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第百七話 魔王城の戦闘2

 ナナミのミルクを飲んでユーリの全能力上昇を受ければ、俺の身体能力はサァベルに匹敵すると言われた。しかし戦闘技能は素人のままだ。だからか知らないが、オーガの上位種をなかなか倒せない。


 あるいは聞こえてくる馬鹿共の絶叫で、集中力が切れてしまうから倒せないのかもしれない。


 そんな俺が苦戦してる間にサァベルがオーガを倒した。そこからサァベルは他の仲間に加勢したので、オーガを倒す速度は加速度的に上がっていく。


 そこで余裕が出来てユーリの方を見た。


 良かった、ユーリは生きている。

 ユーリとオーガの間には、甘ったれの阿呆が何人か残っていて一方的に蹂躙されていたが、ユーリも肉壁が無くなれば次は自分がやられると分かっているから容赦がない。


 俺は初めて馬鹿どもに同情した。


 俺が見たのは、こんな光景だ。

 オーガは手に持った恐ろしい金属製の棍棒を、強烈な速度で振り回す。熟練の戦士なら対応できるだろうが、脳内お花畑の馬鹿には無理だ。


 やはりと言うか、まともに胴体に攻撃を食らって吹き飛んだが、そこへユーリが回復をかける。

 食らった様子から見て内臓破裂で背骨は粉砕骨折だと思うが、ユーリの治癒能力は即死してなければ無理矢理回復させてしまう。


 死ぬかって刹那のタイミングを見切って回復させてしまうのは、神技以外の言葉が思いつかない。

 しかし生きてた奴は激痛を味わった挙句に、オーガから更なる追撃を喰らうのだ。死ねば一度で済んだ痛みが何度も襲ってくるのだから、シャレにならないよな。


 不幸中の幸いだったのは…

 幸いだったのかな?


 まぁ、不幸中の幸いだったのは、仲間が何人かいたおかげで、攻撃を喰らうのが少し遅れたくらいか。

 煌びやかな甲冑は、綺麗な装飾が全部ボロボロになるか、強烈な打撃で吹き飛んでいた。金属製の胴体部分はベコベコに凹んで、もはや装備は出来ないだろう。

 

 だからベティの鎧をもらえば良かったのに。

 今さら頼んでもダメだけどな。


 オリハルコンやミスリルで作った防具は、非常に頑丈でオーガの渾身の一撃でも凹まない。それに打撃によるダメージも軽減してくれる。

 俺は詳しくは知らないが、軽減は装備者の魔力を使ってるらしくて、防御を疎かにすると魔力が切れた時に致命傷を受けてしまうようだ。

 

 魔力を温存する為にも回避や防御スキルは大切なのだ。もっとも魔王の城にいるようなモンスターは、桁違いの戦闘能力があるので、そうも言ってられないらしいが。


 「我らに鎧を支給してもらえないだろうか?」


 無いってばよ。

 俺は四次元ポケットなんか持ってないんだ。


 「ならば、貴殿の鎧でもかまわ…ッ!?」


 こいつは最後まで喋れなかった。サァベルが顔面を引っ掻いたからだ。ネコ科の猛獣にガリッとやられたら、そりゃ大変だろうな。


 ユーリも治療をしない。


 他の連中は言わなくて良かったって表情だ。サァベルは無言で殺気を撒き散らしている。俺まで生きた心地がしないので、サァベルの頭を撫でて宥めてやる。

 しかし、ミッキーがいないと不便で仕方ない。今回はライムやナナミと一緒に、空飛ぶ家においてきたんだよな。


 一度戻って連れていくか。


 仲間達にそう告げて、来た道を引き返す。トム子は先に戻ってミッキーに伝えてくれるそうだ。俺達が家に戻る頃には、準備万端で待っているに違いない。


 

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