第百二話 アンデッド軍団と決戦2
俺とサァベル、リルが敵を斬った頃、後続が追いついてアンデッド軍団と戦い始めた。
天使達はアンデッドドラゴンを相手に、攻撃を開始している。正直言って、あんなバケモンを相手にしたくなかったので感謝だ。
なんか、戦艦大和を攻撃する米軍艦載機みたいだよな、あれ。
「敵のど真ん中で、余所見してると死にますわよ!?」
おっと、サァベルに怒られた。
でもなぁ、俺は十重二十重に守られてるよ。天使達はアンデッドドラゴンを倒しに行ったけど、戦闘職の蜂っ子達40人弱は、俺から離れずに頭上から周囲の敵を攻撃しまくってるから。
過保護な蜂っ子と、予想外に強い選抜冒険者と兵士のおかげで、俺はスルッと敵の大将であるノーライフキングの前に出てしまった。
俺は勇者ではないし、英雄でもない。
ただ美少女と楽しい毎日を過ごしたいだけなんだよ。こういう主人公的な立ち回りはしたくないんだってばよ。
しかも、こいつ……。
「貴様、私を見てため息をついた挙句に舌打ちしおったな?」
ノーライフキングが因縁をつけてきた。まぁ、確かに失礼な行為かもしれないけどさ。敵に対してなら構わないだろ?
「いえ、敵に対しても礼儀は必要ですわ」
ヴァンパイアを斬り捨てると、サァベルは俺に言った。何で、俺が考えてた事にまで、意見してくるんだ?
「声に出してましたわよ」
「うむ。出ておったな」
ノーライフキングまで頷きやがった。
「仕方ないだろ。ノーライフキングなら高い知性と、類稀な美貌を持ってるわけだ。俺は内心で期待したよ。そしたら、こんなプライドだけは高そうなオッサンじゃん」
「なるほど、納得しましたわ」
「今ので納得できたのか!?」
驚くノーライフキングに、サァベルは当然だって表情で頷く。
「私の愛しいお方は、病的な程に女好き。孤高の美少女ノーライフキングを愛人にするつもりが、男性だったので拗ねてるのです」
ノーライフキングはサァベルに、解説に対する礼を述べると俺を蔑むような目で見た。これが美少女なら、新しい扉が開いたかもしれないのに、本当に残念だよ。
「英雄色を好むと言うが、貴様は英雄という器ではあるまいよ。ここにいるのが私で良かった。我が娘は貴様の餌食にはさせんぞ!!」
なん……だと……?
……娘と言ったか?
このオッサンの娘なら美少女に間違いない!
サァベルは、ノーライフキングに「あ〜あ、余計な事を言っちゃったよ」みたいな視線を向けている。
それはともかく、娘がいるなら早く言ってくれりゃあ良いのに。
「義父上!!」
「誰が貴様の父か!!」
ノーライフキングは俺の斬撃をアッサリと片手で受け止めて、反対側の手で俺の顔を貫こうとする。いつのまにか伸びてる爪が、辛うじて避けた俺の頬を浅く切り裂いた。
剣を引こうにも掴まれてるので、ノーライフキングの胴体を蹴りとばして、無理矢理に離れる事に成功する。
「なかなか足癖が悪いのだな」
「娘さんは私が幸せにします!」
「やらぬ!!」
「ふ…ふふふ。永遠の美少女か。たっぷりと可愛がってやらなきゃな。滑らかな白い肌をしてるんだろうなぁ」
俺がノーライフキングの娘を、どのように可愛がるかを紙に書いたら、確実にアダルト判定喰らうだろう。そんな内容を語って聞かせたら、激怒してしまった。不思議だね。
「貴様!! 父たる私の前で下衆な妄想をするなど、断じて許さん!!」
激昂するノーライフキングの攻撃は、どんどん雑になってくる。そして、今がどんな時なのか忘れてしまったようだ。
「あ……あ、これは……」
ノーライフキングは自分の胸から飛び出た刃を、信じられないといった風情で見つめている。
「き、貴様、卑怯な……」
「一騎打ちの約束なんかしてない。お前が戦争中だってのに、一人の父親に戻ったのが悪いんだろうが」
ノーライフキングは小さく息を吐くと、冷静さを取り戻したようだ。
「それでも、貴様が卑怯で卑劣な男である事は、誰にも否定できぬ」
俺は咄嗟にサァベルを見たが、オロオロと困ってるばかりで否定してくれない。蜂っ子を見たら、目が合わないように顔を逸らされてしまった。
「そこの女性よ、敵としてではなく、一人の娘の父親として頼みたい」
「聞きましょう」
「我が娘が捕まってしまった時は、強く生きれるように助力してやってくれまいか?」
「引き受けますわ」
「ありが…と…う」
ノーライフキングは礼を言い終えると、塵になって霧散してしまった。
安心しろ。
娘は俺が可愛がってやるからな。




