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第百三話 凱旋

 ノーライフキングを倒すと、わずかに残っていたヴァンパイアやリッチなど、上級アンデッドから軍隊としての規律が消えた。


 連携も何も無くなり、一目散に逃げようとしている。恐らくは頂点にいたノーライフキングからの強制力のようなものが消えたのだろう。


 敵にしてみれば、よく鍛えられた戦士にアンデッドを滅する武器があるんだ。勝てないなら逃げるのは、当然の心理だと思う。


 だが、あえて言おう。

 それは悪手だと。


 逃げるためにこそ連携は必要だった。俺達の包囲を観察し、一番弱い部分を見抜いて、一点突破を図るべきだったのだ。


 まぁ、言うは易しの典型だけどね。

 負けるはずのない大将が討ち取られたんだ。

 さぞやパニクったろうからな。

 俺は負けないように気をつけよう。

 いや、そもそも負ける戦いは避けるぞ。

 物事が上手くいっても調子こいたりしない。

 今、ここで無様に散った奴に誓う。

 ぜってー二の舞にならんからな。


 「フェイロン、残敵は全て討ち取りました」

 「アンデッドドラゴンも?」

 「倒しましたわ」

 「こちらの被害は…誰も死んでないよな?」


 サァベルは俺の心配を、言葉ではなく指差す事で解消した。指の方向には笑顔で手を振る天使達がいたからだ。


 「俺達も怪我人が出ましたが、死者は出てません」

 

 見ると連合軍と冒険者から選抜した連中の一人が、俺に報告をしてくれたのだった。


 「あ、そうか。いや、お前達の心配は全然してなかったからな」

 「ヒデェなぁ、おい!!」


 俺の正直すぎる発言に、野郎どもからブーイングが出る。仕方ないだろ。美少女達は俺の大切なパートナーなんだから。


 「やかましい!!!」


 俺の怒鳴り声にブーイングがピタリと止まった。全員の視線が俺に集まる。こういうの嫌だってのになぁ。


 「テメェらが、こんなとこで死ぬかよ!

 死ぬわけねーのに心配なんかするか!!

 そんな事より、今日は稼げたのかよ!?」


 お〜っ!!!

 と、雄叫びが上がる。

 かなり稼げたようだ。


 「次の獲物は魔王だぜ!!

 つまり人生で最後の仕事だ。

 何故か分かるか!?

 魔王を倒せば遊んで暮らせる

 金が手に入るからだ!

 故郷に帰れば勇者様だ!

 やるぞ、てめぇら!!」


 うお〜ッ!!!

 野郎どもが盛り上がっている。

 酒でも出してやるか。

 出撃の時は悲壮感にまみれてたしな。

 

 帰りは男達の武勇伝で盛り上がった。

 酒を飲んでるせいか

 話がどんどん大きくなっていく。

 しかし世界樹に到着した時は

 意外にもシャキッとしてる奴が多かった。


 もう生きて帰ってこない。

 そんな覚悟を決めて出撃した奴らが

 親や許嫁と抱き合って喜んでいた。


 空飛ぶ家の中で渡した金や宝石を

 渡している。


 こういうのを見ちまうと

 俺のパートナーの為の捨て石に

 出来なくなるじゃないか。


 いや、するのだ。

 奴らを俺のパートナーの壁にする。

 そのためには良い鎧や盾を

 奴らに支給せねばなるまい。


 魔王の本拠地が何処にあるのか、大体の場所は分かっている。そこへ直接乗り込んで倒すのだが、いつやるか。


 「武器の調整をして、防具も作るのじゃろ?」

 「鎧もミスリルやオリハルコンをメッキしてやれば良いと思うんだよ」

 「簡単に言うがの。やるのはワシじゃぞ」

 「ベティなら簡単だろ?」

 「まぁの。仕事の代価として甘味の要求は当然するがの。あくせく働くのは嫌じゃ!」


 ゆったりと仕事がしたいようなので、納期は三ヶ月にした。今すぐに世界が滅びるわけでもないし、俺達がもたもたしてる間に、中原の大国連合が魔王を倒すなら、それも良しだ。


 ともに戦った野郎どもで、許嫁がいる奴は結婚式をあげていた。いない奴で一人っ子も親が見合い相手を探してきて、すぐに結婚してた。


 次は帰ってこないかもしれない。

 そう思っての事なんだろうな。

 アンデッド軍団の本隊を滅ぼした勇者って事で、相手には困らないと喜んでた。


 一方で三男、四男、五男の連中は、そんな世話を親からしてもらえないと愚痴っている。


 「でも、お前らモテるだろ?」

 「そりゃあね。でも、次は帰ってこないかもって、様子見されてんすよ」

 「俺なんか、親や兄貴が金を預かろうって言うんすよ」

 「預けりゃいいだろ。ダメなのか?」

 「預けるとですね。親と兄貴の心の声が聞こえるんですよ。俺が死ねば、好きに使えるなって」


 そこまで言うかと、ドン引きしてると

 末の弟の扱いなんて、そんなもんだと言われてしまった。


 シビアだなぁ。

 まぁでも魔王を倒して、生きて帰れば扱いも変わるだろって励ましたよ。

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