第百二十七話 ギルマスの説得失敗
「ダメだッ!!」
事情を話したら即座に断られた。無理も無いけど少しくらい考えてから言ってくれよ。
「フェイロン、お前が言うくらいだから、何かあるんだろう。でもな、オークやゴブリンは、絶対にダメだ」
分かるだろう、と諭された。
そりゃ確かに分かる。
大事な女房と子供に、あんな真似されたら、どんな説得をしても無駄だ。
無関係な俺だって、あの光景を見てはらわたが煮えくり返ったのだ。
テムジンやジャムカ達だって大切な女性を得て、初めて自分達の行為の残虐さを心から理解したんだ。
だが、少なくともテムジンとジャムカの部族からは、二度とあの光景は現れないと、俺は断言できる。
「連れて来てしまえば、何とかなるとか考えてるなら甘いぞ。ここは冒険者ギルドだ。壮絶な殺し合いが始まる。そうなったら止められない」
やめておけ、というギルマスの忠告を聞いて、俺の決意も鈍った。ギルマスが反対する時は、本当にマズイから言ってるんだ。
それが分かる程度には信頼してるからな。
とは言え、ここで引き下がっては何も始まらないんだよな。
「ギルマス、オークとゴブリンの性別を聞いてもいいかな?」
「今さら聞くか? 奴らは全部雄だよ。だから他種族の女性を拐って孕ませるんだ。だから相容れないんだよ」
「だよなぁ、そうなるよな」
「分かってるなら聞くなよ、まったく」
人間やエルフの認識では、オークもゴブリンも雄、男しかいないんだよな。じゃあ、雌、女の出番だと思うんだよ。
俺は空飛ぶ島に戻ると、テムジンとジャムカ、テムジンの妻のボルテ達を集めた。
「残念だが、オークとゴブリンの参加は認めてもらえなかった。思った以上に拒否反応が強い。黙ってお前らを連れて行こうと思ったが、冒険者と殺し合いが始まると釘を刺された」
「参加すら無理か・・・」
悲痛な表情でテムジンは項垂れた。
「だから、ボルテ達を連れて行こうと思うんだよ」
「妻達を、ですか!?」
「そうだ。今回交渉したギルマス、人間の認識ではオークとゴブリンに女はいない。だから連れていっても攻撃はされない」
男が行けば殺し合いになるが、女は他の種族、獣人認定されるだろう。そこで仕事をして信頼を勝ち取ってから、種族をカミングアウトして男達を認めさせるのだ。
これしかない、と思う。
「作戦は理解したが、妻に土木作業をさせるのは……。そんな力仕事や汚れ仕事は、我々男の仕事だと思うのだ」
つくづく思う。
女性を大切にするようになったなぁ、と。
確かに俺だって、どうかと思うけどさ。
「大丈夫よ、あなた。私達の子供や孫が、他種族と不幸な出会いをしないように。その為なら、私は何でもやれるわよ」
ボルテは素晴らしい。
思わず抱きしめた。つーか、ボルテは大きいので抱きついたって言う方が正確か。
「なぁッ!? フェイロン殿!! いくら貴殿でも、わ、我が妻に抱きつかないで頂きたい!」
嫉妬かよ。
ボルテは優しく俺を抱き返してくれた。
手加減を覚えたか。
さすが、出来る女は違うな。
「あなた。フェイロンは私達の生みの親。いわば父親ですよ」
「む、な、なるほど」
「テムジン、悪かったな。だが、ボルテの覚悟に感動して、つい。許してくれ」
「妻の素晴らしさにですか。ならば仕方ありませんな!」
とりあえずオーク族とゴブリン族から、女性を各10名ほど参加させる事にしたのだった。




