第百十話 魔王と対話
ドアを開けると、そこは玉座の間ってやつだった。豪華絢爛の椅子に、ずいぶんと見目好い若い男がいた。
これで軽薄な雰囲気だったら、売れっ子のNo.1ホストかなと思うところだが、とてつもない威圧感を感じる。
玉座の間には、オークやゴブリン、オーガやヴァンパイアなど、いわゆる魔族と呼ばれてる連中の上位種が勢揃いしている。
その誰よりも玉座の男は存在感があった。
その気になれば、玉座の男一人で周囲にいる魔族を一瞬で皆殺しに出来るだろう。それだけの格差が見て取れる。
俺の顔を一筋の汗が流れ落ちた。
「お前が、魔王か?」
「そうだ。貴様が勇者か?」
「違う、俺は勇者じゃない」
「え?」
「え?」
俺と魔王は互いに困惑した表情で見つめ合う。
「では、勇者でもない貴様が、何故我が城に攻めてくるのだ?」
「成り行き、かな?」
「なんだと? そんな理由で光と闇の戦いに首を突っ込んだのか、貴様」
呆れてるな。
「そんないい加減で適当な馬鹿者が、我らに対抗できる力を持っているのだから始末が悪い」
言いたい放題だな、この野郎。
「最初はな、この大陸の問題だし放っておくつもりだったんだよ。けどオークとか酷くて介入したんだよ」
「我々が!?」
問いかけてきたのは、オークの最上位種だ。名前は知らんが、オークキングとか、オークエンペラーとか、そんな種族名じゃねぇかな。
「人間の女性を拉致って、子供を産ませてるだろ。女の前で男を嬲り殺すわ、男の目の前で女を犯すわ、お前ら最悪だぞ」
人間の魔族に対する憎しみを煽りまくってると教えてやると、魔王は少しだけ眉を顰めてるように見える。
魔王の側にいる絶世の美少女は、完全にドン引きしてるようだ。ま、敵とはいえ、同じ女性だからな。そして多分、この娘が倒したヴァンパイアの娘だろう。
確かに凄い美少女だ。ぜひ、俺のパートナーにしたいが・・・。今は話の続きだな。
「魔王よ。お前が女性の存在しないオーク族を作ったんだとしたら、趣味が最悪に悪いぞ」
「人聞きの悪い事を言うな。私は異界からオーク族を引き寄せただけだ」
人間に嫌がらせする為に、そう作ったんじゃなくて、元からそうだったのか。オークの上位種を見ると、そいつは俺を睨みつける。
「我が種族に女性がいないのは、神か悪魔から受けた呪いなのだ!」
「呪い・・・ねぇ」
「そうだ。例えば、そこの女」
そう言ってサァベルを指差す。
「俺からすると美しいとは思えない。だが、交わらねば子孫は残せない。貴様は俺と同じ顔をした女を抱けるか。抱きたいか?」
首を振った。嫌だよ。
「そうだろう。それが普通だ。だが、抱かねば滅びるのだ。これを呪いと言わずに何と言うのだ!」
こいつらも大変なんだな。
だからと言って、人間の女性が好きでもない異種族に無理矢理妊娠させられるのは、断じて許されないが。
「このオークについては、あとで解決するとして、もう二つ目的があった」
「解決だと!?」
騒ぐオークを黙らせて話を続けた。
「一つは世界樹を救う事だ。世界樹の少子化に悩むエルフ族から大勢の女の子を嫁にもらったんだ。そしたら実家を救う為に魔王を倒さなきゃならないだろ?」
私に同意を求めるなと、魔王に怒られた。
「あと一つは、その娘だ」
「わ、私ッ!?」




