第百六話 魔王城の戦闘
トム子が蜂っ子の中に戻ってから3分もしないうちに、三部隊で隊列を組んで狙っていたワイバーンに突撃を仕掛けた。
ワイバーンは強いのだろう。
蜂っ子達は苦戦していた。ワイバーンを落とせず、戦闘を続けていたが戦術を変えたようだ。俺からは小さくて見えなかったが、どうやらワイバーンには誰か騎乗していたようだ。
蜂っ子達は、そいつを叩き落とす事にしたようだ。汚い、実に汚いが、それで良いのだ。戦いは勝たなきゃダメだからな。
勝てば官軍なのだ。
そして竜騎士ならぬ、ワイバーン騎士が地上に転落して、物言わぬ骸になった時、他のワイバーンは大きなトカゲに成り果てた。
天使達の混乱も収まり、再び優勢になっていくのが下からでも分かる。ハーピーの数も激減しており、どうやら制空権は俺達が握れそうだ。
俺が空を見上げて蜂っ子達の戦いを観戦してる間は、ゴーレム姉妹が守ってくれていたようだ。サァベルとリルは、戦士団との戦闘を潜り抜けて近寄ってきた奴を容赦無く斬り刻んでたらしい。
なんていうか、そこらへんに敵の死体が転がってるからな。
連合軍戦士や中原国家の戦士は、四方にある入り口から次々と突入していき、もはやこの中庭には誰もいない。
そう、強い連中は奥へ奥へと進んでいった。
俺の周りにいるのは、派手な鎧を着てる奴ばかりで、正直言って鬱陶しい。控えめに言って邪魔である。
「これ以上、ここにいては危ない。あの空飛ぶ船に撤退しよう!」
「左様。ここは退くも勇気であるな!」
好き勝手に言ってやがる。
俺は舐めた考えでついてきた奴が、何もしてないクセに帰った後に勇者ヅラするのは絶対に許さない。
「私も行くわよ」
ユーリが降りてきた。それほど強くないのに度胸があるな。
「家の中も安全だけど、貴方の側も同じくらい安全だからね」
うん、計算高いな。
さすがユーリ。
蜂っ子達には空飛ぶ家を守るように伝えて、上空の天使達には魔王の居城を徹底的に破壊してやれと指示しておいた。
穴だらけにしておけば、そこから脱出できるからな。あとは魔王への嫌がらせだ。
それらの指示を出し終えると、適当な入り口へ進んでいく。反対側の入り口からはデュラハンが出てきたようで、悲鳴が聞こえてくる。
がんばれよ!!
5〜6人が俺達の方へ逃げてきた。目端が効く奴らだな。
「貴殿の護衛をする為に、参りましたぞ。御安心召されよ」
「左様。我らは武勲より貴君の安全を優先したのだ。感謝して頂きたいものだな」
どうして素直に、死にたく無いから助けて下さいと言えないのかな。
「私の護衛など不要。遠慮なく武勲を上げられよ。なーに、ここにはユーリがいる。死ななければ、どんな傷も回復しますよ」
ユーリが微笑む。
この微笑みに、馬鹿達が頬を赤らめた。
ユーリはお前らよりは、可愛い女の子を選ぶぞ。両刀使いだからな。
そして前方からオーガが現れた。
なんか、凄え強そうなんだけど。
後ろから追いついてきたトム子が、上位種かなと呟いたのが、はっきりと聞こえた。
ここでサァベルとリルが飛び出して、オーガ上位種と戦闘を開始した。オーガは強かったが、二人相手では分が悪かった。
一瞬の隙を突いてサァベルが斬り捨てたが、さらに五匹もの上位種が来てしまった。
サァベル、リル、俺、トム子が戦いを仕掛けて動きを止めたが、残りの一匹がユーリに向かっていく。
「に、逃げるしか、ない!!」
「私はすぐに戻ってくるのだ!!」
ユーリを置いて二人が逃げた。
残りの奴らも浮き足だって、逃げようとしているので俺は怒鳴りつけた。
「ユーリを守れッ!!」
ユーリの回復魔法があれば、例え負けていても起死回生のチャンスが生まれるんだ。瀕死の奴でさえ、戦線に復帰できるほどの回復魔法の使い手なんだ。
人は平等なんて言うが、それは平和な時代の話で、乱世においては違う。役立たずの命が100あっても、ユーリの命より軽いんだ。
「逃げてみろ。俺達がお前らを殺してやるからなッ!!」
そこまで言っても最初の二人は逃げてしまった。だが、残りは振り返って絶望的な戦いを開始した。
しかし俺が見てられたのは、ここまでだった。オーガとの戦闘に集中して、連中の戦いを見てる余裕は無くなったのだ。




