百三十七話 ドワーフの移住
ゴーケンには島とドワーフの国を、妖精の技術で繋ぐ事を説明して了解を取った。その際のルール作りに関しては、最初の大陸の冒険者ギルドで経験済みだったので、サクサクと進んだ。
島の村長をするのはゴーワンに決まった。ゴーワンはゴーケンの弟だから、空飛ぶ島を重視してる証拠だとセージュが言っていた。
俺もそう思う。
とりあえず空飛ぶ島には、50人のドワーフが移住してくれた。いざとなれば故郷にも帰れるってのが、移住の決め手の一つになった。
もう一つは、ベティ先生をドワーフの国へ連れていき、移住候補者の前で純度100%の金属塊を作ってみせた事だろう。
「ほぅ? なるほど、ドワーフが定住するわけじゃなぁ」
ドワーフの住む山脈は鉱物資源が豊富であり、ベティ先生はそれに感心しながらも手を休めること無く、正方形の金属塊を次々に積み上げていく。
その様子は、まさに圧巻だった。
ドワーフ達は身動き出来ずに、ただ黙って見ている。
「なぁ、何で分別して塊をおいてるんだ?」
「金属の種類ごとに分けておいてやる方が親切というものじゃろ?」
「さすが気配りのベティ先生。これ、どんな金属なんだ?」
「この辺はミスリルじゃ。こっちはアダマンタイト、それはオリハルコン、あれはヒヒイロカネなんじゃが、説明せんでも見て分かるじゃろ」
分かるわけねーってばよ。
あぁ、でもミスリルは輝く銀色、オリハルコンは淡い金色、ヒヒイロカネは少し赤みがかってる、かな。
「うむ! それだけ分かれば十分じゃろ」
ベティ先生が褒めてやると言わんばかりに、俺の頭を撫でようとするが、背が小さいので手が届かない。
だからって俺のスネを蹴飛ばす事はないだろうに。
俺が痛みで屈んでスネに手を当てたところを、満足そうに頭を撫でてくる。
「しゃがめと言えば済むだろーに」
「やかましい! 気配りできぬ阿呆にお仕置きをしてやったのじゃ!!」
俺達がそんな事をやってる間に、移住候補のドワーフ達は塊を手に取って子供のように盛り上がっていた。
「諸君、空飛ぶ島に来てくれるか?」
「勿論だ! こんなもん見せられたら、行かなきゃダメだろう!!」
俺が尋ねると、ドワーフ達は全員が頷いてくれた。
早速、空飛ぶ島へ連れて行ったのだが、ここで失敗に気がついた。ドワーフの住む家を作ってなかったのだ。
「住む場所が無いんじゃなぁ」
興が削がれた顔でゴーワンが言う。
ドワーフの国と空飛ぶ島を繋げたんだし、無理に移住しなくても、なんて言われたら困る。とりあえず空飛ぶ家の部屋をドワーフの住宅として割り当てる。
「かなり狭いな」
「元々は個人部屋だからな。部屋を作るまで我慢してくれ。長くは待たせない」
少々不満顔のドワーフ達を納得させる為に、仕方なく切り札を出す事にした。
そう、酒だ。
もう少し完成度を高めてから出したかったのだが、そんな事を言ってられなくなった。
「ミッキー、酒を頼む!」
「分かったよ」
「なんと!? 酒があるのか!?」
「まだ試作の段階だけどな。まぁ飲んで待っていてくれ」
「我々は酒にうるさいぞ」
ミッキーが倉庫を開くと、ドワーフは誰に頼まれずともミッキーに聞いて次々と樽を出してくる。早速宴会が始まった。美味そうに飲んでるので、味に関しては合格のようだ。
天空の大陸では翼人が、いきなり戦いを仕掛けてきたから地下に作ろう。というか、地下に作る方が早く完成する。
「私が作るのか!?」
「頼むよ、ベティ先生!」
「イヤじゃ!! 金属塊を散々作らせて、今度は家を作るだと!!」
「地下を掘って大まかに部屋を作るだけなら、簡単だろ。あとの細かい内装は蜂っ子にやらせるし!」
「イ・ヤ・じゃ!! 私は食っちゃ寝して過ごすのが楽しいのじゃ。働いたら負けなのじゃ!」
えらそうに、ダメな人宣言をしやがった。だが引き下がる訳にはいかない。
「頼むよ、ベティお姉ちゃん!」
膝をついてベティに抱きつくと、その巨乳に顔を埋めて頼み込む。柔らかくて気持ちいい。
「・・・お姉ちゃん」
そう呟きながら、俺の頭を撫でるベティ。先生と呼んだ方が良かったかな。
「ベティ先生?」
「私のことは、これからお姉ちゃんと呼べ」
なんか嬉しそうだな。
「他の娘は呼び捨てなのに、私だけ先生で他人行儀じゃったからな」
そりゃ自業自得だろ。
仲間にした時に食っちゃ寝宣言しやがるし、俺も了承しちゃったから、働いて欲しい時は色々とヨイショしたんだよな。それ以来、先生と呼ぶようになったんだけどさ。
そうか、疎外感があったのか。
俺はベティをお姫様抱っこすると、自分の部屋へ連れ込んで甘えまくった。部屋へ連れ込んだのは、他の奴に見られるのが恥ずかしかったからだ。
バタバタしたけど、機嫌を直したベティが活躍したおかげで、無事にドワーフ村を作る事が出来た。ドワーフ達を、ようやく迎え入れる事が出来たのだった。




