第40話「初任務を言い渡されました」
目を覚ますと、自分の部屋にいた。
あの後、青年がここまで運んでくれたのだろう。
「うっ・・・」
俺は頭を押さえる。
最後に頭を叩かれたせいで、ズキズキする。
暴力は良くないよ。
この世界はバイオレンスな人が多い。
前世では殴り合いを一度もしたことないのに。
もう少し、俺に優しくして欲しい。
俺は起き上がり、窓の外を見る。
外はすでに暗くなっていた。
しばらく、意識を失っていたようだ。
とりあえず、トイレに行こう。
目が覚めた時って尿意が迫っててるんだよな。
トイレは共同のため、部屋を出る必要がある。
扉のところにメモが置いてあった。
『聖女の部屋まで来るように』
聖女の部屋ってどこだ? と思ったが、ご丁寧にも場所が記載されていた。
さらに時間指定もしてある。
明日の朝のようだ。
面倒ごとではないことを祈る。
まずはトイレに行こう。
もれそうだ。
■ ■ ■
翌日、俺は時間通り聖女のもとを訪れた。
―――コン、コン。
扉をノックする。
「どうぞー」
扉の向こうからアイナの声が聞こえた。
「失礼します」
聖女が椅子に腰をかけた状態で、俺を歓迎した。
その隣ではラルフが直立姿勢で立っていた。
「昨日はありがとう。とても楽しかったわ。また機会があればよろしくね」
そんな機会二度と来ないことを望みます。
もし、聖女の身に何かあったら、首が切られる。
もちろん、物理的にな。
ははは、と誤魔化しておく。
これぞ、日本人特有のスマイルだ。
「それで、どのようなご用件でしょうか?」
「もー、固いわね。もっと気楽にしてもいいのよ」
「いえ、聖女様にそのようなことは・・・」
俺の保身を考えれば、そんなことはできない。
立場的にも聖女は雲の上の存在だ。
俺みたいな小市民が気軽に接していい相手ではない。
例えるなら、一般社員が役員と接するぐらいの権力差がある。
「こんな堅苦しい部屋で、ルーク君にもそんな対応されたら、窮屈で仕方ないわ」
「・・・善処します」
「もう! まあいいわ。今日はルーク君に任務を言い渡すために呼んだのよ」
「任務? まだ見習いの身でありますが」
俺はまだ中級聖騎士ではないのだ。
就職する前の最後の春休みをエンジョイする大学生のような状態だ。
前世では、みんなが卒業旅行を楽しんでる中、、俺は1人で漫画やアニメ、ゲームをしていたがな。
友達がいなかったわけじゃないぞ。
旅行に誘われなかっただけだ。
「うーん、そうなんだけどね。ラルフがね、1ヶ月もの間、ルーク君を放置しておくのは勿体ないって言うのよ」
「聖女様の言う通り、中級聖騎士を遊ばせておく余裕はありません」
「ですが、私の立場で任務は受けられません」
ていうか、やめてくれ。
あと一カ月はゆっくりしたいんだよ。
人生最後の長期休暇なんだよ。
遊ばせてくれよ。
「それなら大丈夫よ。私の権限で中級騎士に任命したわ。今日からルーク君は中級聖騎士よ。もちろん、バッチも服も用意したわ」
オウ、マイ、ゴッド。
全然、大丈夫じゃない。
神よ、なんてこの世は理不尽なんだ。
・・・って待てよ。
そもそもどうしてこんな展開になった?
思い出せ。
そうだ、神に仕向けられたんだ。
あいつはこうなることがわかっていたはずだ。
だから、あの時間、あの場所で彼女に会わせたのだ。
やっぱり、原因はお前かああああああ。
俺の休暇を1ヶ月も奪いやがって!
許さんぞ。
今度こそは絶対許さねーぞ。
もう、あいつの言うことは信じない。
くそ野郎だ。
「ルーク君、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。ちょっと怒りが・・・いえ、なんでもありません」
「そう? 昨日の痛みが残ってるなら、任務は先延ばしにしても・・・」
この子は天使かな?
いや、聖女だった。
お〇ぱいは小さいけど、聖女に変わりはない。
ぜひ、先延ばしにさせて欲しいです。
「聖女様。何度も言ってますが、最近は魔人の活動がより活発化しています。中級聖騎士ともなれば、やっていただきたいことは山ほどあります」
ブラック企業じゃねーか。
「そ、そうね。では、ルーク君。任務を言い渡します」
アイナは表情を変え、事務的な声で言った。
「聖都の南側にある『ドイツル』という町で魔人が潜伏しているとの情報を受けました。すぐにそこへ行き、魔人の調査および討伐をお願いします」
「・・・はい」
うわああああああん。
とうとう、聖騎士になっちまったああああ。
―第2章 完―
こちらの作品はここで完結とさせていただきます。
読み進めてくださり、ありがとうございます。




