第百十四話 オークとゴブリンの見合い
二人が見合いって何だと聞いてきた。だから教えてやったんだ。
「いいか、女性は物や奴隷じゃないんだぞ。お前ら野郎共と対等なんだ。女性がお前らを好きになるように努力しろ」
「面倒臭いな。押し倒して俺が強いのを見せれば言う事を聞くだろう?」
オークの言葉にゴブリンも頷く。
「それじゃ振られるぞ」
「振られるって何だ?」
「ん〜、ま、いっか。明日分かる事だしな」
説明が面倒だったのでしなかった。明日、身をもって知る方が良いだろうから。
翌朝、期待にワクテカしたオークとゴブリンがやってきた。俺はどこに出しても恥ずかしくない程に、女性としての能力を備えたオークレディと、ゴブリンレディをお披露目した。
俺の予定としては、和気藹々と会話をする若い男女。といった絵を思い浮かべてた。
まさか、あんな地獄絵図が現出するとは。あの二時間は思い出したくもないが、後世において同じ失敗をしないように語り継がねば。
オークとゴブリンの女性は、人間の美醜の感覚からしたら美とは言えない。だが、共に仕事をする仲間としてなら好感が持てるし、信頼するに足りる人柄の持ち主ばかりだ。
オークとゴブリンからしたら、超ハイスペックな美女、美少女に見えたのだろう。人生で初めて見た美少女と美女でも、アレはない。
「あの女は俺のもんだ!」
「一番右の女は俺が孕ましてやるぜ!」
とても、書き記せない卑猥な言葉を叫びながら、オークとゴブリンは女性の元に殺到してきた。
終始にこやかだった女性の表情が絶対零度の冷たさを纏うのが見えた。
「フェイロン、奴らを殺しても?」
「殺すのはダメだ。奴らにしたら初めての女性なんだ。どう接したら良いか分からないんだ。教育的指導で勘弁してやってくれ」
「了解」
すっと女性陣が腰を落として静かに戦闘態勢に入ったが、野郎共にはそれが見えてない。男性が女性のいるエリアに入った瞬間、何か重たいものが肉にめり込む音がした。
それも数百発くらい。
いや、実際には数なんか聞き取れなかった。
鈍いくぐもった音質のドラムを聴いてる感じと言えばイメージ出来るだろうか。
ドムッドムドドドッズドンズドドッ!!
そんな音が絶え間なく聞こえてくるんだ。
「ぐふぁッ!?」「ぐふッ!!」「うわぁ!」
死んでないはずだから、断末魔の声ではないんだけれど、そうとしか思えない声も響き渡る。
「女性達は強いですわね?」
「男が襲いかかるのは予想できたからな。反撃して相手を叩き潰すだけの強さは与えたよ」
力負けして蹂躙され、女達の悲鳴が響き渡るよりはマシだと思うんだ。考えてみれば野生の世界で、雌が大きくて強いのは弱い雄に無理矢理種付けされない為だったりして。
鈍い打撃音が止み悲鳴が途絶えた後、立っていたのはオークとゴブリンの女性だけだった。いや、オークの最上位種は立っていた。
それと対峙してたのはオークの女性。
「口が臭い! 歯を磨きなさい!」
「体臭が酷い! 風呂に入りなさい!」
人間だったら子供の時に母親に言われるような事ばかりだな。
「女性の意思を尊重しなさい!」
「力でねじ伏せる事しか考えないなら、私達は負けない!」
ドッパァーン、ドッグァ、ズドム
一撃決まる毎に、オークはボロクズのように吹き飛ばされた。グリズリーの前足で一撃をもらったら、人間はこんな風になるかも、と一瞬思った。
その夜、オークとゴブリンの長が俺の所に訪ねてきた。




