第39話「脳筋ばかりなんですね」
俺たちを広場を出て、聖都をぶらぶらする。
そういえば、次の目的地ってどこだ?
「どこ向かってるんですか?」
「うーん、どこだろう?」
質問に質問で返されても困る。
「もしかして、迷子では?」
「そ、そ、そんなわけないわ! きっとこっちよ!」
「そっちの道は先ほども通りましたよ」
「ええ、知ってるわ。言ってみただけよ」
ダメだ、これは。
完全に迷子になっている。
どんどん人気のないところに向かっている気がする。
こういうときのテンプレと言えば、変なごろつきに絡まれることだよな。
と、そんなことを考えていたら、やはり、絡まれた。
「見つけましたよ」
振り向くと、そこには聖騎士の服を着た青年が立っていた。
「ラルフ・・・。どうしてここに?」
「どうしてもこうしてもないでしょう。あなたを連れ戻しに来たのですよ」
「連れ戻す? 私をあんな狭い部屋に閉じ込めて、何をするつもり・・・?」
なんかきな臭い流れだぞ。
「誤解を招くような言い方は止めてください。聖女様を守護するのは聖騎士としての務めです」
「聖女・・・?」
この少女が聖女だと言うのか?
全然、お〇ぱいないぞ。
「様をつけなさい。・・・あなたは聖騎士見習いのようですが、立場を弁えなさい」
「ルーク君は私の護衛よ!」
「見習いに護衛が務まるわけないでしょう。さあ、教会に戻りますよ」
「ルーク君はただの見習い聖騎士じゃないわ。昨日の入団試験で中級聖騎士に抜擢された逸材よ」
情報が回るのは早いな。
それとも聖女だから、末端の聖騎士のことまで把握しているのか?
「私もその話は聞きましたが、あなたのことでしたか。・・・仮に彼が中級聖騎士であろうと、聖女様の護衛としては力不足です」
「そんなことないわ!」
いやいや、あの聖騎士さんの言う通り、力不足ですよ。
聖女と言えば人間国宝だ。
護衛には聖級以上が付くという決まりになっている。
さすがに聖都では魔人が侵入してくることは少ないだろうが、彼女の命は聖騎士と比べられないくらいの価値がある。
当然、俺には護衛は荷が重い。
「聖女様がそう言うなら、ルーク殿の実力を見させてもらいましょう」
なんで、戦うことになっているんだ。
この世界の人って、脳筋多すぎないか?
拳で語り合うことで、友情が芽生えるのは少年漫画だけの世界にしてくれ。
「さすがにこんなところで戦うのはまずいでしょう」
路地裏だろうが、本気で魔法を使うのはまずい。
「問題ありませんよ。あとでちゃんと修復もしますから」
そういうことじゃねーんだよ。
「聖女様は私の後ろに下がっててください。大丈夫です。私の後ろに被害が行くことは決してありませんので」
アイナはさささっとラルフの後ろにいく。
なんか、ムカつくな。
俺が悪者みたいな立ち位置じゃないか。
くそっ。
騎士みたいなセリフ吐きやがって。
実際、騎士だけどさ。
「わかりました。それでは、本気で行かせてもらいます」
お前がそのつもりなら、こっちは手加減なんてしねーからな。
それに、ラルフはマシューと同じく、強者の匂いがする。
相対するだけで、肌がひりつくような感じだ。
「行きます!」
俺は右手に魔力を込めて、石弾を放った。
この狭い環境は、距離を保っていれば魔法使いに有利だ
お互い直線でしか移動ができないため、的を絞りやすい。
青年は、鞘から剣を抜いて一閃する。
石弾は真っ二つに割れる。
「大地よ、隆起せよ」
俺は地面に手を当てて詠唱した。
手が触れていたところから青年の足元まで、地面が「ドドドッ」と隆起する。
前に逃げても後ろに逃げても、攻撃の範囲内だ。
残るは上しかない。
地面はコンクリートのため、土よりも精度は劣るが、それでは十分な一撃だ。
だが、青年は避けることはせず、剣を縦に振った。
すると、斬撃が飛び、隆起した地面が真っ二つに割れる。
そして、俺のもとに斬撃が迫ってきた。
「土壁!!」
反射的に土壁を作る。
土の壁は斬撃を止めることに成功するが、衝撃を抑えきれず形を崩した。
「あそこまで短い詠唱であの威力の魔法を放つとは、さすがですね。私も少し本気を出しましょう」
もう、これ以上本気を出さないでくれ、と願うが、そうもいかないらしい。
青年は居合の体制に入った。
また、斬撃か?
俺は次の一手に対応するため、立ち上がって身体強化を強める。
すると、次の瞬間、青年が消えた。
ゾクっと悪寒が走る。
咄嗟に、両腕を硬化し、クロスさせる。
―――ドンッ
鈍い音とともに両腕に衝撃が走る。
後ろに吹き飛ばされるが、上手く受け身をとり、なんとか体勢を整えた。
「これを受け止めますか」
俺がいたところに、青年が立っていた。
一瞬で距離を詰められたのだ。
最初から彼の間合いに入っていたということか。
「石弾ガトリング」
俺は10センチほどの小さな石を連発して撃った。
それを青年は一つ一つ切り落としていく。
青年は後ろに攻撃が行くことはないと言った。
つまり、彼に避ける選択肢はないのだ。
聖女を巻きこないようにしている。
その弱みを使うのは、セコいと言われるだろう。
だが、戦いとはそういうものだ。
「石よ、動け!」
切り落とした石を操作し、ラルフを四方八方から攻めた。
「これでは埒が飽きませんね」
ラルフがそう言った瞬間、俺は脳天を叩き割られたような痛みを覚えた。
そして、わけがわからないまま、その場で倒れる。
「なかなか腕は立つようですが、爪が甘いですよ」
目の前にはいつの間にか、ラルフがいた。
最後にその言葉を聞いて、意識を失った。




