第百十七話 見合い終了
オークやゴブリンの長は、実にスマートに会話して、女性達を楽しませている。ほんの半月くらい前には、ボコボコに殴られてたのに。
初めてこの大陸に来て、人間の女性が悲惨な目にあっている事を知った時からすると、隔世の感があるな。
種族を根絶やしにしてやろうかと、俺は考えたんじゃなかったかな。あの時は、まさかこんな光景を見るとは、夢にも思わなかった。
長達は数名の女性を連れている。造形が人間と違うので、今ひとつ分からないが、長は超がつくイケメンらしい。
そして周りにいる女性も絶世の二文字がつくほどの美少女揃いだと聞いた。
ちなみに教えてくれたのは蜂っ子だ。
蜂っ子は元々が昆虫の魔物だったので、偏ることなく種族毎の美醜が理解できるらしい。
その能力が少し羨ましい。
そんな風に見ていると、オークの長と美少女集団に一人のオークが近寄っていく。
それを目敏く見つけた蜂っ子のナツミが楽しそうな表情で近寄ってきて、色々と解説を始めてくれる。
オークの長は人間のイメージで言うと、名門貴族の若くして継いだ二十台後半の美形。重責を担い若くして魔王に抜擢されるエリート。
それを取り巻く美少女は名門貴族の令嬢で、世の中の男性が憧れる全てを兼ね備えた存在。
近寄っていくオークは、まだ17か18の少年から男性へと変化しつつある年齢相応の未熟な存在。
と、教えてくれた。
まぁ、あくまでもイメージなのだろう。
女性は俺がパートナー化の能力で作ったんだし、貴族も何も無いからな。
ナツミが教えてくれたイメージで、オークの長達を見る。
「失礼します!」
まだ少年から脱しきれないオークが、長と美少女に声をかけた。
「失礼などあるはずもない。このパーティーは男女の親睦を深めるものだ。お前も話に加わるといい」
長は鷹揚な態度を崩さない。
「いえ、お言葉ですが俺は、ただ一人の声を聞きたいし、その姿を見つめていたいんです」
そう言うと、若きオークは取り巻きの美少女の一人に向き直る。
「今の俺では、とても長には及ばない。全ての面で劣っていると理解している。でも、五年、十年経った時、今の長と同じ年齢になった時には、長を超えてみせる!!」
だから、どうか俺と一緒に人生を歩んで欲しいと、若きオークは手を差し出した。
あぁ、こういうの元の世界でテレビで見たな。一つ違うのは俯いて目を瞑って手を出すのではなく、美少女を真っ直ぐに見ながら手を出している事だろうか。
「かぁ〜、やるなぁ。若さ故の希望に満ちた自信ですね!!」
と、ナツミは俺の腕をペシペシ叩きながら言った。こいつも絶世の美少女なんだけど、色々と遠慮の無い間柄になったせいか、酔っ払ったオヤジみたいな声を出しやがる。
かぁ〜ってなんだよ、かぁ〜って。
美味い日本酒飲んだオッサンかってんだ。
「ほらほら、私に見惚れてないで、あっち見ましょう!」
俺の腕を抱き抱えて、続きを見るナツミ。巨乳が腕に当たるのが気になるんだけど、まぁいいか。あとでナツミに責任をとってもらおう。
手を差し出された美少女は、長と若きオークを交互に見てる。これは大変な選択を迫られたものだと同情したくなった。
女性の人数から考えて、長は二人まで妻を得る事ができるのだが、選択するのは長だった。美少女達は選んでもらう為に努力するだけで良かったのだ。
ところが、急に自分が選ばねばならぬ立場になってしまった。現時点でパーフェクトな長と、将来性は有りそうだが現時点では明らかに劣る若きオーク。
一日、ゆっくり考えたい事案だが、オークは猪突猛進だ。それはオークとして許されない。
美少女は大きく深呼吸をすると、長に一礼してから若きオークの手を取った。二人で微笑みながら、長の元から去っていく。
「未来の可能性を選んだか」
「違いますね」
「と言うと?」
「長の元に残れるのは二人だけです。選ばれなかった人は、その時点で余ってるオークから伴侶を選ぶ事になります」
明らかに、そして長より完全に見劣りする男性の伴侶になるくらいなら、臆せず長の所に乗り込んでくる気概ある人物を選んだ方がいい。
「そこまで計算してますよ。生涯、長ではなく貴方を選んだのよってマウント取れますし!」
あ〜、そんな内情は聞きたくなかった。
そんな駆け引きが行われたであろう見合いは、無事に終了した。それも大成功で200組のカップルが誕生したのだった。




