第百十八話 慟哭1
オークとゴブリンの夫婦というか、カップルが無事に誕生した。女性陣が男性をぶちのめした時は、どうなるかと心配もしたけどね。
夫婦揃って仲睦まじく働き、日が暮れると仲良く家に帰っていく。
これでオークもゴブリンも、他種族の異性を攫う必要も無くなり、この世界を共に支えて生きていく種族となるだろう。
被害にあった女性の無念は消えないだろうが、これからの未来においては、そんな女性はいなくなるって事で満足しよう。
それ以上は何も出来ないし、俺は神様じゃないからな。
しばらくは産めよ増やせよで、頑張ってもらおう。幸いな事に俺の空飛ぶ島は広いから相当な人数でも養える。
一定の人数が揃ったら、上空の浮遊大陸に魔王の国を作る為に行動を起こしても良いな。
それまでは空飛ぶ島を開発しながら、俺も日々のハーレム生活を楽しもう。サァベルも子供が欲しいとか言ってたよな。エルフも増やしちゃうぞ。
さぁ、楽しい子作りが始まるのだ!
と思った矢先の事だった。
うおおぉぁあああああぁぁぁっ!!
まるで敵軍が侵攻してきたかのような雄叫びが聞こえてきた。真っ先に考えたのは、人間の王国の奇襲だった。
だが、ここは俺の空飛ぶ島で地上から数百メートル上空にいる。いつのまにか、隣にルシファーが立っていた。
「聞いたか、フェイロン」
「あぁ、どこからの攻撃なのか分からん」
「外部ではない。あれはオークとゴブリンだ」
魔王に指摘されて少しショックを受けた。女性を作って幸せにしてやったとの自負もあったからな。それが反乱かよ。
「でも、なにか変だわ」
「ええ殺気を感じませんわね」
「殺気より悲しみを感じるのよ」
リリィとサァベルは感じた事を教えてくれる。反乱などでは無いんだな、と確認したら二人は頷いた。
俺達はオークやゴブリンに任せた開拓地に向かう為に空飛ぶ家に乗り込んだ。すぐにも出発したかったのだが、戦闘型の蜂っ子やエルフなど、俺の身を案じた連中が次々と乗ってくるので遅くなってしまった。
開拓地の手前で念のために、空飛ぶ家を着陸させた。オークとゴブリンに何があったか分からない以上は、下手な刺激はしない方が良いだろう。
ここから先は歩いていこう。着陸の際に戦闘型の蜂っ子の何人かが斥候として飛び出していった。報告が来るまで待つか。
「フェイロン!」
小一時間が経過した頃に、トム子が戻ってきた。一人ではなく連れがいた。オークの長が選んだ女性だった。
「トム子、ご苦労様。そちらは確か、テムジンの妻のボルテだったか?」
「はい、その通りです」
魔王が名を教えてくれたように、オークとゴブリンの長も、見合いが大成功に終わり伴侶が決まった時に教えてくれたのだ。
オークの長の名はテムジン、ゴブリンの長の名はジャムカというそうだ。そして目の前のボルテがテムジンの一人目の妻というわけだ。
「いったい何があったんだ。夫婦生活は上手くいって無かったのか?」
「出会いこそ最悪でしたが、私達は、いえ我が一族は皆、仲睦まじく過ごしておりました。ゴブリン達も同じだったと思います」
「こんな事になる予兆はあったか?」
「ありません。……ですが、ともに過ごす時間が長くなると、どこか遠くを見るような表情をしたり、自分の手をじっと眺めていたりしてました」
なにか心配があったのだろうか?
「何か奴等の心に気になる事があったかもしれんな。行って確かめるしかあるまい」
ルシファーの言葉に頷く。
「ボルテ、女達からも出ているのか?」
「いえ、男衆だけです」




