の改造が終わり次第、村へ行くとしようか。

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