第三十五話 休憩、そして潜入
五匹のスライムは落ちた妖精を回収してくる。その数は減ったが、断じて犠牲者は出してはいけないと思ってる。
それが不利な戦いに参加してくれたセージュへの義理ってもんだろう。
セージュはまた片手を上げて魔法弾を撃つ。すると50人ほどが戻ってきた。直掩の10人が妖精の里から持ってきたらしき飲み物を配ってる。
「休憩でしょうか」
ライムが俺に言うので、「だろうな」と答えておく。水分補給を終えた妖精は、セージュのヒモを掴んで魔力の補充を始める。
なんか、こういうの見たな。
何だろう?
少し考えて、思い出した。
耐久レースのドライバーみたいな感じかな。テレビでしか見た事ないから、違うかもしれないけどさ。
魔力の補充が終わったのか、50人が一斉に飛び出していく。同時にセージュが魔法弾を撃つと、次の50人が戻ってくる。
こういう組織運用って、事前に考えて徹底してるんだろうなぁ。俺もパートナーを増やしたら、これを参考にすべきだよな。
足元にスライムが戻ってきた。
どうやら妖精側の被害は格段に減ったらしい。補充の終わった妖精の半分が救助活動を専門に動き出したようだ。
なるほど、スライムの出番は終わりだよな。
サァベルとリル、ミッキーも戻ってきた。よし、次の段階へと思ったがやめた。三人はずっと動きまわってたんだ。
少しくらい休憩すべきだろう。
治療も終えたユーリと、護衛をしてくれたライムも入れて五人に休憩を取らせる。異次元倉庫を開かせて飲み物と軽食を取りに行こうとしたら、スライム達が持ってきた。
お前ら、ホントに気が利くな。
あ、俺の分まで?
ありがとう。
スライム達が配り終えて、五人が食べるのを見てから、俺は話し始めた。
「食べながら聞いてくれ。妖精達、そしてお前達のおかげで戦況は非常に有利に展開してる。ここで作戦の第四段階に入る」
そう、巣に攻め込み女王蜂を倒す。
「作戦開始は20分後だ」
そう伝えると全員が頷いた。
伝え終わると俺もサァベルの隣に座って、飲み物を口に含む。不思議なもんで、初めてノドがカラカラだった事に気がついたよ。
パンに肉と野菜を挟んだだけのモノなのに、美味しいと思った。空腹は最高の調味料と言うけど、腹が減ってたんだなぁ。
俺はノドの渇きも空腹も分からないくらい、緊張してたんだろうか。だとすると、鼻歌混じりにメシ食ってるサァベルとリルってスゲーな。
20分が経ち、いよいよ巣に乗り込もうって時にセージュがやってきた。
「フェイロン、妖精を20人ほど連れて行け」
「それはありがたいが、外は大丈夫か?」
「大丈夫だ。外は任せてくれ」
20人の妖精は落とされた妖精の回収を担当してたようなので、スライム5匹に回収任務を続行するように頼んでおく。
ユーリも引き続き回復を担当してもらう。俺、サァベル、リル、ライム、ミッキーと妖精20人で、巣に乗り込む事となった。
キラービーの巣の真下まで走っていくが、蜂は一匹も襲ってこない。妖精との戦闘で、こちらに気がつかないのだろう。
真下に辿り着くと冒険者が倒れていた。逃げ回るうちに、こちらへ戻ってきたようだ。意識は無いが、命に別状は無いようだ。
ただし、今からユーリがいる所へ連れ帰る時間的な余裕も無い。ライムに身体再生、感覚遮断、状態異常無効を付与させて、ミッキーの異次元倉庫に放り込む。
巣の最下層は地面から3メートルほど上にあって、俺では届きそうに無い。
そう思っていたら、リルが跳躍を使って攻撃を仕掛け、サァベルが遠距離攻撃を、妖精達も魔法を撃って派手に穴を開けた。
蜂が大量に出たら、どうしよう。
少し心配になったが、どうやら杞憂だったらしい。音を聞きつけて迎撃にくる事は無かった。そのかわりに、穴からは獲物の食べれない羽や固い足など、ゴミと思われる物がバラバラと落ちてきた。
妖精が2〜3人、穴の偵察に行き、蜂がいないと合図してきた。すかさず他の妖精が入り、リルも跳躍して入り込む。
俺とライムとミッキーは、どうするかと考えてたらサァベルが笑顔でライム、ミッキーを穴へ投げ込んだ。
俺も投げ入れるつもりか?
優しくしてね。
サァベルは俺をギュッと抱きしめて、軽々と穴中にジャンプして入り込んだ。さすが元サーベルタイガーだ。




