第百二十六話 次元の扉
最初の大陸に来たのは、セージュを仲間にする為だったけど、エルフィンも仲間に出来たのは嬉しい誤算だった。
俺は嬉しさにニヤニヤと笑ってたけど、反対に苦虫を噛み潰したような表情をしてたのが、ギルマスだった。
「冒険者なんて、いつかどこかに流れていくものだし、それを無理矢理に留める事は出来ないものだ。だけどな、いきなりウチのエースと有能な事務員を拐っていくなよ」
難しい依頼が来た時に頼める奴がいないとか、デスクワークが忙しくなって家に帰れないとか、一身に七難八苦を背負って頑張るギルマスの姿が垣間見えた。
「ん〜、それ、解決できるよ。フェイロンが許可をくれたら、だけど」
「詳しく聞かせてくれ」
リナの言葉にギルマスと俺が食いついた。
リナが言うにはセージュと妖精達が使ってる妖精の里は、この世界の裏側にある次元空洞を拡張して使ってるそうだ。
「その空洞の入り口を二つ作るのよ。一つはギルドで、もう一つは空飛ぶ島にね」
しかしなぁ、ギルマスは信頼できる人物だが、その通路を歓迎されざる客が利用してしまう事もあるんじゃないかな。
「ドアに鍵をつけるよ。妖精の里はセージュと妖精のみ。あとセージュと私達妖精が承認した人物は通れるよ。それと同じ鍵をつけるよ」
それならセキュリティも万全だな。
中央都市はギルマスと、ギルマスが承認した人物かな。承認された人物は承認された時のみ通れる、と。
空飛ぶ島から中央都市への往来は無制限。
それで何か不都合が出たら、その都度修正って事でギルマスとも話がついた。この翌日からギルマスを窓口にして、仕事を請け負う事になった。
最初に来た仕事は、以前住んでた時に請け負っていた町の下水処理の継続作業だ。それにプラスして、新規に下水処理の案件を受けた。
国の役人が来て急遽、逃げ出す事になってしまったもんだから、そういった排水処理が完備された地区と、全く手付かずの地区とで、土地の価値に雲泥の差がついていた。
ライムと数名のスライム娘に来てもらうと、俺達がいない間に、頑張って仕事をしてくれたスライム達から10人ほどパートナー化した。
そして外から数百匹のスライムをスカウトしてくると、未開発地区を猛烈に清潔にし始めた。未開発地区は、昔のヨーロッパと同じで路上にぶち撒けていたのだ。
もう不衛生だし臭いし、現代日本人が来たら卒倒するか、知識と実行力があれば即座に改善に走るレベルだ。
地下を掘る作業は地元の人間を雇ったのだが、人数が足りない。冒険者でも低ランクの人間が参加してくれたのだが、それでも足りない。
どうしたものかと悩んでいたら、オーク族のテムジンと、ゴブリン族のジャムカが参加すると言い出した。
「我々は人間にとって不倶戴天の敵だというのは分かる。だが我々にも女性が出来た。もはや、他種族の女性を攫わなくても良い。これからは一緒に生きていく仲間となりたいのだ」
正直言って、まだ早いと思う。
だが同時に、いつなら良いのだとも思う。
まだ早いと言って、面倒な事を先送りするだけになるような気がするんだ。
「理解してもらえるまで辛いぞ?」
「覚悟はしている」
「なら、ギルマスに相談してみよう」
「頼む、フェイロン殿」
いや、ホントに理解してさえもらえたら、大歓迎されると思うんだよな。俺は翌日の朝、ギルマスに面会して事情を話した。




