第百二十八話 種族デビュー1
種族の未来をかけてオークとゴブリンの美女達40人が歴史上初めて中央都市に入った。俺の隣を歩くのは、オークの長であるテムジンの正妻ボルテである。
蜂っ子に言わせると、貴族令嬢のような美しさらしいけど、俺には分からない。ただ、雰囲気というか物腰というか、それは側にいて非常に心地良いと思う。
空飛ぶ島からギルドの酒場に、40人もの亜人が現れたので冒険者達も驚いている。剣に手をかける者もいたが、亜人達が女性であると分かった時点で手を離していた。
ギルドの中から現れたし、見た目はオークやゴブリンに似てるけど女性だから違うし、どこの種族なんだろうと、剣から手を離した後は不思議そうにボルテ達を見ていた。
そこへギルマスが来て、ボルテ達を見た。すぐにピンと来たのだろう。俺が逃げたくなるような形相で、ツカツカと歩いてくる。
怒気が殺気のように感じられるほど、近寄りがたい雰囲気なのでボルテの後ろに隠れる。
「お前は悪戯を見つけられた後に、母親の背後に隠れる子供か!?」
そう言われては隠れてはいられない。ボルテの前に出ると、ギルマスは俺の胸ぐらを掴んで言った。
「こちらの御婦人方は、どこのどなた様なのか、簡潔明瞭に説明しろ」
「え〜っと、こちらは昨日の話で言った種族の女性達です」
さすがに想定外だったのだろう。
固まっていた。
「この方は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ。一応、説明しとくと、敵に回したら一番厄介な冒険者ギルドのマスターだ」
そんな説明をしてるとギルマスが復活した。
「ありえないだろ!? これがオークとゴブリンの女性だと!?」
さすがに冷静でいられなかったのか、外にまで響き渡るような怒声で問い詰められた。それは仕方ないのだが、それを聞きつけた冒険者が次々に集まってくる。
「オークとゴブリンだって!?」
「どこにいるんだ!!」
ギルマスがボルテ達を指差すと、冒険者達の表情に戸惑いの色が広がっていく。
「女性じゃないか。奴らは男だけだろ」
「それに清潔だし、身なりにも気をつけてるよな。奴らは不潔で野蛮だ」
「異性を見たら、種族を問わず襲いかかるクソ野郎の女だったら、俺達が犯されるのか?」
ボルテ達は、そんな冒険者の言葉に羞恥で真っ赤になっていく。ザワザワと騒めく冒険者に、ギルマスは手で静かにしろと指示を出す。
「それを今からフェイロンに聞くんだ。お前達も一緒に聞け。最悪の場合、このギルドが戦場になるからな」
ならねーよ。
心の中で突っ込む。
「私達には夫がおりますから、他種族の殿方を相手に不貞な真似はしませんよ」
俺が心の中で突っ込みを入れてる間に、ボルテが対話を始めていた。目を瞑って声を聞いてると、常に美少女役を務めている声優を思い出す。
「なんだか、俺達の知ってるのと違うな」
男を犯すのかと発言した冒険者は、ボルテに対して敵意を削がれたようだ。性的に興奮した男が女の子に対して「何もしないから」なんて言うのとは重みが違う。
「オークとゴブリンの女性は、俺がスキルで作り出した。蜂っ子を見てる奴なら、俺が嘘を言ってないのは分かるだろ?」
皆が頷く。
そこで疑問に思っていたことを、改めて声に出して尋ねた。
「オークやゴブリンの行為は断固として許さない。だが、そもそも女性は何故、存在しないのか。もし女性がいたら、あのような蛮行は防げるのか。そう思った事はないか?」
「それは誰もが一度くらいは思うだろうが、考えても意味がないからな」
冒険者の一人が、そう言ったので俺は頷く。
「でも、俺は違う。能力でパートナーを作る事が出来る。
能力が無ければ、妻を、姉妹を、娘を、守る為に奴らはを殲滅する事は正義だと言い切れる。
だが能力があるのならば、それを試さなきゃいけない。
試さなかったら俺は正義を口に出来ないんだ」
ふと気がついた。
いつのまにか、ギルマスの手が俺の胸ぐらから離れてた。
「俺に提案した以上、結果は出たんだな?」
その問いに頷いた。




